北海道新幹線 世界に誇る「安全」つなげ

朝日新聞 2016年03月26日

北海道新幹線 逆風の中での出発に

演歌の北島三郎さんが「はるばる来たぜ」と歌った函館まで、東京から4時間半。北海道新幹線がきょう開業する。北海道から九州まで、列島が高速鉄道でつながる時代を迎えた。

とはいえ、経済効果については厳しい予測が並ぶ。

九州や北陸などと並び、整備新幹線として計画されたのは73年。今回結ばれる新青森―新函館北斗駅間は、いまや人口減社会の最先端をいく地域だ。初年度から約50億円の赤字が見込まれている。

青函トンネル内での最高速度は抑えられ、鉄道が飛行機より優位になるとされる「4時間の壁」は越えられなかった。地元では、函館市中心部まで18キロという新駅の立地などへの不満もくすぶる。北陸新幹線で観光客増に沸く金沢のような光景は期待できず、開業ブームどころか不協和音の中での出発だ。

だが、多額の税金をつぎ込んで建設した新幹線だ。どうしたら地域振興に役立てられるのか。そして採算のとれる路線に変えていけるのか。官民あげての工夫が必要だ。

運行を託されたJR北海道は、一日の乗降客が10人以下のローカル駅が3割を占め、管内の全線区が赤字だ。その上に新幹線の業務を背負うJRだけに努力を求めても限界がある。

東京までを結ぶ時間の短さだけを競えば、北海道新幹線は飛行機に勝ち目がない。だが点と点を結ぶ飛行機に対し、都市を線でつなぐのが鉄道の長所だ。

たとえば新函館から仙台までなら2時間半で着くようになる。埼玉県の大宮までなら3時間40分。在来線で札幌に行くのとほぼ同じ時間だ。

函館から見て、札幌か東京か、という地元の発想を少し変えれば、地図は広がる。東北や北関東との連携を進めて、訪日外国人客の周遊など新たな交流の創出に生かしてほしい。

函館の経済人らは鹿児島などを視察し、開業の教訓を学んできた。「駅前を立派にすることを目的にしてはいけない」「あるものを生かし、市民が街を好きになれることが大切」。地方創生の大事なヒントだろう。

JR北海道が忘れてはならないのは、安全運行の徹底だ。脱線事故やレール検査数値の改ざんなどで、ずさんな企業風土が明らかになり、14年に国から監督命令を受けた。

いまは2600億円を投じた改善計画の途上だが、新幹線の赤字がかさめば、コスト削減へ過度な圧力が高まらないか心配だ。安全をないがしろにすることは絶対にあってはならない。

読売新聞 2016年03月27日

北海道新幹線 開業効果の持続へ知恵を絞れ

北海道新幹線(新青森―新函館北斗間)が開業した。東北新幹線(東京―新青森間)との乗り入れで、北海道と東京が新幹線で結ばれた。

函館周辺では、多くのホテルが満室状態だ。来月以降の予約も、例年の1・5倍前後に上る。

道南地域を中心に、観光客の増加を見込んだホテルの改修や商業施設の新設も相次ぐ。

新幹線の開業を起爆剤とした地域経済活性化への期待が高まっている。開業効果を一時的なものに終わらせないため、官民の知恵と工夫が問われよう。

見通しは甘くない。北海道新幹線の乗車率は25%程度と想定され、北陸新幹線の約半分だ。事業収支も開業後3年は、年50億円規模の赤字が続くとみられる。

札幌への延伸は2030年度末の予定で、それまでは本格的なビジネス需要を見込みにくい。観光客の誘致を柱に利用促進を図るのが現実的だろう。

沿線にある観光資源を改めて発掘し、効果的にPRしたい。JR北海道には、地元自治体などとの緊密な情報交換が求められる。

東京からの集客では、ライバルとなる航空機との競争で苦戦を強いられそうだ。

東京―新函館北斗の所要時間は最短4時間2分で、函館中心部へはさらに在来線で約20分かかる。航空機なら、空港からの乗り継ぎも含めて約3時間だ。価格面でも、航空運賃の割引制度を使えば、新幹線が優位とは言えない。

一方、函館から仙台は約3時間と、在来線で札幌に行くよりも短時間で結ばれる。首都圏だけでなく、東北の都市からの観光客誘致にも力を注いではどうか。

東北の自治体や企業との連携を強め、新たな旅客需要の掘り起こしに努めてもらいたい。

北海道を訪れる外国人客が急増している。現在は、航空機を利用する人が大半を占める。

こうした旅行者を鉄道に取り込むことも重要課題だ。北海道に来る外国人に東北の魅力をアピールし、新幹線を使った広域観光を提案するのも有効だろう。

JR北海道は、脱線事故や線路の検査データ改竄かいざんなど、安全に関わる不祥事を繰り返してきた。

自然条件の厳しい北海道での列車の高速走行には、細心の注意が必要になる。安全運行を何よりも心がけねばならない。

新青森以北区間の約4割を占める青函トンネル内の事故は、深刻な被害につながる恐れがある。安全対策に万全を期すべきだ。

産経新聞 2016年03月25日

北海道新幹線 世界に誇る「安全」つなげ

北海道新幹線が開業を迎える。新青森から新函館北斗まで約150キロを1時間で走る路線だ。東海道新幹線の開業から約半世紀を経て、北海道から九州までの日本列島が高速鉄道で結ばれる。

観光客誘致への地元の期待は大きいが、東京から時間がかかり、函館中心部への乗り継ぎが必要となるなど課題も山積している。開業効果を最大限発揮できるよう、地元の創意工夫が問われるのはこれからだ。

何よりも重要なのは、安全運行の徹底である。JR北海道は、JR各社がこれまで築いてきた「新幹線の死亡事故ゼロ」を今後も継続しなければならない。それはナショナルブランドでもある「新幹線」を運行する企業としての重い責務である。

北海道新幹線は、旧国鉄時代の昭和48(1973)年に九州や北陸などと並んで計画が決まった整備新幹線である。平成42(2030)年度に札幌まで延伸予定だ。暫定開業という事情もあり、想定乗車率は26%で、当面は年50億円規模の赤字が予想されている。

東京-新函館北斗間は4時間余かかる。空路よりも鉄道が優位に立つ分岐点とされる「4時間の壁」を突破できなかった。羽田空港から函館中心部に近い函館空港までは航空機で1時間半だ。

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