大学入試改革 高校教育の質向上を促したい

朝日新聞 2016年03月26日

大学入試改革 理念倒れは避けよ

改革ありき、日程ありきで進むべきではない。

大学入試センター試験にかわる「大学入学希望者学力評価テスト」をめぐり、具体策を検討していた文部科学省の有識者会議が最終報告をまとめた。

新テストの議論は、政府の教育再生実行会議から始まり、文科相の諮問機関の中央教育審議会、そして有識者会議へと4年がかりで続けられてきた。

にもかかわらず、検討すべき課題がなお多く残されている。

それでも文科省は2020年度に新テストをスタートさせる計画を変えておらず、来春には実施方針をつくるという。

果たして、できるのか。

考える力を問う入試を、という理念は大切だ。だが、いま必要なのは、それを具体的にどう実現するかである。

理念倒れではいけない。何ができ、何ができないかを見極め、可能なことを着実に進めてほしい。受験生や高校、大学を振り回す結果は避けるべきだ。

議論の焦点になっているのは記述式問題の導入だ。マークシート式と違い、自分で書くことで考えを表現する力を見る。

新テストに盛り込むことで高校にメッセージを送り、知識の詰め込みに傾きがちな授業の改革を促したいと文科省はいう。

まず短文から始める。自由記述ではなく条件を設け、それをふまえて書かせる。マークシート式より先に別日程で実施し、採点時間を稼ぐ。そんな案も最終報告は示した。

だが、皮肉にも実現可能性を求めるほど、思考力や判断力、表現力は測りにくくなる。

採点基準をどうするか、50万人を超える答案を処理するのに採点者をどう確保するかなど、実施段階でのハードルも高い。

そもそも教育再生実行会議が目指したのは、新テストを資格試験のように複数回用意して選んで受けられるようにし、多面的な選抜は各大学の個別試験が担うという全体図だった。

最終報告は、その案も捨てていない。ふくれあがる新テストに実現性はあるのか。個別試験と、どう役割を分担するのか。早急に詰めてもらいたい。

気になるのは個別試験だ。

最終報告は各大学に対し、知識を問うだけでなく多面的、総合的に評価するよう求めた。

それには専門の組織や人材が必要になるが、国はどこまで支援する覚悟があるのか。

文科省は高校、大学教育と入試を三位一体で変える大がかりな改革を目指す。

だからこそ見切り発車は避けるべきである。

読売新聞 2016年03月26日

大学入試改革 高校教育の質向上を促したい

知識だけでなく、思考力や表現力を重視する大学入試改革の方向性は妥当だ。しかし、実現への道筋はなお見えない。

現行の大学入試センター試験に代わり、2020年度から実施される予定の新テストに関して、文部科学省の有識者会議が最終報告をまとめた。

マークシート式では、グラフや資料から情報を読み解き、選択肢の中から複数の正答を選ぶ。思考の筋道を文章で書かせる記述式問題を導入する。英語では「書く」「話す」能力も評価する。

こうした内容のテストなら、単なる暗記だけでは高得点は望めまい。高校では、知識を詰め込む授業から、新聞や本を熟読し、議論を通じて答えを探究する授業への転換を迫られよう。

高校教育の質向上を促す新テストの狙いは理解できる。

新テストでは、点数だけでなく、設問ごとの解答状況を大学側に伝えることも想定している。大学が受験生の学力をきめ細かく把握できれば、求める人材を発掘しやすくなる効果が期待できよう。

問題は、実施態勢をどう整備するかが示されていないことだ。

記述式では、採点者の確保と採点基準の明確化が成否のカギとなる。採点に人工知能(AI)も活用するというが、きちんと判定できるのだろうか。

記述式の採点に要する時間を考慮し、マークシート式と分離して試験を実施する案も盛り込まれた。ただ、記述式の試験を前倒しすると、学校行事と重なるとして、高校側が難色を示している。

英語の試験では、タブレット型端末などに音声を吹き込む方式を検討するという。だが、現在のセンター試験でもリスニングで毎年のように機器のトラブルが起きている。実施の環境を整えられるのか、不安が残る。

新テストの難易度をどう設定するかも、現時点では不透明だ。

文科省は17年度初めまでに新テストの詳細を詰める方針だ。受験生や保護者に混乱が生じないよう、検討過程について、情報公開を徹底することが求められる。

最終報告には、高校生の基礎学力を測る「高等学校基礎学力テスト」を19年度から試行することも明記された。結果は当面、各高校が指導の改善に生かす。

面接などで選ぶAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試が大学で広がり、高校生の学力低下を招いた面がある。推薦入試などで、基礎テストの結果を活用するのも一案ではないか。

産経新聞 2016年03月26日

入試改革 大学の「中身」は大丈夫か

大学入試改革について文部科学省の専門家会議が最終報告をまとめた。センター試験に代わる新共通テストを4年後に導入する。

各大学の2次試験と合わせ、「知識偏重」の入試の見直しをうたっているが、「学力不問」の改悪とならないようにしてもらいたい。

新共通テストは、記述式で答える問題を加える。採点に時間がかかるため、試験日程上、「年複数回実施」は難しくなった。

次期学習指導要領に対応し、8年後の平成36年度に出題内容などをさらに見直すというが、入試がそう度々変わっては、高校や受験生を戸惑わせるばかりだろう。

政府の教育再生実行会議が「一発勝負、1点刻み」の見直しを打ち出して約2年半がたつ。最終報告で共通テストの実施方法がなお固まらないのは、入試に「理想」を求めすぎるからではないか。

新共通テストは思考力を重視するという。だが、それが知識軽視につながらないか心配だ。

マークシート方式に対し、「考える力が育たない」との批判もある。だからといって、短い文で答える記述式問題を一部加えるだけで、それが解決できるのか。

統計情報の読み取りなど応用力を重視した問題も出題されるが、各教科の基礎知識がおろそかになっては困る。

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