朝鮮学校 “北崇拝”に税金出せるか

朝日新聞 2010年03月08日

朝鮮学校 除外はやはりおかしい

高校無償化法案の審議が国会で始まった。対象に朝鮮学校の生徒を含めるかどうかについて、川端達夫文部科学相は「排除の立場では検討していない」と述べ、北朝鮮との外交上の問題は判断基準にはしないとした。

発端は中井洽・拉致問題担当相が、北朝鮮制裁を理由に除外を提起したことだった。鳩山由紀夫首相も先月末、「国交のない国だから、教科内容を調べようがない」と語った。

だが朝鮮学校の教育の大半は日本の学校に準じており、内容も公開されている。「調べようがない学校」ではない。先週は、衆院文科委員会の約20人が東京朝鮮高級学校を視察した。

朝鮮学校が北朝鮮とつながりがあることは事実だ。北からの援助金に運営の一部を支えられる。高校の教室には金日成、正日父子の肖像画があり、修学旅行は中国経由で平壌に出かける。独裁体制維持の手段である主体(チュチェ)思想も朝鮮史などの授業で触れられる。

そうであっても、朝鮮学校で学ぶ生徒への支援の問題と、北朝鮮の異様な体制への対応を同一線上でとらえるのは、やはりおかしい。

子どもの学ぶ権利は、基本的に差別なく保障されるべきだ。核開発や拉致問題で制裁を続けていることを理由に朝鮮学校を支援から外すことは、そうした問題とは関係のない子どもたちにも、制裁を加えることになる。それはあまりにも不当なことだ。

日本の朝鮮半島併合から100年。日本で暮らすコリアンが植民地支配以来の歴史を背負わされた存在だということも、忘れてはならない。

第2次大戦後も日本に残った人は、その後の祖国の分断という状況に苦悩した。北を支持する人、南を支持する人、どちらにも距離を置く人。差別に囲まれ本名すら名乗りづらい日本社会の中で、北朝鮮政府に支援された朝鮮学校が、在日朝鮮人社会のひとつのよりどころになってきた。

現在は、朝鮮学校生の半数程度が韓国籍だ。父母の姿勢も北朝鮮の支持者から反発する人まで様々である。それでも、民族の文化や言葉を大事にしたいという気持ちは共通している。

この問題は、あくまで子どもに必要な学びの保障という観点から判断すべきだ。拉致や核と学校とをことさら結びつけるような発言に、子どもたちは動揺し、傷つく。政治家は想像力を働かせてほしい。

大阪府の橋下徹知事は「北朝鮮という国は暴力団と一緒。暴力団とお付き合いのある学校に助成がいくのがいいのか」と、疑問を呈した。

だが、今冬の全国高校ラグビー大会で、大阪代表として4強入りを果たしたのは、大阪朝鮮高級学校だった。地域に深く根を下ろした学校の子どもたちを、差別する理由はない。

毎日新聞 2010年03月11日

朝鮮学校 無償化除外、筋が通らぬ

高校無償化法案の国会審議が続いているが、在日朝鮮人の生徒らが学ぶ朝鮮学校を対象から外すべきだという意見が政府内からも持ち上がり、論議になっている。除外意見は、拉致や核、ミサイル問題で誠意ある対応をしない北朝鮮に経済制裁で臨んでいる今、朝鮮学校を支援するのはおかしいという考え方に立つ。

拉致問題などに厳しい姿勢で臨むのは当然だ。だが、それと子供たちの教育支援とは全く別次元の問題である。それを結びつけ、外交制裁の一環のようにして教育現場にしわ寄せするのは、やはりおかしい。民主党政権の掲げた高校無償化の意義とも相いれないはずだ。

朝鮮学校は、学校教育法で定めた学校ではなく、「各種学校」とされる。授業に朝鮮語を用い、朝鮮史など民族教育に特色があるが、数学、物理など教科学習は、基本的に日本の学習指導要領内容に沿う。

高校に相当する高級学校は全国に10校(約2000人)あり、韓国籍の生徒も多い。また日本の大学の大半は高級学校卒業生に日本の高校同様に受験資格を認めている。

この生徒たちは、日本に生まれ育った社会の構成員であり、将来もそうだ。高校無償化は「子ども手当」とともに、社会全体で子供の成長を支えるという基本理念に立つ。その意味で子供自身に責任のないことで支援有無の区別、選別をするのは筋が通るまい。

北朝鮮の姿勢を理由に除外を押し通すなら、見せしめの措置と国際社会では受け止められかねない。子供たちに疎外感を持たせて何の益もない。野党の自民党内でも、この論議をめぐり、外交問題で教育の現場が左右されることがあってはならないという意見が出ている。それは、拉致の非道を断じて許さず、早急な解決を北朝鮮に迫る厳しい姿勢と矛盾するものではない。

各種学校については、無償化法成立後、文部科学省令で高校課程に類する教育をしていることを判断基準に対象を定める。川端達夫文科相が「外交上の配慮などが判断の材料にならない」としているのは適切だ。

論議に火がついたのは2月下旬。中井洽(ひろし)拉致問題担当相が朝鮮学校除外を要請していることが表面化すると、鳩山由紀夫首相もその方向であるような発言をした。

直後に「未定」と修正し、政府内の不統一ぶりをのぞかせた。法案を閣議決定した1月下旬の時点できちんと考え方を詰めておかなかったのも不可解だ。

今回の論議を機に、朝鮮学校をはじめ外国人学校の実態に関心が高まり、地域社会との交流活発化などにつながることも期待したい。

産経新聞 2010年03月13日

朝鮮学校 拉致事件「反省」は方便か

朝鮮学校の高校無償化問題に絡み、同校で使われている教科書の内容が明らかになってきた。

予想されたことではあるが、故金日成主席、金正日総書記父子を神格化し、北朝鮮の政治思想である「主体思想」や軍をすべてに優先させる「先軍政治」などをたたえる一方的な内容である。

とりわけ問題なのは、「現代朝鮮史」の日本人拉致事件に関する記述だ。小泉純一郎元首相が平成14年9月に訪朝したことを「反共和国(北朝鮮)孤立圧殺の策動が危機にひんした」ためだと説明し、「朝日平和宣言(日朝平壌宣言)発表以後、日本当局は『拉致問題』を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げた」と書いている。

拉致問題では、14年9月の日朝首脳会談で金正日総書記が拉致の事実を認めて謝罪して以降、朝鮮総連も「絶対に許されない犯罪行為」(徐萬述議長)と謝罪し、朝鮮学校の教科書も翌年度から改編されたといわれていた。だが、現行の18年初版発行の教科書の記述には、「拉致は犯罪」との認識は全く見られない。

朝鮮学校の教科書は最終的に金総書記の決裁を仰いでいるといわれる。これでは、北朝鮮や総連が本当に拉致事件を謝罪し、反省しているのか極めて疑問だ。

「現代朝鮮史」は核・ミサイル問題についても、日本当局や言論機関が「総連を瓦解させようとする謀略宣伝を敢行した」などと書いている。

また、朝鮮総連が朝鮮学校の幹部らに高校無償化の獲得運動を指示していたことも、総連の内部文書で分かった。総連は北の統一戦線部に直結する組織としてさまざまな工作活動に関与してきた。

北と総連の強い政治的影響を受け、拉致問題などで日本を敵視する教育を行っている学校に無償化を適用し、公金(就学支援金)を支給することは、国民感情だけでなく、国益にも反しよう。

高校無償化法案は12日の衆院文部科学委員会で可決され、年度内に与党などの賛成多数で成立する見通しだ。朝鮮学校を対象に含めるか否かは、文科省など政府側の検討に委ねられる。

鳩山由紀夫首相は「教科の内容で判断しない」としているが、内容が肝心だ。教科書の中身や北朝鮮、総連との関係をしっかり把握したうえで、国益を踏まえた判断を求めたい。

産経新聞 2010年03月05日

朝鮮学校 “北崇拝”に税金出せるか

朝鮮学校の授業料無償化問題をめぐり、衆院文部科学委員会と社民党が東京都内の朝鮮学校を視察した。

その結果、各教室に故金日成主席・金正日総書記父子の肖像画が掲げられるなど、同校の同胞教育の一端が明らかになった。北朝鮮では、金主席は「首領さま」、金総書記は「将軍さま」と呼ばれている。独裁者への個人崇拝教育が、日本国内でも行われている。

とりわけ、金総書記は韓国閣僚を襲ったラングーン爆弾テロ(1983年)や、乗客・乗員115人が犠牲になった大韓航空機爆破事件(1987年)を計画したとされ、日本人拉致事件にも深くかかわっている疑いが強い。

拉致された日本人のことを考えると、国家テロを主導する独裁者を神聖視する教育は国民感情として受け入れられない。

また、朝鮮学校の統廃合問題をめぐり、今年1月、「統廃合は敗北主義である」との金総書記の指示が朝鮮総連を通じて伝えられ、統廃合の動きが停止したことも本紙の取材で分かった。授業の中身だけでなく、運営面でも総連を通じて“北の指導”を受けていることが、さらにはっきりした。

北の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が無償化対象からの朝鮮学校除外を「無分別な民族教育弾圧行為」だと非難する論評を載せたことも、同校が北の強い政治的影響下にあることを物語っている。

無償化が適用されれば、朝鮮学校に生徒1人当たり年額12万円の「就学支援金」が支払われることになる。それにふさわしい学校だろうか。

衆院文部科学委員長の田中真紀子氏は今後、同委員会に参考人を招致して議論を進める考えを示した。カリキュラムだけでなく、朝鮮学校と北朝鮮や総連との関係を厳しくチェックすべきだ。

一方、大阪府の橋下徹知事はこの問題に関連して「拉致問題を切り離して考えることはできない」「府の行政施策にかかわることは僕が判断したい」と述べ、府内の朝鮮学校と朝鮮総連との関係などを調べる意向を明らかにした。

朝鮮学校は全国に73校あるが、平成20年度だけで7億8000万円もの補助金が各自治体から支払われている。この原資も税金だ。大阪府以外の自治体も、朝鮮学校の教育の実態を改めて調査し直し、補助金のあり方を再検討すべきである。

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