プロ野球開幕 熱いプレーで信頼を取り戻せ

朝日新聞 2016年03月25日

プロ野球開幕 金銭文化根絶の改革を

巨人の投手4人の野球賭博や数々の金銭にからむ問題に揺れているプロ野球のシーズンが、きょう開幕する。

一連の問題にかかわる調査はまだ続いている。全容解明は果たされておらず、ファンの疑念も払拭(ふっしょく)されてはいない。

日ごろから安易に金銭がやりとりされる風土は、賭博や八百長へと発展するおそれがある。さらに反社会的勢力と関係がつながることも許されない。

選手、関係者は真剣なプレーをファンに披露するだけでなく、長年続いたあしき金銭文化を根絶するシーズンとしなくてはならない。

日本野球機構(NPB)は、選手が自分から違反を申し出れば処分を軽くするという期限つきの措置を検討している。

NPBの調査には強制力がなく、真実にたどり着くまでの壁は厚い。自主申告を促す措置は問題の全容をあぶりだすための苦肉の策とみられる。

だが、ここまで選手の間で日常化していた金銭問題の根深さを考えれば、もっと根本的な対策が必要だろう。

開幕直前の今週もまた、新たな金銭のやりとりが明らかになっている。高校野球を舞台にした賭けやくじなど、いくつもの球団で次々と発覚した。

しかし、いずれも野球協約違反にはあたらないとして実質的な処分をしていない。

高木投手と巨人のほかの選手1人は、違法と見られる闇スロットに出入りしていたが、球団は厳重注意しただけだ。

これらについても毅然(きぜん)とした態度を取るべきだ。コミッショナーは全球団に対し、賭博が刑法により処罰されることを選手に認識させるよう求める通達を出したが、その程度では同じ事態が繰り返されかねない。

12年に関西の社会人野球のチームで、高校野球や競馬を対象にした部内賭博が明るみに出た。告発する投書が会社へ届き、社内調査が行われた。

この野球部は日本選手権予選への出場を辞退し、半年間の対外試合禁止となった。警察にも報告し、単純賭博容疑で部員18人が書類送致されている。

法令順守は当然のこと、社会のルールや倫理に反する行為をしない。プロ野球界に必要なのは、徹底した意識改革だ。野球協約が不適切な行為を見逃してしまうのならば、それを不処分の理由にするのではなく、協約の見直しを検討すべきだ。

コミッショナーをはじめ、プロ野球に身を置く全員が球界浄化への強い意志を持ち、このシーズンに臨んでもらいたい。

読売新聞 2016年03月25日

プロ野球開幕 熱いプレーで信頼を取り戻せ

プロ野球は25日、開幕を迎えた。白熱した戦いを展開し、ファンを楽しませてもらいたい。

開幕ムードに水を差す出来事が相次いだことは極めて残念な事態だ。

野球賭博に関わった読売巨人軍の高木京介投手に対し、日本プロフェッショナル野球組織(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは、1年間の失格処分を下した。計4人の選手が失格処分を受けたことは、球団史に残る汚点である。

試合に勝つと、円陣で声を出した選手が祝儀をもらう。ノックで失策をすると、罰金を払う。選手間のこうした現金のやり取りが巨人や阪神、西武など多くの球団で行われていたことも分かった。

たとえ、野球協約に抵触しないにせよ、グラウンド上の行為を巡る金銭の授受は、不信を招く。球界での慣習が、世間的に通用するとは限らない。

12球団は「球界の浄化に全力で取り組み、信頼回復に最善の努力を尽くす」とする共同声明をまとめた。巨人も「痛切に反省し、再発防止に全力を尽くす」とのおびのコメントを発表した。

巨人は、昨年11月に発足させた紀律委員会を有効に機能させ、選手教育を徹底せねばならない。

失った信頼は、プレーで取り返すしかない。選手は、プロならではの投球や打撃、守備でペナントレースを盛り上げてほしい。

今季、セ・リーグの監督は大幅に若返り、6球団の全監督が40歳代となった。世代交代した指揮官たちが、どのような采配を見せるのか、楽しみである。

パ・リーグは、2年連続日本一となったソフトバンクに、他の5球団がどのように挑むかが、焦点となるだろう。

本塁上のクロスプレーに関するルールが変更されたのも、注目点だ。捕手によるブロックと、走者が捕手に体当たりすることが禁じられた。選手のけがを防ぐために、必要な措置である。

走者に有利なルール改正と言われている。捕手は、手を伸ばして走者にタッチするケースが増えるとみられるためだ。単打で二塁走者が本塁を突くケースが増えるかもしれない。各チームがどのように対処するか、見ものだ。

球場をより楽しめる空間にしようと、各球団は「ボールパーク化」に力を注いでいる。仙台市にある楽天の本拠地のスタンド脇には、観覧車がお目見えする。

各球団が、趣向を凝らしたサービスでしのぎを削り、ファン層を今まで以上に広げたい。

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