都市で先行する地価の上昇を、景気底上げにつなげることが重要だ。
国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価は、全国平均が前年比0・1%上昇した。リーマン・ショック前の2008年以来、8年ぶりにプラスへ転じた。
商業地は8年ぶりの上昇で、住宅地は下落幅が6年連続で縮小した。地価の改善傾向は、一段と強まったと言えよう。
特に、東京、大阪、名古屋の3大都市圏は、商業地と住宅地がともに3年連続で上昇した。
日銀の金融緩和に伴う低金利や住宅ローン減税によって、住宅需要が下支えされている。
商業地では、企業業績の改善や増加した訪日客による「爆買い」で収益率が上がり、オフィスや商業施設などの需要が高まった。
実需による地価上昇が投資や消費を刺激する「好循環」を作り、景気の本格回復へ結びつけることが欠かせない。
新規事業への進出を阻んでいる規制の撤廃など、成長戦略を加速させて、民間活力を引き出すことが何より大切である。
オフィスビルの容積率緩和や再開発に対する税制優遇など、政策支援をさらに進めるべきだ。
海外からの投資を呼び込むためにも、欧州やアジアの主要国よりも高い法人税の実効税率の引き下げを急ぎたい。
気がかりなのは、都心の一等地などで、局地的なバブルを心配する見方が出ていることだ。
全国トップだった東京・銀座の調査地点の公示地価は、バブル期の最高額を上回った。
銀行の不動産業向けの新規貸出額は昨年、バブル期を上回って過去最高となった。潤沢な資金を元手に、投機的な不動産取引が横行しかねない金融環境にあることは確かだろう。
一方で、中国経済の減速などのあおりで、不動産市況が冷え込む懸念も拭えない。
政府と自治体は、地価が乱高下する予兆はないか、警戒を強める必要がある。
地方圏で地価の二極化が続いていることにも注意したい。
札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市では、調査地点の約80%で地価が上昇した。ところが、その他の地方圏は、上昇地点が約15%にとどまる。
外国人の別荘需要を喚起し、住宅地で全国1位の上昇率となった北海道倶知安町の例もある。地域特性を生かした街づくりに知恵を絞ることが求められる。
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