ベルギー同時テロ 国際社会は結束を固めよ

朝日新聞 2016年03月24日

欧州のテロ 民主社会への挑戦だ

欧州連合(EU)の機能が集中するベルギーのブリュッセルは、欧州の中枢といえる。その街が連続テロの標的となった。

空港と地下鉄で相次いだ爆発で多数の人々が犠牲になった。公共交通の場で無差別殺傷を狙った許せない蛮行である。

中東に拠点をおく過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。欧州の民主社会を揺さぶり、自分たちの存在を誇示する狙いとみられる。

欧州ではイスラム過激派によるとされるテロが続いている。昨年11月には、フランスのパリで同時多発テロが起き、130人もの命が奪われた。

わずか半年の間に大規模な都市型テロが続いたことで、欧州が警戒を強めるのは当然だ。

ただ一方で、社会の動揺が深まれば、それこそ過激派の思惑どおりになってしまう。欧州の関係当局は効果的な対策を粛々と進めてほしい。

欧州は、移動の自由やプライバシーの尊重など人権の価値観を定着させてきた地域だ。統治の論理が個人の権利を侵すことが多い新興国や発展途上国の現状を考えると、欧州の理念はいっそう重みを増している。

求められるのは、市民の自由と治安維持のバランスを保ちつつ捜査やテロ予防を進める難しい対応だろう。

昨秋のパリ同時多発テロの容疑者の多くは、ブリュッセル近郊の出身だった。現場から逃走し、先週拘束された容疑者も、同じ地区に隠れていた。過激派のネットワークが地下に広く根を張っていると考えられる。

その摘発がなぜ徹底できないのか。詳細に検証する必要がある。その反省のもとに、今後の対策も進められるべきだ。

かぎを握るのは、欧州各国が結束できるかどうかだ。最近のEUは、難民問題などで立場の食い違いが目立つ。今回を機に協力態勢を築き直したい。

例えば、欧州の過激派や犯罪組織に流れる銃の規制を強める枠組みをつくろうと、EUは以前から試みている。この努力を強化し、各国が持つ情報の共有を広げられないか。

過激派に加わる若者は、移民の家庭出身であることが多い現実をふまえ、欧州社会のなかで移民の統合を改善する手立てもオープンに議論したい。

今回のような事件に乗じて、移民の排斥や反イスラムを叫ぶ言動にも十分注意すべきだ。

市民の自由と尊厳を見失わない落ち着いた振るまいこそ、欧州の価値観に合致する。テロに対してもできるだけ冷静に、決然とした態度を貫いてほしい。

産経新聞 2016年03月25日

テロ対策 日本の備えは十分なのか

ベルギーの同時テロは多くの人が行き交うことが常態化している国際空港と地下鉄駅で起きた。そう考えれば、日本国内でいつ起きてもおかしくはない。

テロを誘発するような隙はないか。監視態勢や警戒水準を高める必要性を再認識したい。

パリの同時多発テロ後、欧州各国が厳重な警戒を敷くなかで今回の事件が発生したことを重く受け止めたい。はるか遠く離れた国の出来事、といった慢心は禁物かつ有害である。

ブリュッセル国際空港の爆発は、荷物検査を受ける前の出発ロビーで起きた。軍兵士が警備してはいたが、ロビー出入り口に金属探知機はなかったという。

その約1時間後、欧州連合(EU)本部に近い地下鉄駅で爆発が起き、さらに多数の死傷者が出た。重いけがをした日本人男性もいる。不特定多数が使う交通機関をテロから守るのは難しい。

それは、テロを計画段階で未然に防ぐ努力とその手立てが欠かせないことも意味していよう。鍵となる情報収集力について日本を顧みれば、なお脆弱(ぜいじゃく)な状況だ。

重大犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となる共謀罪新設のための組織犯罪処罰法改正案は、何度も廃案になった。

産経新聞 2016年03月23日

ベルギー同時テロ 国際社会は結束を固めよ

ベルギーの国際空港で複数回の爆発があり、多数の死傷者が出た。空港は閉鎖され、航空便は欠航となった。

またも、残忍な爆破テロである。罪のない人々の命が一瞬にして奪われた。いかなる動機であれ断じて許せない。

欧州連合(EU)の施設に近い地下鉄駅でも爆発があり、すべての地下鉄駅が閉鎖された。

ベルギー内務省はテロ警戒レベルを最高に引き上げた。自爆テロとの情報もある。都市の交通をマヒさせ、一般住民を恐怖に陥れようとする卑劣な手口だ。

捜査当局は、徹底して犯人グループを追い詰めてほしい。さらなるテロ攻撃を阻止しなければならない。

昨年11月にはフランス・パリの劇場など6カ所で、ほぼ同時に銃乱射や爆発が起き、130人が死亡、300人以上が負傷した。

ベルギー捜査当局は、同時多発テロで唯一生き残ったとされるベルギー出身の容疑者を、ブリュッセル周辺で逮捕したばかりだ。

パリでのテロ後、当局は国内のテロリストの拠点を徹底的に捜査した。今回のテロはその報復との見方もあるが、捜査で計画自体を防げなかったのは残念である。

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