暴走する北朝鮮 日韓間の協定締結を急げ

朝日新聞 2016年03月19日

北朝鮮の挑発 自らの足元を崩す愚行

北朝鮮がきのう早朝、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射した。日本全土をほぼ射程に収めるノドンとみられる。

ことしに入り、核実験と事実上の長距離弾道ミサイル実験をし、国連安保理が厳しい制裁決議を出したばかりだ。今回も、明確な決議違反である。

国際社会の声にまったく耳を傾けようとせず、独善的な行動をとり続ける北朝鮮に、改めて強い憤りを覚える。

米国と韓国はいま、韓国内で史上最大規模の合同軍事演習をしている。北朝鮮は毎年、この演習に反発し、中止を求めてきたが、核とミサイルの実験という自らの暴走が規模の拡大をもたらした。自業自得である。

北朝鮮は、米軍が演習に特殊部隊を参加させたことから、金正恩(キムジョンウン)・第1書記を狙った「斬首作戦」だと非難している。韓国大統領府や米本土などへの先制攻撃に言及したほか、核弾頭の爆発実験や、その弾頭を載せる弾道ミサイルの発射実験をすると新たな脅しをかけている。

演習に対抗するかたちで言動をエスカレートさせているが、実際には米国に対話を呼びかける強いメッセージだろう。

それと同時に、5月に予定する36年ぶりの朝鮮労働党大会に向けて国内を引き締めたいという思惑も透けて見える。

米大統領選の候補者選びが注目されているすきに、核・ミサイル開発を進め、核保有国として米新政権とわたり合うつもりかもしれない。

だが、無謀な振るまいを続けてきた金正恩政権に対し、国際社会はすでに根強い不信感を抱いている。さらなる挑発の繰り返しは、米国との本格的な対話を遠のかせるだけだ。

国内の結束も、これまでのように強まるかどうか疑わしい。先の安保理決議による制裁を中国がどれだけ実行するかによるが、北朝鮮経済が少なからぬ打撃を受けるのは間違いない。

北朝鮮の構造上、すぐに指導部が痛みを感じる事態にはなりにくい。だが、すでに事実上の資本主義が流入しており、いったん豊かなモノを手にした人々は、生活水準が落ちれば体制への不満を募らせるだろう。

北朝鮮メディアは最近、「自らの力で前途を切り開く」ことの重要性を強調する。制裁による影響に国民を備えさせる狙いとみられるが、祖父や父に比べて、カリスマ性に欠ける正恩氏が、安定を維持できるのか。

核にせよ、ミサイルにせよ、成算のない賭けにすぎない。正恩氏はその愚かさを深く認識すべきだ。

読売新聞 2016年03月19日

北ミサイル発射 国際社会で孤立深める軽挙だ

「核戦力」の増強を誇示したいのだろうが、実際は国際的な孤立を深めるだけである。

北朝鮮が中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられるミサイルを、西部粛川付近から発射した。約800キロ飛行して、日本海に落下した。

韓国軍によると、もう1発発射したが、直後にレーダーから消えた。空中爆発の可能性がある。

北朝鮮の核実験などを受けて、国連安全保障理事会は今月初旬、改めて弾道ミサイルの発射を禁じる決議を採択している。

北朝鮮の行動は、1週間前の短距離弾道ミサイル発射に続き、明白に決議に違反している。

安倍首相が「国際社会と緊密に連携し、毅然きぜんとして対応する」と非難したのは、当然である。

北朝鮮は、安保理決議と、今月始まった米韓合同軍事演習に対して、反発を強めている。

朝鮮中央通信によると、金正恩第1書記は、「核弾頭の爆発実験」と「核弾頭搭載可能な様々な弾道ミサイルの発射実験」を早期に行うと言い放った。

核弾頭の軽量化に成功したとも主張し、米国に対抗する「核先制攻撃」までも示唆している。

金第1書記は、5月の朝鮮労働党大会に向けて、自らの求心力を高めたいのだろう。しかし、核弾頭の小型化が、ミサイルに搭載できるレベルにまで進んだのは疑わしいとの見方が一般的である。

中谷防衛相は発射について、「弾道ミサイルの能力増強につながるとすれば、我が国の安全保障上、強く懸念する」と語った。

日本を射程に収めるノドンは多数、実戦配備されているといわれる。移動式発射台を使うため、事前に発射の兆候をつかみにくい。発射を重ねて精度を高めることには警戒が怠れない。

北朝鮮が朝鮮半島の緊張を高めようと、さらなる軍事的挑発に出ることにも備える必要がある。

国際社会は、核ミサイル保有の野心を隠さない金第1書記の暴走を看過してはなるまい。

まずは、安保理制裁決議を厳格に履行すべきだ。核ミサイル開発の資金や物資を遮断する包囲網を強化することが欠かせない。

北朝鮮の脅しに動じず、その暴発を抑止するには、日米韓3か国の安全保障面での連携がますます重要になっている。

今月末に米国で行われる核安全サミットに合わせて、日米韓は首脳会談を開催する方向だ。中国の協力を得つつ、制裁の実効性を高める具体策を協議したい。

産経新聞 2016年03月19日

暴走する北朝鮮 日韓間の協定締結を急げ

暴走する北朝鮮の脅威に備え、日本と米韓両国の協力で抑止力を高めることがより急がれる。

北朝鮮が18日、日本海に向けて発射したのは、日本のほぼ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられ、日本の防空識別圏内に落下したとされる。

国連安全保障理事会決議への明確な違反をいったい何度繰り返すのか。

北朝鮮は日米へのミサイル攻撃を示唆し、露骨な挑発を重ねている。決して容認できない。

核実験と弾道ミサイル発射への制裁や米韓軍事演習に反発しているようだが、いずれも身から出たさびであり、文句を言える立場にはない。

安倍晋三首相が「断固として批判する。北朝鮮に強く自制を求める」と非難したのは当然だ。「核爆弾による報復」を叫び、日本攻撃用のミサイルで威嚇する異様な国に対して、日本自身が何をなすべきかも語ってもらいたい。

今月末からワシントンで開かれる核安全保障サミットに合わせ、日米韓の首脳は会談し、緊密な連携をはかるべきだ。

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