高校教科書 根強く残る偏向に呆れる

朝日新聞 2016年03月19日

教科書検定 押しつけは時代遅れだ

教科書は、時の政権の言い分を教え込む道具ではない。

来年春から高校で使う教科書の検定結果が発表された。

文部科学省は、新しいルールを高校に初めて適用した。

教科書編集の指針を変え、検定基準も政府見解があれば、それに基づいて記すよう改めた。自民党の意向に沿ったものだ。

今回も、昨年の中学の検定と同じようなことが起きた。

領土問題で、日本政府の立場を記すよう意見をつけた。戦後補償のコラムには、政府見解に基づいて書くよう指摘した。

目立ったのは、自衛隊や憲法、原発など賛否の分かれる問題で、安倍政権の姿勢に沿う記述を求めたことだ。

例えば「現代社会」で、積極的平和主義の記述がある。原本には「憲法解釈を変更し」「広範な地域で自衛隊の活動を認めようという考え方」とあった。

ここに「誤解するおそれがある」と意見がついた。「主義」なので、もとになる目的を書くように、というのだ。

その結果、自衛隊活動をめぐる憲法解釈の変更により、「国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、積極的に寄与していこうとするもの」となった。

政府の立場を知ることは悪いことではない。ただ、それを唯一の正解として扱うのは押しつけだろう。戦前の国定教科書に近づいていないか。

国はそもそも教科書の影響力を大きく考えすぎている。

子どもは教科書だけで学んでいるのではない。図書館で調べれば、反対の見方や違った視点の本を知ることができる。

文科省は、次の学習指導要領の議論を進めている。

高校で「歴史総合」「公共」(ともに仮称)などの科目をつくり、多面的、多角的に考える力を育てようというのだ。

こうした科目では、政権の見方、考え方を相対化し、野党や市民、他国など様々な立場を伝える教科書が求められよう。

いまのままの検定の姿勢で、果たして対応できるだろうか。

現在の検定制度は、紙の教科書を前提にしている。

だが、参考になるサイトのアドレスを書く教科書が増えてきた。検定でもその内容を確認しているが、ページの内容はどんどん変わる。国が中身を吟味し切れるものではない。

教科書の一言一句に目くじらを立てる検定は、もはや時代遅れではないか。幅広い教材を認め、教師の指導の裁量を広げ、子どもが多角的に考える機会を増やす。検定も、その方向に踏み出してもらいたい。

読売新聞 2016年03月21日

高校教科書検定 歴史記述がより正確になった

近現代史に関する記述が、より正確でバランスのとれたものとなった。新検定基準の趣旨が反映された結果だろう。

来春から高校1、2年生が使う教科書の検定結果が発表された。通説的な見解が存在しない場合、その旨を明示することなどを求めた新基準が、高校教科書で初めて適用され、計5か所に検定意見が付いた。

日本史で、1937年の南京事件の犠牲者数は「20万人」が「おびただしい数」に改められた。

脚注には「日本の研究では20万人以上、十数万人、数万人などの見解がある」などと付記された。歴史を客観的に理解する上で、こうした説明は欠かせない。

前回の検定で合格した政治・経済などの教科書の表現に、検定意見が付く例もあった。

慰安婦問題で、「政府は93年に公式に謝罪した。しかし、日本政府の対応には、国内外からさまざまな批判がある」との記述について、生徒が日本の具体的な対応を「理解し難い」と指摘された。

65年の日韓請求権協定で「法的に解決済み」とする政府の立場や、アジア女性基金の設立を支援し、「償い金」支給に協力した事実が書き加えられた。

「女性が慰安施設に送られたとされる」との記述を自主的に削除した教科書会社もあった。旧日本軍による強制連行があったと誤解されかねないためだ。

「慰安婦狩り」を行ったとする吉田清治氏の証言を報道した朝日新聞が、誤報と認めたことを削除理由の一つに挙げている。

慰安婦に関し、全体として的確な表現となったのは前進だ。

領土の記述は、現行の1・6倍に増えた。一昨年に改定された学習指導要領の解説書に、尖閣諸島と竹島が「我が国の固有の領土」と明記されたことが要因だ。国の主権にかかわるだけに、正しい知識を習得させる必要がある。

現代社会では、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使の限定容認の説明に検定意見が付いた。

「平和主義を国是としてきた日本が世界のどこででも戦争ができる国になる」との記述が、「日本の国是とされてきた平和主義のあり方が大きな転換点を迎えているといえる」に修正された。

事実誤認を含む偏向した記述に「生徒が誤解する恐れがある」との意見が付いたのは当然だ。

今夏の参院選から、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる。高校生の適切な判断力を養うことが教科書の重要な役割である。

産経新聞 2016年03月19日

高校教科書 根強く残る偏向に呆れる

いまだにそんなことを書いているのかと呆(あき)れる。高校教科書の検定結果が公表されたが、集団的自衛権をめぐる偏向記述が目立った。

検定で修正されたのは当然である。教科書は執筆者ら個人の意見を披露する場ではない。

集団的自衛権の行使容認についての記述は、公民の現代社会と政治・経済の全教科書に登場した。

検定意見がついた例は、生徒との討議を想定したページで教師が「日本が世界のどこでも戦争ができる国になるのかもしれないね」と答える所だ。「誤解するおそれがある」と意見がつき、「…平和主義のあり方が大きな転換点を迎えている…」と修正された。

また「第9条の実質的な改変」と決めつけた小見出しに検定意見がつき、「自衛隊の海外派遣」と文章に沿ったものになった。

社会人 - 2016/03/27 17:25
わかりやすい対比をありがとうございました。しかしどこの出版社だろ。。。
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