安倍首相と閣僚らが、国内外の有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」が始まった。
5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、議長国の日本が議論を主導するのに役立てるのが狙いとされる。
2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げを再延期するための地ならしではないか、との見方も強まっている。
首相は14年11月に衆院解散とともに消費増税の先送りを決めた際、有識者会合を開き、判断材料としていた。増税に慎重な学者を今回の会合に多く招いたことが、こうした観測を呼んでいる。
ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は会合で、「消費増税は需要を増加させない。今のタイミングは適切ではない」と述べ、増税の再延期を勧めた。
22日の会合に出席するポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授も14年11月、首相と面会した際、デフレ脱却前に増税を実施する危険性を説いたという。
ただ、日本の財政は先進国で最悪の状態にある。しかも、消費税の増収分は全額、高齢化の進行を背景に膨張を続ける社会保障費に充てることになっている。
増税延期の是非を判断するには景気動向だけでなく、財政再建への影響や代替財源の確保など、多角的な検討が求められよう。
会合では、世界経済の先行きについて厳しい見方が相次いだ。
スティグリッツ教授は、「世界経済は低迷している。16年は、金融危機以降で最悪だった昨年よりも弱くなる」と指摘した。
年初来、混乱が続いた金融市場は一応、落ち着きを取り戻しつつある。だが、世界経済の前途にはなお、中国など新興国の景気減速や、原油価格の低迷といった不安材料が山積している。
安倍首相が「サミット議長国として、世界経済の力強い成長へ、明確なメッセージを出したい」と強調したのは理解できる。
リーマン・ショック後の世界経済を支えた新興国の成長鈍化が続く中、先進国が本来の役割を果たす重要性は高まっている。
サミットで具体的な処方箋を示すため、日本がいかに指導力を発揮するかが問われよう。
会合で、デール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授は「生産性の向上を促すため、岩盤規制を撤廃すべきだ」と唱えた。
日本が民需主導の安定成長を実現するには、企業や個人の活力を高める成長戦略を着実に強化し、実行していかねばなるまい。
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