野球賭博と巨人 当事者能力に欠けている

朝日新聞 2016年03月15日

プロ野球賭博 全球団の調査を急げ

プロ野球のシーズン開幕が今月25日に迫るなかで、賭博問題が再燃している。

昨年、巨人の3投手が無期失格処分となった問題で、新たに1軍の139試合に登板した巨人の高木京介投手が賭博に手を染めていたことがわかった。

そしてきのう、巨人の複数の選手が自チームの公式戦の結果で金銭のやりとりをしていたことも明るみにでた。

巨人と日本野球機構(NPB)が昨年とった対応は、甘かったと言わざるをえない。開幕直前にファンの疑念を改めて深めてしまった責任は重い。

疑惑の視線はプロ球界全体に注がれている。NPBは、巨人と他の全11球団についても調査を尽くし、完全にうみを出し切らなくてはならない。

きのう表面化した公式戦での金銭のやりとりは、こうだ。選手たちが1人5千円程度を出し合う。巨人が勝てば円陣で掛け声を出した選手が全額を受け取る。負ければその選手が全員に千円程度ずつを払う。4年ほど前から行われていたという。

昨年に把握していたが、巨人とNPBは協約違反ではないとして詳細な公表をしなかった。

金額がいくらだろうと、自チームの公式戦に多くの選手が絡んで常態的に金銭が動いていた事態は驚きだ。球界の自浄能力に、疑問符がつく。

全球団への調査は熊崎コミッショナーが先頭に立ち、厳しい姿勢で臨むべきだ。検察や警察のOBらによる第三者委員会が必要ではないか。

昨年の処分で巨人に科した1千万円の制裁金を、その調査費用に充てるのも一案だろう。

野球賭博には暴力団が関与することが多い。プロ野球選手にはそれ以外にも、さまざまな形で誘いこみがあるものだ。だからこそ、各選手が厳格に身を律する努力が欠かせない。

巨人によると高木投手は、賭博の相手方と一緒にいた人物から「何かスキャンダル情報がないか。それがあれば君の名前はもみ消せる」という趣旨の話をされたことがあったという。

選手に近づいた者が一つのネタをもとにして、ほかのネタを探っていたのかもしれない。

賭博で借金をつくらせ、それを取り返せるような好条件を示し、次は八百長に引き込んでいく。選手を深みにはめるそんな手法もあるという。

球団やNPBは、全選手を対象にした教育活動の強化を進めてほしい。一切の違法行為を拒絶する、より強い意識をプロ球界全体で育てていかなくてはならない。

読売新聞 2016年03月12日

巨人野球賭博 選手の規律順守を徹底したい

読売巨人軍の高木京介投手が野球賭博に関与していたことを認めた。日本プロフェッショナル野球組織(NPB)から昨年11月に無期失格処分を受けた3投手に続く不祥事だ。

巨人軍は、球団を挙げて信頼回復に取り組んできた。プロ野球の開幕間近に、ファンを再び裏切ることになったのは、極めて残念な事態である。巨人軍の久保博社長は記者会見で、「重ね重ね、痛恨の極みです」と謝罪した。

巨人軍は、高木選手をNPBの熊崎勝彦コミッショナーに告発した。NPBの調査を経て、厳正な処分が下されよう。

一連の問題の責任を取り、巨人軍の白石興二郎オーナー、桃井恒和会長、渡辺恒雄最高顧問が辞任した。後任のオーナーには、老川祥一・読売新聞グループ本社最高顧問が就いた。

老川新オーナーは、「すべての野球ファンに深くおびを申し上げます。一刻も早く信頼を回復したい」と語った。

オーナー代行には、東京地検特捜部長などを歴任した弁護士の松田昇氏が就任した。巨人軍の綱紀粛正に力を注いでもらいたい。

高木選手は2014年4~5月に、無期失格となった笠原将生元選手に誘われて、プロ野球の8~9試合を対象に賭けをした。相手は、笠原元選手の知人の飲食店経営者だ。NPBの調査で野球賭博常習者と認定されている。

高木選手の行為は、試合を対象にした賭けを禁じた野球協約に明らかに違反する。記者会見で「関係者の皆さんを裏切ってしまい、本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

巨人軍が全選手を対象に実施したヒアリング調査で、高木選手は野球賭博への関与を否定していた。飲食店経営者は、巨人軍の調査協力要請に応じなかった。

捜査権を持たない球団の調査には、限界があるだろう。だが、3選手の不祥事が明らかになった際、高木選手の関与をあぶり出せなかったことは事実だ。結果として、調査を尽くさなかったと批判されても、仕方あるまい。

かつて巨人軍に在籍した清原和博元選手は、覚醒剤取締法違反(所持)で起訴された。

プロ野球選手は、子供たちのあこがれの存在だ。不祥事を起こせば、社会的影響が大きい。重い責任を背負っているという自覚を持ち、現役中はもちろん、引退後も身を律することが求められる。

巨人軍は、研修などで選手教育を強化しなければならない。

産経新聞 2016年03月10日

野球賭博と巨人 当事者能力に欠けている

ファンや球界に対する最悪の背信行為である。これで事件の幕引きとはいえまい。徹底調査や厳正な処罰を抜きに、再発の防止も信頼の回復も図ることなどできない。

プロ野球巨人の高木京介投手が野球賭博に関与していたことが明らかになった。巨人では昨秋、3投手が野球賭博に関与したとして契約解除となったばかりで、渡辺恒雄最高顧問ら球団の3首脳が引責辞任する。

4人目の投手の野球賭博への関与は、週刊文春の取材によって発覚した。高木投手は昨秋の球団の聴取や、週刊誌の指摘後も、賭博への関与を否定していた。

久保博球団社長は会見で「なぜ自らの過ちを進んで申し出てくれなかったのか、極めて残念」と述べた。だが、球団による調査、聴取がこうした性善説に頼ったものだったとすれば、事実の解明など望むべくもない。

「今後はチームのうみを出し切る」とも述べたが、これまでと、どう調査の手法を変えるのか。全スタッフ、全選手の携帯電話の調査を断行し、選手らもこれに積極的に応じる。当事者としてそれぐらいの自覚を見せてほしい。

昨秋、3投手の野球賭博関与を日本野球機構(NPB)が発表した翌日の新人選手選択(ドラフト)会議に、巨人は「有望な新人を獲得する唯一の機会」として参加した。25日に開幕する公式戦にも「相手チームもあり、ファンの皆さまに立派なプレーを見せることが、われわれにできること」として出場する方針という。

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