中国国防費 軍拡より安定の思考を

朝日新聞 2016年03月05日

中国国防費 軍拡より安定の思考を

中国の国防費が今年もまた大きく増えることがわかった。

伸び率は7~8%という。6年ぶりに1桁台になったとはいえ、突出した軍拡が続く流れは変わっていない。

アジア太平洋での中国の軍事的な動きの強化に、日本を含む各国は不安を強めている。深い憂慮を抱かざるをえない。

中国の国防費はほぼ毎年10%以上増え、昨年は当初予算で8869億元(15兆円余)。日本の防衛費の3倍を超える。

将兵の給与の増額は断片的に伝えられている。だが、それだけで説明はつかない。弾道ミサイルなど最新兵器の充実ぶりは、昨秋の軍事パレードでも明らかになった。

予算の伸びだけでなく、その中身の詳細を説明しようとしない不透明さも大きな問題だ。

表向き軍事以外に計上されている予算が、実は国防関連にも使われている、と各国の軍事専門家らは指摘する。

覇権を求めない平和国家だと政権幹部は繰り返すが、外交上の言葉とは裏腹に、行動はじわじわと軍事力を拡大させている。そんな国を、周辺国が信頼することは難しい。

南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が進めている岩礁の埋め立ては、滑走路が使える状態に至り、高性能レーダーが設けられたこともわかった。

領有権の論争が絡み合う南シナ海で、埋め立てなどを強行したのは中国だけではない。しかし、中国ほど急速に、広範に、一方的な行動を広め、現状変更を進める国はなかった。

領有権の争いがある以上、あくまで法に基づき、話し合いで解決すべきであり、力に訴えることは決して認められない。

中国が意識するのは、アジアで今も存在感を保つ米国だ。南シナ海で米軍が中国に対抗するかたちで「航行の自由」作戦を始めたことに反発している。

だが、周辺国の声に耳を傾ければわかる。いま多くの国々が脅威に感じるのは、中国の振るまいであり、米軍ではない。

中国自身、米国が安定装置としての役目を担う国際秩序のもとで、30年以上にわたって経済成長という配当を得てきた最大の受益者だったのである。

かつて中国はソ連と対立したが、今やロシア、中央アジア諸国と上海協力機構をつくり、国境をめぐる紛争はない。陸だけでなく海でも安定した環境を築くことは、中国のみならずアジア全体の発展に資する。

古い軍拡の思想を脱し、今世紀にふさわしい共存共栄の思考へと転換すべきだ。

産経新聞 2016年03月06日

中国国防費 止まらぬ異常な軍拡…自ら敵を増やすつもりか

国際社会の懸念と自らの経済の減速をよそに、軍拡を止めない姿勢をあらわにした。

中国の習近平政権は全国人民代表大会(全人代)に、経済成長率の目標を上回る、前年比7.6%増の約9543億5400万元(約16兆7千億円)という今年の国防費を提示した。

李克強首相は演説で、東・南シナ海での勢力拡張を念頭に、「海洋強国を建設する」と強調し、「軍事闘争への備えを統一的に進める」と述べた。

国際ルールを無視した「力による現状変更」を追求する姿勢を改めず、世界の平和と安定に逆行する道を突き進もうとするのを看過することはできない。

国防費の伸び率が6年ぶりに1桁になったというが、異常な数字であることに変わりはない。米国に次ぐ世界第2位であり、日本の平成28年度予算案の防衛費の約3.3倍である。

詳しい内訳を公表せず、透明性に欠けるのも相変わらずだ。空母建造や宇宙分野の関連費用を国防費以外の項目で計上している可能性が高い。

実際の軍事費の総額は、全人代で公表された国防費の2倍以上にものぼると指摘されている。

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