中国の国防費が今年もまた大きく増えることがわかった。
伸び率は7~8%という。6年ぶりに1桁台になったとはいえ、突出した軍拡が続く流れは変わっていない。
アジア太平洋での中国の軍事的な動きの強化に、日本を含む各国は不安を強めている。深い憂慮を抱かざるをえない。
中国の国防費はほぼ毎年10%以上増え、昨年は当初予算で8869億元(15兆円余)。日本の防衛費の3倍を超える。
将兵の給与の増額は断片的に伝えられている。だが、それだけで説明はつかない。弾道ミサイルなど最新兵器の充実ぶりは、昨秋の軍事パレードでも明らかになった。
予算の伸びだけでなく、その中身の詳細を説明しようとしない不透明さも大きな問題だ。
表向き軍事以外に計上されている予算が、実は国防関連にも使われている、と各国の軍事専門家らは指摘する。
覇権を求めない平和国家だと政権幹部は繰り返すが、外交上の言葉とは裏腹に、行動はじわじわと軍事力を拡大させている。そんな国を、周辺国が信頼することは難しい。
南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が進めている岩礁の埋め立ては、滑走路が使える状態に至り、高性能レーダーが設けられたこともわかった。
領有権の論争が絡み合う南シナ海で、埋め立てなどを強行したのは中国だけではない。しかし、中国ほど急速に、広範に、一方的な行動を広め、現状変更を進める国はなかった。
領有権の争いがある以上、あくまで法に基づき、話し合いで解決すべきであり、力に訴えることは決して認められない。
中国が意識するのは、アジアで今も存在感を保つ米国だ。南シナ海で米軍が中国に対抗するかたちで「航行の自由」作戦を始めたことに反発している。
だが、周辺国の声に耳を傾ければわかる。いま多くの国々が脅威に感じるのは、中国の振るまいであり、米軍ではない。
中国自身、米国が安定装置としての役目を担う国際秩序のもとで、30年以上にわたって経済成長という配当を得てきた最大の受益者だったのである。
かつて中国はソ連と対立したが、今やロシア、中央アジア諸国と上海協力機構をつくり、国境をめぐる紛争はない。陸だけでなく海でも安定した環境を築くことは、中国のみならずアジア全体の発展に資する。
古い軍拡の思想を脱し、今世紀にふさわしい共存共栄の思考へと転換すべきだ。
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