対「北」制裁決議 厳格な履行へカギ握る中国

朝日新聞 2016年03月04日

北朝鮮制裁 着実に実行してこそ

強力な制裁が決まった。その効果は、国際社会が忠実に実行するか否かにかかっている。

4度目の核実験から2カ月。国連安保理がようやく北朝鮮への制裁決議を採択した。

「この20年間で最も強力」と米国連大使は言う。安保理による制裁としては、90年代の湾岸戦争後のイラク制裁に次ぐような厳罰といえるだろう。

先月には事実上の長距離ミサイル発射もあった。金正恩(キムジョンウン)政権は、国際社会の意思を試すかのように挑発を繰り返している。

その行動パターンを改めさせるには、過去4回の決議を上回る制裁が必要だった。異例に長い交渉を続けた米国と中国が一致して、平壌に強く反省を求めた意味は重い。

制裁は、核ミサイル開発と資金源を断つため、例外つきながら北朝鮮への航空燃料の輸出を禁じる。北朝鮮から天然資源を買うことも制限され、出入りする貨物の検査も盛られた。

北朝鮮の貿易・金融の機会が絞られるため、市民生活への影響も避けられないが、現状のまま無謀な兵器開発を見過ごすことはできない。厳しい制裁強化はやむをえまい。

今後の問題は、決議の中身がどれほど順守されるかだ。これまでの制裁も、実効性をめぐる疑問府がついて回った。

カギを握るのは中国である。北朝鮮の中国への貿易依存度は約9割といわれるが、過去の制裁では中国が多くの「抜け穴」を用意していたとされる。

中国の外相は先月に訪米した際、中朝関係が今後悪化するのはやむをえないとの見通しを示した。金正恩政権が痛みを感じてこその制裁だ。中国には何より具体的な行動を求めたい。

安保理決議は、国連の全加盟国をしばる。だが、自国の北朝鮮制裁を一度も報告したことのない国が半分近くあるという。今回の採択を機に、加盟国の意識を高める必要があろう。

一方、朝鮮半島問題の根本的な改善を探るには、制裁一辺倒では打開できない。中国の制裁履行と並行して、米国も、もっと北朝鮮問題に関与する行動をおこす必要がある。

朝鮮半島の非核化と引きかえに、休戦状態のままの朝鮮戦争を正式に終わらせる。そのための米朝協議は、近年の歴代米国政権が取りくんだ課題だった。北朝鮮を対話の席につかせるには、平和協定をめぐる協議が避けられないのは事実だ。

前途はなお多難だが、日米韓は中ロとの協調の幅を広げ、北朝鮮を国際社会に軟着陸させる道を模索していくしかない。

読売新聞 2016年03月04日

対「北」制裁決議 厳格な履行へカギ握る中国

国際社会が結束して、北朝鮮への圧力を強め、核放棄の実現につなげることが肝要である。

核実験と長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対して、国連安全保障理事会が制裁を大幅に強化する決議を全会一致で採択した。

対北朝鮮制裁決議は5回目だ。核実験実施から2か月近くを要したのは異例だが、これまでにない強力な内容になったと言える。

決議は、北朝鮮に出入りする貨物について、核・ミサイル関連分野などで禁輸品の疑いがある場合に限らず、すべて検査することを各国に義務づけた。

注目すべきは、金正恩政権の中枢を担う朝鮮労働党や軍の収入源を狙い撃ちした措置である。

北朝鮮産の石炭や鉄鉱石など鉱物資源の輸出は原則、禁止した。軍の弱体化を狙い、航空用燃料も禁輸とした。制裁が厳格に履行されれば、核ミサイル開発へ暴走する金政権に相当な打撃を与えられるのではないか。

北朝鮮は朝鮮中央通信を通じて、決議採択の動きに対し、「自主権に対する侵害であり、重大な挑戦だ」などと反発している。

採択直後には、短距離ミサイルかロケット弾とみられる6発を日本海に向けて発射した。さらなる軍事挑発への警戒は怠れまい。

制裁の効果を高めるには、中国が前面に立つことが不可欠だ。従来は、中国経由で物資が不正に輸送されている疑いがあった。

今回の制裁決議は、収入が民生用の場合は例外として、北朝鮮産の石炭や鉄鉱石の輸出を認めた。その判断は中国など輸入国に委ねられる。これを抜け道として利用させてはならない。

決議を巡る協議は、強力な制裁を求める米国に、中国が強く抵抗し、長期化した。

習近平国家主席は今月末に訪米する。中国が譲歩したのは、南シナ海情勢で米国と対立する中、制裁協議の引き延ばしへの批判を避けようとしたためではないか。

ロシアも協議の最終局面で決議の修正を求めた。朝鮮半島問題での影響力を確保しようという思惑があったのだろう。

日本は、安保理非常任理事国として、決議採択に貢献した。安倍首相は「国際社会と協力し、厳格に実施していく」と強調した。

決議は北朝鮮に関し、「国際社会による人道上の懸念」にも言及している。日米韓の連携を基盤に、核、ミサイル問題と連動して、日本人拉致問題の進展を目指すことが欠かせない。

産経新聞 2016年03月04日

対北制裁決議 厳格履行へ日本が範示せ

金正恩政権に核・弾道ミサイル開発を放棄させるのが目的である。これからの厳格な履行こそが重要だ。

国連安全保障理事会の新たな対北制裁決議は、北朝鮮を出入りする全ての貨物の検査の義務化や違法行為に関わった北外交官の追放など、これまで以上の厳しい措置が盛り込まれた。

53カ国が共同提案国となって全会一致で採択され、オバマ米大統領は「国際社会の強力で結束した対応」と歓迎した。国際社会の総意であり、北朝鮮は重く受け止めねばならない。

北朝鮮を「核保有国」として認知する意思はないことを改めて明確にした意味もある。核・弾道ミサイルの実験強行は孤立を深めるだけの愚挙だと知るべきだ。

だが、交渉に異例の約2カ月も要した。米中両国がようやく合意した後、ロシアが自国の都合を主張し修正が行われた。足並みの乱れを招いた中露の動きは、北朝鮮の身勝手を増長させるだけだ。

安保理の対北制裁の専門家パネルは、2013年の核実験を受けた決議の制裁措置について、履行状況を申告したのは加盟193カ国中42カ国にすぎないと指摘している。制裁の抜け穴を塞ぐのに心もとないと言わざるを得ない。

安倍晋三首相は「日本は国際社会と協力し、(厳しい措置を)厳格に実施していく」と述べた。

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