国際社会が結束して、北朝鮮への圧力を強め、核放棄の実現につなげることが肝要である。
核実験と長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対して、国連安全保障理事会が制裁を大幅に強化する決議を全会一致で採択した。
対北朝鮮制裁決議は5回目だ。核実験実施から2か月近くを要したのは異例だが、これまでにない強力な内容になったと言える。
決議は、北朝鮮に出入りする貨物について、核・ミサイル関連分野などで禁輸品の疑いがある場合に限らず、すべて検査することを各国に義務づけた。
注目すべきは、金正恩政権の中枢を担う朝鮮労働党や軍の収入源を狙い撃ちした措置である。
北朝鮮産の石炭や鉄鉱石など鉱物資源の輸出は原則、禁止した。軍の弱体化を狙い、航空用燃料も禁輸とした。制裁が厳格に履行されれば、核ミサイル開発へ暴走する金政権に相当な打撃を与えられるのではないか。
北朝鮮は朝鮮中央通信を通じて、決議採択の動きに対し、「自主権に対する侵害であり、重大な挑戦だ」などと反発している。
採択直後には、短距離ミサイルかロケット弾とみられる6発を日本海に向けて発射した。さらなる軍事挑発への警戒は怠れまい。
制裁の効果を高めるには、中国が前面に立つことが不可欠だ。従来は、中国経由で物資が不正に輸送されている疑いがあった。
今回の制裁決議は、収入が民生用の場合は例外として、北朝鮮産の石炭や鉄鉱石の輸出を認めた。その判断は中国など輸入国に委ねられる。これを抜け道として利用させてはならない。
決議を巡る協議は、強力な制裁を求める米国に、中国が強く抵抗し、長期化した。
習近平国家主席は今月末に訪米する。中国が譲歩したのは、南シナ海情勢で米国と対立する中、制裁協議の引き延ばしへの批判を避けようとしたためではないか。
ロシアも協議の最終局面で決議の修正を求めた。朝鮮半島問題での影響力を確保しようという思惑があったのだろう。
日本は、安保理非常任理事国として、決議採択に貢献した。安倍首相は「国際社会と協力し、厳格に実施していく」と強調した。
決議は北朝鮮に関し、「国際社会による人道上の懸念」にも言及している。日米韓の連携を基盤に、核、ミサイル問題と連動して、日本人拉致問題の進展を目指すことが欠かせない。
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