夏の参院選に向け、与野党が憲法改正の議論を深める契機としたい。
安倍首相が参院予算委員会で、憲法改正について「自民党は立党当初から党是として掲げている」と強調したうえで、初めて「私の在任中に成し遂げたい」と言明した。
首相の自民党総裁任期は2018年9月までだ。参院選後の2年余で、与野党が改正内容を詰めた後、改正案を発議し、国民投票で過半数の賛成を得るのは、決して楽なスケジュールではない。
公明党には、「唐突な感じがする」との戸惑いの声もある。
だが、首相が敢えて改正の目標時期を区切ることで、参院選の主要な争点に据え、国会論議の活性化を図ったことを評価したい。
与党は、衆院では発議に必要な3分の2以上の議席を持つが、参院では30議席近く足りない。
首相が「与党、さらに他の党の協力もなければ難しい」と指摘したように、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党、新党改革といった、改正に前向きな野党との連携が欠かせない。
3分の2の勢力確保には、参院選で自民、公明、おおさか維新などとの合計で78議席を獲得する必要がある。13年参院選で自公両党は76議席を得て大勝したが、今回、憲法改正を争点に掲げれば、ハードルは決して低くあるまい。
国民投票が控えていることを考慮すれば、野党第1党の民主党などの協力も排除せずに、より広範な合意を形成して発議することが現実的な選択肢と言える。
11月に公布70年を迎える憲法は時代の変化に伴い、現実との様々な矛盾や乖離が拡大してきた。
日本の安全保障環境は悪化し、自衛隊の国際平和活動参加への要請も高まっている。大規模災害に効果的に対処する仕組みや、衆参両院の役割分担、新たな人権のあり方も見直しが必要だろう。
大切なのは、衆参両院の憲法審査会で、改正項目の絞り込みと改正内容に関する具体的な議論を前に進めることである。
自民党は、緊急事態条項の創設を優先項目に挙げている。
巨大地震の際、円滑な被災者救助・支援や復旧のため、一時的な首相や政府の権限強化を定めておく。国政選が実施困難な場合、国会議員の任期延長を可能にする。こうした憲法規定の追加は国家の危機管理として当然である。
民主党は国民の権利制限に懸念を示すが、過剰な制限を避けるためにも、首相らの権限強化の枠組みを定める意義はあるはずだ。
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