東京マラソン 「社会参加」の価値発信を

朝日新聞 2016年02月28日

マラソン選考 明確な基準がほしい

マラソンの五輪代表選びが、また、もめている。

8月のリオデジャネイロをめざす福士加代子選手が、来月に名古屋である最後の選考レースに出場するという。

彼女は昨年10月に米国シカゴで完走した後、今年1月に大阪国際女子で走って優勝した。それから1カ月あまりでまた42・195キロに挑むことになる。

日本陸連は出場撤回を呼びかけていたが、代表の座を確実にしたい一心で決めたようだ。過酷な戦いを考えなければならないのは、選び方に問題があるからだ。

女子代表は3人。まず昨年の世界選手権で8位以内で最上位の選手が内定する。次に、さいたま国際、大阪国際女子、名古屋ウィメンズの3大会の日本人3位までが対象となる。

その中から(1)規定のタイム以内で走った選手(1人)(2)記録や順位、レース展開、気象条件などを陸連が「総合的に勘案」して評価した選手、の優先順位で選ぶ。

世界選手権では伊藤舞選手が内定した。福士選手は大阪で、規定タイムを上回る記録で優勝して、五輪でメダルが狙えそうな有力候補となった。

しかし今度の名古屋で、2選手が福士選手の大阪での走りを上回る快走を見せれば、落選する可能性もでてくる。だから彼女は名古屋も走ることにした。

問題は、選考の方法が不明瞭なことだ。自動的に決まる部分が少なく、最後は選ぶ側の主観に左右される。

分かりやすさだけならば、一つの大会で一発勝負にすることが考えられる。だが各地の大会それぞれがマラソンの社会的な裾野を広げ、選手の強化、競技の普及につながっている。

一発選考では、たまたま体調を崩した実力のある選手が五輪に出られないことにもなる。

たとえば選考レースで、規定タイムをきって優勝した選手を自動的に決める、あるいは、規定タイム以上を出した日本人の最高位にするなどの方法も検討に値するのではないか。

ほかの競技をみると、競泳では、選考会となる日本選手権で1位、2位になり、規定タイムをきった選手が代表になるという明確な原則がある。

大切なのは選ばれなかった選手がきちんと納得でき、競技を支える幅広い国民の目にも分かりやすい基準づくりである。それが選手にとっても、最善の条件で五輪に挑む道につながる。

陸連は、透明性を確保しつつ、最も強い選手団を作る賢明な方法に知恵を絞ってほしい。

産経新聞 2016年02月27日

東京マラソン 「社会参加」の価値発信を

3万6500人のランナーが都心を駆け抜ける東京マラソンはあす、10回目の号砲が鳴る。

東京都庁前から皇居、銀座、浅草を経て有明のゴールを目指すレースには、今年も当選倍率10倍を超える応募があった。海外からの参加者も30以上の国・地域に及び、国際色は豊かだ。

回を重ね、東京は伝統文化と最新文化の同居する都市として認知され、世界的な評価を高めてきた。2020年東京五輪の招致成功も、東京マラソンの存在を抜きに語れない。

大会は日本社会に「スポーツを通じた社会貢献」という新たな可能性も示した。その一つがチャリティー文化の浸透だ。10万円以上の寄付をした先着3千人が参加できる「チャリティーランナー」枠は、創設6年目の今回、初めて定員に達した。

この枠を通じた寄付金は毎年、東日本大震災の被災地支援や難病患者の支援に充てられてきた。同様の手法は、大阪マラソンなどにも広がっている。

参加枠の大半をチャリティーに割り振り、100億円近い寄付を集めるロンドン・マラソンには及ばないが、スポーツの価値を高める取り組みとして、今後も枠の充実に力を入れてほしい。

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