力による支配の拡大で地域の緊張を高める独善的な企みと言えよう。
中国が南シナ海で、島嶼や人工島の軍事拠点化を加速させている。
スプラトリー(南沙)諸島の四つの人工島でレーダーとみられる施設を建設していることが、衛星写真などで判明した。
南シナ海の北半分ではすでに、パラセル(西沙)諸島などに設置したレーダーで監視体制を築いている。今回のレーダー網の整備によって、南シナ海のほぼ全域をカバーできる警戒監視能力を獲得する狙いだろう。
パラセル諸島では、中国が実効支配するウッディ島(永興島)に、長距離地対空ミサイルに続いて、戦闘機や戦闘爆撃機を配備したことも発覚した。滑走路の拡張などで、島の面積は2年足らずで4割も増大したとされる。
一連の措置は、東シナ海に加え、南シナ海にも防空識別圏を設定するための布石ではないか。
国際法の根拠のないまま、南シナ海を自らの「湖」のように囲い込み、米国の影響力の排除を図る習近平政権の野心は明白だ。
制海権と制空権を確保し、米軍の有事介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を効果的に進める思惑もあろう。
米太平洋軍のハリー・ハリス司令官は上院軍事委員会の公聴会で、「中国は東アジアで覇権を追求している」と述べ、軍事拠点化に強い警戒感を示した。
深刻なのは、訪米した中国の王毅外相がケリー米国務長官の懸念表明をはねつけたことである。
ケリー氏は記者会見で、「係争海域への航空機配備は、航行や上空飛行の自由と両立しない」と強調した。だが、米国がもっと厳しくクギを刺さなければ、中国の一方的な言動は止められまい。
王氏は「戦略爆撃機やミサイル駆逐艦が南シナ海に毎日現れていることを重視すべきだ」と反論した。「航行の自由」を体現する米軍の巡視活動を「軍事化」だとするのは、詭弁に過ぎない。
習国家主席は昨年9月の訪米時に、「軍事化を進める意図はない」と明言していた。中国は、救難活動や航行の安全などで国際的責務を果たすとも強弁している。
南シナ海の安定に重要な役割を発揮すべき大国が国際公約を守らず、率先して情勢を不安定化させるような状況は容認できない。
米国が巡視活動を継続・強化することが肝要である。日米は関係国と緊密に連携し、対中圧力を維持せねばならない。
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