持続的な高度成長を目指す一方で、過熱も防がねばならない。中国政府にとって、経済運営のかじ取りが極めて難しい1年になろう。
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が始まり、国内総生産(GDP)の8%前後の成長確保が、今年の目標として設定された。
900万人以上の雇用を創出し、失業率は4・6%以下、消費者物価上昇率は約3%を目指す。社会の安定を確保するために必要な数値ということだろう。
目標達成のため、今年も大規模な財政出動を続け、金融緩和策も原則的に維持する方針だ。
2008年秋に起きた世界金融危機で、先進国経済が軒並み打撃を受ける中、中国は昨年、8・7%もの高成長を実現した。
今年も積極的な景気刺激策を継続することで、8%の目標達成は可能ではないか。
中国は今年、GDP総額で日本を追い抜き、世界第2の経済大国となるのが確実視されている。中国政府は自覚をもって、適切な経済運営に臨むべきだ。
その中国経済のアキレス腱は、全国規模で起きている不動産バブルだ。海外にいる華僑らが投じる「熱銭」と呼ばれる投機資金が価格を押し上げている。
北京や上海などの大都市では、マンションなどの価格は一般国民の手が届かないところまで高騰した。マイホームをあきらめきれない庶民の不満は根強い。
バブルの沈静化には、一定の金融引き締めと、投機目的の不動産購入への規制が必要だ。だが、行き過ぎれば景気が息切れしかねない。この両立が難問である。
都市住民と農民との経済格差是正も、相変わらず重要課題だ。
全人代では、農業・農村・農民の「三農」対策として、8000億元以上の予算をつぎ込み、農業関連の基盤整備などを進めることが表明された。
生産能力を引き上げ、農民の収入を増やすのが狙いだろう。
注目されたのは、全人代開幕前に新聞13紙が一斉に同じ社説を掲げ、戸籍制度の改善を訴えたことだ。都市住民の戸籍と農民の戸籍との間の差別をなくすべきだとの主張である。
この戸籍制度のため、都市部に働きに来た1億人を超える農民とその子弟は、出稼ぎ先で社会福祉の網から漏れるなど、不利な扱いを受けている。中国社会の安定のためには、この問題への本腰を入れた取り組みが欠かせない。
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