英国とEU 離脱は世界の安定を乱す

読売新聞 2016年02月24日

英国民投票へ EU離脱なら不安定化を招く

欧州連合(EU)に英国が残留するか、離脱するかを問う国民投票が、6月23日に実施されることになった。

国民投票で離脱となれば、もう後戻りはできない。英国は域内第2の経済規模を持ち、国連安全保障理事会常任理事国でもある。欧州の政治・経済に大きな影響を及ぼすのは避けられまい。EUは岐路に立っている。

残留を訴えるキャメロン英首相は、「改革した欧州にとどまる方が、英国は、より強く安全で豊かになれる」と強調した。EU首脳会議が残留を後押しする改革で合意したことを踏まえたものだ。

合意では、EU側が譲歩して、英国に特別な地位を保証した。

政治統合の深化には、英国が関与しないことを容認した。移民に対する社会保障を英国が制限することを可能にし、ユーロ圏の経済危機で英国など非ユーロ圏に負担をかけないよう保証した。

EU加盟継続に向けて国民を説得できるのか、キャメロン氏の指導力が試されよう。

EUは昨年以降、中東からの難民急増という深刻な課題に直面している。各国がバラバラに流入制限策に走り、反EUの動きを勢いづかせた。このままでは、欧州統合が危機に陥りかねない。

英国でも近年、EUに加盟した東欧諸国からの移民増加を背景に「反移民」政党が伸長し、与党・保守党内でもEU懐疑論が強まっていた。キャメロン氏は、この問題を決着させる国民投票を公約し、昨年の総選挙で勝利した。

英国の輸出先の半分はEUだ。離脱の場合は、EUとの間で貿易などの取り決めを締結し直す必要がある。英国経済の不透明さが増すのは確実だ。

離脱派は、EUの権限拡大を批判し、英国の主権を取り戻すべきだと主張する。保守党の首相後継候補と目される有力者、ジョンソン・ロンドン市長が「離脱」支持を表明したのは、キャメロン氏にとっては痛手となろう。

ジョンソン氏らには、国際金融センターであるロンドンのシティーをEUの規制から解放することで、長期的な経済発展が望めるという期待もあるのではないか。

英国の離脱は、巨大な単一市場としてのEUの存在感低下につながる。対ロシア制裁やテロ対策など外交分野での取り組みでも、EUの発言権を弱めよう。

日本企業の多くが、欧州展開の拠点を英国に置く。国民投票の結果次第では、戦略の見直しを迫られることにもなる。

産経新聞 2016年02月23日

英国とEU 離脱は世界の安定を乱す

英国のキャメロン首相が欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票実施を表明した。

EU首脳会議が、域内移民の抑制など英国が求めていた改革案を承認したのを受け、キャメロン氏は残留の立場から国民投票に臨む。

だが、離脱論は与党の保守党内にも広がっている。結果次第では、国家を超えた壮大な実験といわれてきたEUの危機を招く。

英国はドイツに次ぐ域内2位の経済大国であり、フランスとともに国連安全保障理事会の常任理事国を務める。離脱は経済、外交、安全保障のあらゆる面でEUに打撃を与えるからだ。

キャメロン氏はEUに留(とど)まり、中核国の役割を担う選択を行うよう指導力を発揮してほしい。

欧州を取り巻く情勢に目を向ければ、ロシアは米欧との対決姿勢を鮮明にしており、中東ではシリア内戦がやまず、過激組織「イスラム国」(IS)が跋扈(ばっこ)する。EUの存在感低下は、地域のみならず世界の安定を乱しかねない。

英国では、遅れてEUに加盟した東欧諸国などからの域内移民が急増し、雇用が奪われたとの不満が強い。非ユーロ圏でありながらユーロ危機に巻き込まれたこともEUへの懐疑論を強めた。

EU全体としても地中海を渡り押し寄せる難民問題に苦慮する。欧州諸国に流入した難民・移民数は昨年、100万人を超え、第二次大戦以来最大規模となった。

キャメロン氏は昨年5月の総選挙で、国民投票の実施を公約に掲げて勝利した経緯がある。国内世論を受けた対応だったのだろうが、英国民の不満のはけ口のように離脱を論じるべきではない。

だいいち、離脱後に英国が歩む姿は描き切れていない。経済面では、中国依存を高めることで埋め合わせようというのだろうか。

また、離脱は北部スコットランドにある独立論を再燃させ、英国としての一体性の維持にも困難な事態をもたらすだろう。

EUがまとめた改革案では、英国がユーロ圏の救済で負担を求められないことを確認するなど、不利益を受けないための保証が盛り込まれた。

英国は主権や独自性を重視し、欧州統合から一定の距離を置いてきた。さらに「特別な地位」を得たのであり、離脱回避の説得材料とすべきだろう。

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