衆院の選挙制度改革では、小選挙区の「1票の格差」の是正を優先すべきだ。各党の意見集約を急ぎ、今国会で立法措置を講じねばならない。
与野党が、選挙制度改革に関する見解を大島衆院議長にそれぞれ表明した。
民主、公明、維新の各党などは有識者調査会の答申を基本的に受け入れた。自民党は、定数削減には応じるが、都道府県定数の再配分は先送りする考えを示した。
自民党案は、1票の格差を2倍未満に抑えるため、2015年の簡易国勢調査に基づき、小選挙区定数を6減らし、区割りを見直す。比例選は4削減する。安倍首相の指示で、原案を修正し、定数削減を前倒ししたものだ。
鹿児島、岩手など6県で各1減らす「0増6減」を検討している。都道府県ごとの定数再配分は20年の国勢調査後に行うとしており、弥縫策との印象は否めない。
調査会は、「アダムズ方式」による「7増13減」の再配分を求めていた。都道府県間格差は最大1・621倍となる。選挙区間格差も2倍未満に収まる見通しだ。
自民党が再配分を先送りしたのは、「13減」の対象県の現職議員を中心に反対・慎重論が根強いという党内事情によるものだ。
だが、与野党が改革案で合意できず、有識者に検討を委ね、答申を尊重すると約束した経緯を軽視すべきではあるまい。他の主要政党がアダムズ方式への賛成で足並みをそろえる中、自民党は再考せざるを得ないのではないか。
民主主義の基盤である選挙制度は、より多くの党の賛同で見直すことが望ましい。安倍首相は今国会で関連法案を成立させる考えを示した。「1強」の自民党には合意形成を主導する責任がある。
残念なのは、主要政党が定数削減になお固執していることだ。
調査会が「10減」を提案したのは、各党の「国民との約束」に配慮しただけで、定数削減に「積極的な理由や理論的根拠は見いだし難い」と指摘している。
定数を減らせば、選挙で多様な民意を反映しにくくなる。法案審議などを通じた立法府の行政監視機能も低下しかねない。日本の国会議員は人口比でみれば、欧州諸国などより多くない。
定数が少ないほど、格差是正が難しくなり、その手間が増えることも考慮すべきだろう。
議員が「身を切る」姿勢を示す必要があるなら、定数を減らすのでなく、政党交付金の削減などで対応するのが筋である。
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