慰安婦問題 世界に向け事実の発信を

読売新聞 2016年02月19日

政府慰安婦説明 誤解払拭へ国際発信を強めよ

慰安婦問題に関する誤解を払拭するため、国際的な情報発信を一段と強化せねばならない。

政府は、ジュネーブでの国連女子差別撤廃委員会で、慰安婦の強制連行を裏付ける資料は発見されていないことなど、事実関係について初めて包括的に説明した。

杉山晋輔外務審議官が、韓国で「女性狩り」をしたとする吉田清治氏の証言は捏造ねつぞうで、吉田証言を報道した朝日新聞が誤報を認め、謝罪したことにも言及した。

遅きに失した感はあるが、国際社会では、事実誤認は的確に正し、日本をおとしめる主張には積極的に反論することが欠かせない。

杉山氏は、アジア女性基金や昨年12月の日韓合意に基づく元慰安婦支援に触れ、「日本政府が歴史の否定をしているとか、何の措置もとっていないという批判は事実に反する」と強調した。

これを機に、慰安婦問題に関して、正確な事実関係を世界に広げる外交努力を加速させたい。

懸念されるのは、「日本軍が20万人の女性を性奴隷にした」といった誤った言説が、世界各国でひとり歩きしていることだ。

誤解を広げた発端は、1996年に国連人権委員会に提出されたクマラスワミ報告である。

吉田証言を論拠の一つとして慰安婦を「性奴隷」と断じた。慰安婦の数は、朝鮮半島出身者だけでも20万人と記載した。こうした誤まった表現は、米国に設置された慰安婦像の碑文にも刻まれた。

杉山氏は今回、「20万人」に根拠はなく、「性奴隷」との表現は「事実に反する」と指摘した。

慰安婦の数は、国内外の複数の歴史研究者が兵士の数などを基に推計しているが、20万人は過大だとの見方が有力である。

悔やまれるのは、クマラスワミ報告が出た時点で、外務省が有効な反論をしなかったことだ。

慰安婦募集が「総じて本人たちの意思に反して行われ」「官憲等が直接これに加担したこともあった」とした93年の河野官房長官談話の一部が報告に引用され、それに縛られたのだろう。河野談話の見直しは今後の重い課題だ。

韓国政府は、「慰安婦動員の強制性は歴史的事実」と主張した。一方で、国連などで相互批判を自制するとの昨年の日韓合意を踏まえ、強い非難はしなかった。

日本が今回、事実関係の説明に徹したのも同じ趣旨だろう。長く停滞していた日韓関係は今、改善傾向にある。不毛な批判合戦に逆戻りする愚は避けるべきだ。

産経新聞 2016年02月18日

慰安婦問題 世界に向け事実の発信を

国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会で日本政府は慰安婦の「強制連行」に根拠がないことを説明した。

国連の場で明確に述べた意義は大きい。事実による対外発信を躊躇(ちゅうちょ)なく続けたい。

政府代表として出席した杉山晋輔外務審議官は日本政府の調査で軍や官憲による強制連行を示す証拠はなかったと明言した。外務省がようやく重い腰をあげた形だが、この間、日本の主張は理解されてこなかった。

誤解が流布された原因を含め、事実をはっきり述べたことは重要だ。強制連行説は「慰安婦狩り」に関わったとする吉田清治氏の「捏造(ねつぞう)」に基づいて朝日新聞が事実であるかのように報じ、「国際社会にも大きな影響を与えた」と指摘した。

また、「20万人強制連行」などとする数字の裏付けもなく、朝日が女子挺身(ていしん)隊と「混同した」とした。同紙が吉田証言などの誤りを認め、関連記事を取り消したのは一昨年8月だが、こうした明らかな事実誤認がなお国際社会で独り歩きしている。

官民をあげて、事実を適切に伝える取り組みが重要なことを、改めて認識すべきだ。

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