石炭火力発電所の新設計画に待ったをかけてきた環境省が、条件付き容認に転じた。
二酸化炭素を大量に出す石炭火力は地球温暖化対策に逆行すると主張してきたが、電力自由化で「安価な電源」を増やしたい電力業界とその意向を反映した経済産業省に押し切られた。
石炭火力としては二酸化炭素の排出が比較的少ない最新式を新設の最低基準にする、新しい業界団体で各社の排出削減を管理するなどの条件はつけた。
だが、削減への具体的な道筋や目標達成が怪しくなったときの歯止めは示されていない。業界の自主努力に大きく依存する手法で、温室効果ガスの削減は十分に進むのだろうか。
昨年末、パリで開かれた国連気候変動会議(COP21)で、各国はこぞって温暖化対策に積極的に取り組もうという歴史的な「パリ協定」を採択した。
あれから2カ月経ったというのに、日本政府は見るべき対策を打ち出していない。日本は最終日、より野心的な取り組みを主張する国々の「野心連合」に駆け込みで加わった。その場限りのポーズにしてはいけない。
石炭火力の新設がすべて駄目だというつもりはない。旧式を最新式に置き換えれば、発電量あたりの二酸化炭素排出は減るからだ。とはいえ最新式でも、天然ガス火力の2倍近い。
日本は2030年度の温室効果ガスの13年度比26%減を掲げるが、各国の今の目標は不十分というのがパリ協定の認識だ。
米国が排出規制で石炭火力を狙い撃ちしたり、英国が既存施設の25年全廃を決めたり、多くの先進国が「脱石炭」にかじをきろうとしているのは、将来の削減強化をにらんでのことだ。
もちろん国によって事情は違う。日本は脱原発も進める必要がある。だからといって石炭火力への依存を高めれば、将来困るのが目に見えているのだ。
30年目標を超え、すでに閣議決定した「50年に80%削減」の長期目標も見据えて社会をつくり変えていく必要がある。
問題は石炭火力が安価なまま放置されていることだ。強い規制をしないのならば、各種の温暖化対策にかかるコストを上乗せし魅力を減らすべきなのだ。
民間が自主的、独自に工夫できることも少なくないだろう。
しかし、低炭素社会の土台や主柱を整えるのは、やはり政府の責務である。政府は温暖化対策への本気さを示すメッセージ性の強い、骨太の政策を導入するべきだ。脱原発も含めて、国民が望むエネルギー社会に導くことが政府の役割である。
この記事へのコメントはありません。