GDPマイナス 足踏み脱却へ消費拡大がカギ

朝日新聞 2016年02月16日

景気に陰り 基本に沿った政策を

昨年10~12月期の実質経済成長率は1・4%のマイナス(前期比年率換算)だった。

国内総生産(GDP)の6割近くを占める個人消費が前期比0・8%減と落ち込んだ。暖冬で冬物衣料などの売れ行きが悪かったというが、所得の伸び悩みも背景にあろう。「外需」はGDPを押し上げたが、輸出入とも減ったなかで輸入の減少がより大きかったためだ。

そこに、最近の為替相場や株式市場の激動である。乱高下しつつも円高と株安の基調が続いており、国内経済への悪影響を心配する声が高まってきた。

今後の状況を注視すべき局面だ。ただ、金融の目詰まりから消費や投資が一気に落ち込んだ08年のリーマン・ショック時とは様相が異なる。日本企業の収益は過去最高水準で、雇用は人手不足もあって堅調だ。

ここは浮足立たず、基本に沿って政策を展開するべきだ。

まずは金融・資本市場の動揺を抑える国際協調である。

中国で高成長の維持が難しくなり、産油国は原油相場の下落に直撃されている。金融緩和を競ってきた日米欧の中で米国が利上げに転じたこともきっかけに、あふれるマネーはリスク回避の思惑から安全資産とされる「円」へ、株式よりも国債へと流れ込む局面が目立つ。

今月下旬には中国・上海で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がある。どんな手を打てるか、幅広く議論してほしい。

日本では、アベノミクスの旧「3本の矢」のうち財政運営が注目され始めた。金融緩和に限界と弊害が指摘され、成長戦略は効果が出るまでに時間がかかるからだ。具体的には、17年4月の10%への消費増税の延期や、国会で審議中の来年度予算案の成立後をにらんだ財政出動を求める声が出ている。

が、ここでも基本に立ち返ることが必要だ。消費増税は膨らみ続ける社会保障費をまかなうためであり、予算に関してはまずは成立済みの今年度補正予算の執行を急ぐことだろう。

民間にも注文がある。

これから労使による春闘が本格化し、企業は投資など来年度の計画を詰める時期を迎える。

企業はおカネをため込んでいる。それを賃上げに回せば自社の人材力の強化につながり、業績を左右する国内市場の支えにもなろう。設備や研究開発への投資は競争力を高め、新たな収益源を生むために不可欠だ。

足元の混乱に右往左往せず、将来に向けて戦略を練る。これが企業経営の基本のはずだ。

読売新聞 2016年02月16日

GDPマイナス 足踏み脱却へ消費拡大がカギ

景気回復は足踏み状態にあることが改めて確認された。天候要因などで簡単に成長率が水面下に沈むのは、日本経済の足腰が弱い証拠だ。

デフレ脱却を確かなものにするには、成長戦略を着実に推進しなければならない。

内閣府発表の2015年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・4%減、年率では1・4%減だった。マイナス成長は2四半期ぶりだ。

主因は個人消費の低迷である。暖冬による冬物衣料などの売り上げの不振が響いた。輸出も新興国経済の低迷で0・9%減った。

設備投資は、1・4%増と2期連続でプラスだった。企業の好業績や、共通番号(マイナンバー)制度に対応するシステム改修の需要などを反映し、ようやく回復の兆しが出てきたのは好材料だ。

安倍首相は衆院予算委員会で、「企業収益は過去最高で、就業者数は増加するなど、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は確かだ」と述べ、成長率の落ち込みは一時的との考えを示した。

首相の景気認識は妥当だが、雇用者報酬が増える中での消費減少は、貯蓄を優先する家計の節約志向の根強さを示している。

家計のデフレマインドを払拭するには、今春闘での賃上げがカギを握る。石原経済再生相は「力強い賃金上昇の実現へ、様々な政策に取り組みたい」と語った。

基本給のベースアップを中心に賃上げの裾野を広げ、経済の好循環を再加速することが重要だ。

気がかりなのは、急激な円高・株安など市場の混乱の影響だ。

企業が想定する当面の円相場は1ドル=118円前後が多い。円高が進めば、輸出関連企業などの業績を一段と下押ししよう。

業績の伸びの鈍化は、賃上げ機運に水を差すうえ、設備投資の先送りにつながりかねない。

今月下旬には、中国・上海で主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。政府・日銀は、国際金融市場の安定に向けて、政策面での緊密な協調体制を確立せねばならない。

中国など新興国経済の混乱要因である先進国への資金の逆流について、具体的な防止・緩和策を示すことが求められよう。

政府は今春、成長と分配の好循環を目指す「ニッポン1億総活躍プラン」を策定する。

経済界とも連携し、医療、農業など新分野への投資や人材育成を後押しする規制緩和策に知恵を絞ることが大切である。

産経新聞 2016年02月16日

GDPマイナス 「脱却」へ賃上げ欠かせぬ

企業収益や雇用の改善が経済の好循環につながらず、景気の停滞感を払拭できていないことを示す厳しい数字である。

昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が年率1・4%減となり、2四半期ぶりのマイナス成長に陥った。消費や輸出の低迷が原因だ。

さらに年明け以降の世界的な市場の混乱がある。これで企業や家計の心理が一段と冷え込めば、「失われた20年」から抜け出す好機も逸しかねない。

政府は厳しく認識すべきだ。民間も踏ん張りどころである。円急騰などに目を配りつつも、行き過ぎた不安の連鎖に陥らぬよう心したい。前向きな経営を保てるかどうかが問われよう。

課題はGDPの6割を占める個人消費である。物価の伸びに賃金が追いつかず実質賃金は4年連続のマイナスとなった。節約志向が根強く、ガソリン安でも消費はなかなか盛り上がらない。

これを脱するためにも春闘での継続的な賃上げが欠かせない。企業決算は利益の伸びが総じて鈍化傾向だ。中国や欧米の景気が波及する事態への警戒は当然だが、慎重に見過ぎるばかりではデフレ期の縮み思考と変わらない。それを避ける労使交渉に期待したい。

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