景気回復は足踏み状態にあることが改めて確認された。天候要因などで簡単に成長率が水面下に沈むのは、日本経済の足腰が弱い証拠だ。
デフレ脱却を確かなものにするには、成長戦略を着実に推進しなければならない。
内閣府発表の2015年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・4%減、年率では1・4%減だった。マイナス成長は2四半期ぶりだ。
主因は個人消費の低迷である。暖冬による冬物衣料などの売り上げの不振が響いた。輸出も新興国経済の低迷で0・9%減った。
設備投資は、1・4%増と2期連続でプラスだった。企業の好業績や、共通番号(マイナンバー)制度に対応するシステム改修の需要などを反映し、ようやく回復の兆しが出てきたのは好材料だ。
安倍首相は衆院予算委員会で、「企業収益は過去最高で、就業者数は増加するなど、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は確かだ」と述べ、成長率の落ち込みは一時的との考えを示した。
首相の景気認識は妥当だが、雇用者報酬が増える中での消費減少は、貯蓄を優先する家計の節約志向の根強さを示している。
家計のデフレマインドを払拭するには、今春闘での賃上げがカギを握る。石原経済再生相は「力強い賃金上昇の実現へ、様々な政策に取り組みたい」と語った。
基本給のベースアップを中心に賃上げの裾野を広げ、経済の好循環を再加速することが重要だ。
気がかりなのは、急激な円高・株安など市場の混乱の影響だ。
企業が想定する当面の円相場は1ドル=118円前後が多い。円高が進めば、輸出関連企業などの業績を一段と下押ししよう。
業績の伸びの鈍化は、賃上げ機運に水を差すうえ、設備投資の先送りにつながりかねない。
今月下旬には、中国・上海で主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。政府・日銀は、国際金融市場の安定に向けて、政策面での緊密な協調体制を確立せねばならない。
中国など新興国経済の混乱要因である先進国への資金の逆流について、具体的な防止・緩和策を示すことが求められよう。
政府は今春、成長と分配の好循環を目指す「ニッポン1億総活躍プラン」を策定する。
経済界とも連携し、医療、農業など新分野への投資や人材育成を後押しする規制緩和策に知恵を絞ることが大切である。
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