北朝鮮の卑劣な揺さぶりである。政府は、動じることなく、日本人拉致問題の解決に粘り強く取り組まねばならない。
北朝鮮が、2014年7月に開始した拉致被害者らの再調査を全面的に中止すると発表した。「特別調査委員会」は解体するという。
安倍政権が北朝鮮に対する独自制裁を強化したことへの対抗措置としている。北朝鮮は「日本の挑発的な敵対行為に対する強力な対応措置が続く」と恫喝した。
北朝鮮は、日本の制裁強化で、14年5月の再調査に関する日朝のストックホルム合意が「破棄」されたとも主張する。日本は「破棄する考えはない」との立場だ。
合意では、未帰国の拉致被害者12人や、拉致の可能性のある特定失踪者らの再調査と引き換えに、日本が制裁の一部を解除した。
制裁の強化は、北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射を強行し、地域の安全を脅かしたためである。北朝鮮の批判は筋違いだ。
そもそも、北朝鮮は1年半以上も、被害者の安否情報などの報告を先送りしてきた。「4分科会を設置した」などと説明していたが、真剣に拉致問題の再調査を行ったかどうかすら疑わしい。
再調査に期待を寄せた被害者家族の感情を踏みにじる行為だ。
自らの非道を棚に上げて、日本に責任を押しつける北朝鮮の主張は、到底容認できない。
政府は、外交ルートを通じて北朝鮮に抗議した。加藤拉致問題相は「対話と圧力、行動対行動の原則の下、北朝鮮から具体的な行動を引き出すよう、最大限努力したい」と強調した。再調査の継続を強く要求していくのは当然だ。
様々な情報をちらつかせ、より少ない譲歩で、より多くの見返りを得ようとするのは北朝鮮の常套手段である。相手の交渉ペースにはまってはなるまい。
北朝鮮の再調査の中止表明は、日本固有の問題を取り上げ、米韓両国との足並みの乱れを生じさせる狙いもあるとみられる。
拉致と核・ミサイル問題の包括的な解決が日本の基本方針だ。今は、国際社会と連携し、北朝鮮の危険な挑発に歯止めをかけるために、圧力を強める時である。
韓国は、独自の制裁として、南北協力事業「開城工業団地」の操業中断に踏み切った。米国も北朝鮮への経済制裁を強化する。
日米韓3か国の緊密な協調が引き続き大切である。国連安全保障理事会での厳格な追加制裁決議の早期採択に力を入れたい。
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