拉致再調査中止 「北」の揺さぶりに冷静対処を

朝日新聞 2016年02月14日

日本人拉致 調査の約束を果たせ

北朝鮮は、日本人拉致問題を含む包括的な調査を全面的に中止し、そのための特別調査委員会を解体すると表明した。

深刻な人権問題である拉致問題を政治の駆け引きに使うような北朝鮮の態度に、強い憤りを感じる。

今回は、核と事実上のミサイル発射の実験に対し日本政府がとった制裁への対抗措置だとしている。しかし、国際社会から非難され、日米韓の独自制裁を科されるような暴挙を働いたのは北朝鮮自身である。

北朝鮮による拉致は、人道に反する犯罪だ。約束通り、北朝鮮は拉致被害者らについての調査を続け、明らかになった真実を包み隠さず速やかに報告するよう求める。

北朝鮮は2年前、スウェーデンのストックホルムで、拉致被害者や遺骨問題などの調査を包括的に進め、最終的に日本人に関するすべての問題を解決する意思を表明した。

その後、特別な権限をもつとされる特別調査委が設けられたことに伴い、日本はそれまでの独自制裁の一部を緩めた。

北朝鮮側は調査期間について当初は「1年程度を目標」と説明したが、昨年夏には報告の延期を伝えてくるなど、まじめに調べているとは思えないような返答を繰り返してきた。

ストックホルムでの合意後も日本外務省は中国の大連や上海などで、頻繁に北朝鮮側と非公式に接触を続けた。

だが、日本政府が認定した12人の被害者については今も「8人は死亡。4人は入国していない」との従来通りの主張を変えていない。その不誠実な態度に問題があることは明らかだ。

一方で、日本政府の対応にも理解に苦しむ点がある。

北朝鮮側は昨年来、訪朝した関係者らに対し、拉致問題の再調査を終え、報告書は完成したが、日本政府が受け取りを拒んでいると主張している。

安倍首相は、再調査について「重い扉をこじ開けた」と成果を強調してきた。北朝鮮が調査の打ち切りを明言した今、これまでの協議で分かったことを、被害者の帰りを待ち望む家族らに説明する必要があろう。

日本政府は、将来的な国交正常化と経済支援など、独自に持つカードをうまく使いながら、二国間協議の再開を今後も粘り強く探るべきだ。

同時に国際社会との連携も欠かせない。北朝鮮は最近、国連で人権問題が取り上げられることに敏感になっている。指導層に責任が及ぶのを警戒してのことで、有効な圧力となりうる。

読売新聞 2016年02月14日

拉致再調査中止 「北」の揺さぶりに冷静対処を

北朝鮮の卑劣な揺さぶりである。政府は、動じることなく、日本人拉致問題の解決に粘り強く取り組まねばならない。

北朝鮮が、2014年7月に開始した拉致被害者らの再調査を全面的に中止すると発表した。「特別調査委員会」は解体するという。

安倍政権が北朝鮮に対する独自制裁を強化したことへの対抗措置としている。北朝鮮は「日本の挑発的な敵対行為に対する強力な対応措置が続く」と恫喝どうかつした。

北朝鮮は、日本の制裁強化で、14年5月の再調査に関する日朝のストックホルム合意が「破棄」されたとも主張する。日本は「破棄する考えはない」との立場だ。

合意では、未帰国の拉致被害者12人や、拉致の可能性のある特定失踪者らの再調査と引き換えに、日本が制裁の一部を解除した。

制裁の強化は、北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射を強行し、地域の安全を脅かしたためである。北朝鮮の批判は筋違いだ。

そもそも、北朝鮮は1年半以上も、被害者の安否情報などの報告を先送りしてきた。「4分科会を設置した」などと説明していたが、真剣に拉致問題の再調査を行ったかどうかすら疑わしい。

再調査に期待を寄せた被害者家族の感情を踏みにじる行為だ。

自らの非道を棚に上げて、日本に責任を押しつける北朝鮮の主張は、到底容認できない。

政府は、外交ルートを通じて北朝鮮に抗議した。加藤拉致問題相は「対話と圧力、行動対行動の原則の下、北朝鮮から具体的な行動を引き出すよう、最大限努力したい」と強調した。再調査の継続を強く要求していくのは当然だ。

様々な情報をちらつかせ、より少ない譲歩で、より多くの見返りを得ようとするのは北朝鮮の常套じょうとう手段である。相手の交渉ペースにはまってはなるまい。

北朝鮮の再調査の中止表明は、日本固有の問題を取り上げ、米韓両国との足並みの乱れを生じさせる狙いもあるとみられる。

拉致と核・ミサイル問題の包括的な解決が日本の基本方針だ。今は、国際社会と連携し、北朝鮮の危険な挑発に歯止めをかけるために、圧力を強める時である。

韓国は、独自の制裁として、南北協力事業「開城工業団地」の操業中断に踏み切った。米国も北朝鮮への経済制裁を強化する。

日米韓3か国の緊密な協調が引き続き大切である。国連安全保障理事会での厳格な追加制裁決議の早期採択に力を入れたい。

産経新聞 2016年02月14日

拉致再調査中止 圧力と連携さらに強化を

北朝鮮は、拉致被害者を含む日本人に関する包括的調査を中止し、拉致問題の再調査を行う「特別調査委員会」を解体すると表明した。

核実験と長距離弾道ミサイルの発射を強行した北朝鮮に対し、日本が独自制裁を強化したことへの対抗措置だという。だが勘違いも甚だしい。

拉致問題は北朝鮮という国家が主導した残酷な誘拐事件である。この解決なしに、国としての未来は描けない。制裁による圧力の強化と国際連携で、そう分からせるしかない。

北朝鮮は2014年5月のストックホルム合意に基づき、同年7月に拉致被害者や日本人配偶者、遺骨などを調査する「特別調査委員会」を設置した。これを受け、日本側は一部の独自制裁を解除した。だが「1年をめど」とされた調査期間を過ぎても北朝鮮は結果報告を一方的に先延ばしし、何の進展もないまま、核実験とミサイル発射を強行した。

解除した制裁の復活や新たな独自制裁を科すことは当然の措置である。政府内や野党、メディアの一部には制裁強化が対話の窓口を閉ざし、拉致問題の解決を遅らせるとの懸念の声があった。

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