あまりにも動きが急だ。日銀の追加金融緩和をきっかけとする金利低下である。長期金利の指標である10年国債の利回りは、10日も一時マイナスをつけた。
世界市場の混乱に伴い安全資産の国債購入が一段と増えたことが、下げに拍車をかけた。
追加緩和で期待された円安効果はみられず、むしろ円高傾向が顕著である。東京株式市場でも連日の大幅下落だ。大荒れの市場に、日銀の政策効果が打ち消された印象すら漂う。
これが企業や消費者の不安心理を蔓延(まんえん)させ、経済活動を萎縮させる事態は避けたい。
脱デフレに対する人々の期待を高めるのが日銀の狙いだ。ならばこれを確実に果たせるよう、市場動向に目を光らせつつ、政策意図を丁寧に説明すべきである。
日銀が1月末に決定したマイナス金利政策は、民間銀行が日銀に預ける資金の一部に事実上の手数料を課すものだ。
これにより金利水準を全般的に下押しする。長期金利のマイナス自体は、ここで想定された当然の帰結といえる。
もちろん、日銀は政策効果ばかりではなく、金融システムに揺らぎが生じないよう副作用を監視し、理解を促すべきだ。
マイナス金利政策は銀行収益を圧迫するなど負の側面も懸念される劇薬である。すでに預金金利が軒並み低下するなどの影響も広がっている。こうした不安の払拭を急がなくてはならない。
急速な円高にも十分な警戒が必要である。円安で息を吹き返した輸出企業の経営環境が悪化すれば、景気には大きな打撃となりかねないからだ。
陥ってはならないのは、いたずらに市場に翻弄されることだ。
年明け以降の金融市場の混乱は、中国経済の低迷や米利上げ、原油安などの海外要因によるものだ。それらが、市場の思惑先行で、日替わりメニューのように取引材料となっている。
この流れを日銀の金融政策だけで反転させるのは無理があろう。日銀頼みには限界がある。
それより大切なのは日米欧や中国などの連携である。2月下旬には20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がある。市場の混乱に歯止めをかけるため、ここで政策協調の姿勢を強く打ち出せるかが問われている。
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