捜査機関として、あるまじき怠慢である。
大阪府警全65警察署のうち61署で、捜査書類や証拠品などが長年にわたり放置され、約4300の事件が時効になっていたことが明らかになった。
重要書類が段ボール箱に入れられ、本来の保管場所でない機械室や車庫、使っていないロッカーなどに無造作に置かれていた。
ずさんな管理に呆れるばかりだ。府警は再発防止を徹底し、信頼回復を図らねばならない。
発覚のきっかけは、2012年に羽曳野署の機械室から、15年前の傷害事件の逮捕状請求書などが見つかったことだ。この事件も既に時効になっていた。被害者から捜査の進捗状況を聞かれても、はぐらかしていたという。
その後、全署を対象にした調査で、捜査の放置が蔓延していた実態が浮かび上がった。段ボール箱を「パンドラの箱」と呼んで、あえて手を付けない署員もいた。
傷害や暴行など約1000事件では、容疑者を特定していながら、途中で捜査を放置し、時効となっていた。みすみす容疑者を取り逃がしたわけだ。犯人の検挙という捜査機関の本分を蔑ろにしていると言わざるを得ない。
人事異動に伴う引き継ぎが不十分だったことが、主な原因とみられる。人員不足により、捜査員が事件を処理しきれない、といった指摘もある。
府警幹部は「発生している事件の捜査を優先するあまり、その他の捜査書類や証拠品の管理が疎かになった」と釈明している。
だが、捜査を放置された被害者は到底、納得できまい。
府警は、時効になった事件の捜査資料を検察に送致し、被害者に証拠品を返還する作業を始めた。被害者に対する丁寧な説明と謝罪が欠かせない。
府警では、過去にも証拠品紛失などがあったため、捜査書類をオンラインで一括管理する「捜査支援システム」を14年に導入し、全署に証拠品係を配置した。
これらが有効に機能すれば、業務の効率性は向上しよう。捜査員の負担を軽減しつつ、適正な手続きを徹底させねばならない。
警視庁でも14年、時効となった約3500事件の捜査書類や証拠品など、約1万点が検察送致されないまま、各署の倉庫などに放置されていたことが発覚した。
事件が放置されていては、犯人が再犯に及ぶなど、地域の治安に悪影響が生じかねない。他の道府県警でも実態調査が必要だ。
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