政治とカネ 疑惑の根を断つ責任は

朝日新聞 2016年02月05日

政治とカネ 疑惑の根を断つ責任は

甘利明氏が金銭授受疑惑で経済再生相を辞任後も、新たな疑惑が浮かんでいる。

問題となった建設会社の総務担当者は、外国人への労働ビザ発給の口利き依頼で40万円、道路工事の補償交渉をめぐる国土交通省局長あての商品券代で30万円を、甘利氏の元秘書に渡したと朝日新聞に証言した。

ほかに衆院選の応援資金などもあるといい、事実なら甘利氏が認めた600万円以外に、900万円を超えるカネが甘利氏側に渡っていたことになる。

甘利氏は先週の記者会見で、受けとった現金をスーツの内ポケットにしまったとの証言を強く否定した。だが、問題の本質はそこにあるわけではない。

政治家にカネを渡して頼んでもらえば、役所が大小さまざまに手心を加えてくれる――。そんな「口利き文化」が、今もまかり通っているのかという不信感を国民に抱かせたことだ。

東京地検は関係者の事情聴取を始めた。だが、捜査当局による解明とは別に、甘利氏は「引き続き調査し公表する」という約束を速やかに果たすべきだ。

安倍首相の責任も重い。国会で「任命責任は私にある。閣僚が交代する事態を招いたことは大変申し訳なく感じている」と繰り返している。

ただ、陳謝の後は「甘利氏が説明責任を果たしてくれる」というだけなら、任命責任を果たしたことにはならない。

都市再生機構(UR)は、甘利氏の元秘書との12回に及ぶ面談内容の一部を公表した。元秘書が甘利氏に案件を報告していた事実をURが把握していたことも分かった。理事長は国会で、建設会社との補償問題について、元秘書から「補償額の増額を求める言動はなかったと考えている」と述べたが、釈然としない部分が残る。

真相究明のため、野党は衆院予算委員会への甘利氏の参考人招致を求めているが、自民党は応じようとしない。

首相は自らに任命責任があるというなら、参考人招致を受け入れるよう指示すべきだし、URなど関係機関にはさらなる情報公開を促すべきだ。

疑惑を機に、民主党執行部は企業・団体献金を禁止する法案を提出する方針だ。自民党は否定的だが、そもそも政党交付金が導入されたのは、政官業の癒着の温床となってきた企業・団体献金をなくすためだった。

「政治とカネ」の問題の根っこには、賄賂性をぬぐえない企業・団体献金の性格がある。疑惑の根を断つ政治の責任を、今こそ果たすべき時である。

産経新聞 2016年02月07日

「口利き」政治 疑念解消は国会の責務だ

見えないところで政治がカネに左右されている。そのような疑惑を抱かれて放置したままでは、民主主義への信頼は大きく損なわれる。

国会は、ごく当たり前の意識を持って問題にあたるべきだ。

辞任した甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑をめぐっては、都市再生機構(UR)から建設会社に約2億2千万円という巨額の補償金が支払われていた。

甘利氏は「口利き」を否定しているが、全体像は判然としない。甘利氏が受領を認めたもの以外に、現金の授受はなかったか。他の政治家らの関与はないか。

東京地検特捜部が任意の事情聴取に乗り出しているが、政治への信頼回復には国会が自ら疑惑を解明し、自浄能力を発揮することが欠かせない。

無論、衆参の予算委員会が疑惑追及一色となり、外交・安全保障や経済などの国政課題の議論がないがしろにされるような展開は不要である。

疑惑解明の場には、衆院政治倫理・公選法改正特別委員会などもある。甘利氏は、弁護士らを入れた第三者による調査結果を公表するとしている。ならば、自ら進んで国会の政治倫理審査会に出席し、説明するのをためらう必要はなかろう。

自民党が甘利氏の国会への参考人招致を拒もうとしているのは、疑惑解明に後ろ向きな印象を与えるものでしかない。

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