甘利明氏が金銭授受疑惑で経済再生相を辞任後も、新たな疑惑が浮かんでいる。
問題となった建設会社の総務担当者は、外国人への労働ビザ発給の口利き依頼で40万円、道路工事の補償交渉をめぐる国土交通省局長あての商品券代で30万円を、甘利氏の元秘書に渡したと朝日新聞に証言した。
ほかに衆院選の応援資金などもあるといい、事実なら甘利氏が認めた600万円以外に、900万円を超えるカネが甘利氏側に渡っていたことになる。
甘利氏は先週の記者会見で、受けとった現金をスーツの内ポケットにしまったとの証言を強く否定した。だが、問題の本質はそこにあるわけではない。
政治家にカネを渡して頼んでもらえば、役所が大小さまざまに手心を加えてくれる――。そんな「口利き文化」が、今もまかり通っているのかという不信感を国民に抱かせたことだ。
東京地検は関係者の事情聴取を始めた。だが、捜査当局による解明とは別に、甘利氏は「引き続き調査し公表する」という約束を速やかに果たすべきだ。
安倍首相の責任も重い。国会で「任命責任は私にある。閣僚が交代する事態を招いたことは大変申し訳なく感じている」と繰り返している。
ただ、陳謝の後は「甘利氏が説明責任を果たしてくれる」というだけなら、任命責任を果たしたことにはならない。
都市再生機構(UR)は、甘利氏の元秘書との12回に及ぶ面談内容の一部を公表した。元秘書が甘利氏に案件を報告していた事実をURが把握していたことも分かった。理事長は国会で、建設会社との補償問題について、元秘書から「補償額の増額を求める言動はなかったと考えている」と述べたが、釈然としない部分が残る。
真相究明のため、野党は衆院予算委員会への甘利氏の参考人招致を求めているが、自民党は応じようとしない。
首相は自らに任命責任があるというなら、参考人招致を受け入れるよう指示すべきだし、URなど関係機関にはさらなる情報公開を促すべきだ。
疑惑を機に、民主党執行部は企業・団体献金を禁止する法案を提出する方針だ。自民党は否定的だが、そもそも政党交付金が導入されたのは、政官業の癒着の温床となってきた企業・団体献金をなくすためだった。
「政治とカネ」の問題の根っこには、賄賂性をぬぐえない企業・団体献金の性格がある。疑惑の根を断つ政治の責任を、今こそ果たすべき時である。
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