地域主権改革 国・地方協議の場に魂を

朝日新聞 2010年03月06日

地域主権改革 大風呂敷を歓迎する

鳩山政権の「地域主権改革」の第一歩となる法案が閣議決定された。

中央政府と、地方政府である自治体の政府間協議と位置づける「国と地方の協議の場」。その議論も踏まえ、方針を決定する「地域主権戦略会議」。両輪となる組織の法制化が柱だ。

それらを舞台に進める「地域主権」の姿も、次第に像を結んできた。

「民主主義そのものの改革」。原口一博総務相は高々と理念を掲げる。

これまでの分権論と何が違うのか。

国が自治体の仕事の仕方を縛る「義務づけ」を見直す。国の権限も移譲する。国の出先機関は原則廃止。そうした内容自体はおおむね、従来と同じ方を向いている。

異なるのは、根っこに置く発想だ。国から自治体に向けて「分権」するのではない。住民が地域で「主権」を行使するのだ、という考え方である。

そのカギとなるのが、住民参加だ。地方選挙に会社勤めの人も立候補しやすくし、議会が民意をより反映するよう改革する。地域住民が予算の使い道を決める。そうした仕組みを検討し、「地方政府基本法」を2013年度までに制定するという。

自治体が多様な姿の議会を選べるよう、議員定数の上限撤廃などを盛った地方自治法改正案も今回決めた。

従来の地方分権は、政府と自治体という「役所」間の縄張り争いと見られがちだった。それを、「住民」を主語に切り替える発想は評価できる。いささか大風呂敷を広げた感もあるが、前向きの姿勢は歓迎すべきものだ。

住民参加が進めば、住民意識も変わっていくだろう。たとえば「大切な保育所整備に関する権限を自治体に任せて大丈夫か」という不安から、「大切な保育所だから自分たちで決めたい」という意欲へ、といった具合である。

原口氏は併せて「地域経済と暮らしの改革」も掲げる。たとえば、域外に依存してきた電力を太陽光発電で地元でまかなう。地域の自給力を増す。「緑の分権改革」である。

地域から力を引き出さない限り、立ちゆかない時代である。国が集めた税金を過疎地などに再分配し、格差解消を図ろうにも、その財源を確保できない。中央集権型の「分配と依存の政治」はもう無理なのだ。

むろん、立ちはだかる壁は厚い。

改革の理念は政権や与党内でも共有されていると言い難い。公共事業の個所付け問題や長崎県知事選の応援で垣間見えたのは、国家予算の配分をてこに票を得ようとする利益誘導体質だ。地域主権とは正反対ではないか。

官僚と手を組み分権に抵抗した族議員は消えたが、閣僚が省益を代弁する「族大臣」化現象もささやかれる。

理念は良い。問題はまず、その方向に足元の意識を固め直すことである。

毎日新聞 2010年03月05日

地域主権改革 国・地方協議の場に魂を

政権の「看板」に足る中身だろうか。国と地方の協議の場の法制化など、政府の地域主権改革に向けた関連法案がまとまった。

住民自治や地方の自立の徹底に向け「地域主権」を掲げる鳩山内閣にとって、法案は国民への最初の答えと言える。国、地方による協議の場がうまく稼働すれば政治のあり方を大きく変える装置となるが、運用を誤ればお飾り機関に堕すおそれもある。国会審議で問題点を点検すべきである。

国と地方の関係は、00年の地方分権一括法の施行で「対等」に踏み出した。だが、国と自治体の利害対立が予想されるような政策を決める際に両者が協議する正式な場はなく、法制化は地方の悲願だった。

協議の場は国側は官房長官、財務相、総務相ら、地方は全国知事会など6団体代表らがメンバーとなる。テーマには国、地方の役割分担や地方行財政に関する事項を幅広く取り上げ、首相も出席できる。協議による合意について、メンバーには尊重義務が課せられる。

法案が地方側にも会議の開催要求を認め、企画・立案段階から地方自治に関する政策を協議する場と位置づけたことは評価できる。だが、活動を補佐する体制を整えないと結局は国が施策を通告し、地方は陳情を行うような形式的運営に陥りかねない。内閣の機関ではないとの位置づけから事務局は設置しないとみられるが自治体職員の活用も含め、制度設計に万全を期すことが肝心だ。

また、地方6団体の代表の意見が地方の総意と言いきれない点も留意すべきだ。法案は他の首長らの臨時参加を認めている。多様な意見を反映できるよう、地方側も運営のあり方を議論してほしい。

一方、関連法案のもうひとつの柱である「義務付け」の見直しには不満が残る。中央省庁が自治体に施設の設置基準などを押しつける「義務付け」に大なたを振るえばまさに地域主権を印象づけただろうが各省の抵抗に遭い、地方側の要望は十分に反映されずに終わった。今後進める第2次見直しでは今回、踏み込み不足だった事項の再検討もためらってはならない。

政府は昨年末、鳩山由紀夫首相を議長とする「地域主権戦略会議」を発足したが、これまで開かれた公式会合は2回で、活動は活発と言えない。しかも、新設される協議の場との連携や役割分担もはっきりしておらず、このままでは混乱を来しかねない。

今後内閣が取り組む補助金の一括交付金化や国の出先機関の統廃合などのテーマで両者が車の両輪として機能するよう、首相は指導力を発揮しなければならない。

読売新聞 2010年03月05日

国・地方協議 単なる陳情の場では困る

新たな協議機関を、単なる陳情の場にしてはなるまい。前向きな議論を重ね、成果を生むためには、国と地方の双方の努力が欠かせない。

全国知事会など地方6団体が長年求めていた協議機関「国と地方の協議の場」を法制化する法案がまとまった。政府が5日、閣議決定し、国会に提出する。

協議のメンバーは、国が官房長官、総務相、財務相ら、地方が6団体の代表各1人だ。地方側は、首相もメンバーとするよう求めていたが、法案では、首相はメンバーとせず、協議の招集者として自由に出席することで折り合った。

国には、首相の参加機会を減らすことで首相を守ろうとする旧来型の意識があるのではないか。首相が全協議に出席する必要はないとしても、もっと積極的に関与し、指導力を発揮してほしい。

協議で重要なのは、実質的な議論を行う分科会だ。どんな分科会を設け、どう機能させるのか。

鳩山政権は、保育所の設置基準の緩和など義務付け・枠付けの一部見直しには着手したが、国の出先機関の統廃合、国から地方への権限移譲など、より重要な課題は参院選後に先送りするという。

だが、政府の地方分権改革推進委員会が既に、具体的な提言を示しており、それを基に、早期に議論を始めればいいはずだ。

新たな協議を生産的な場にするには、「地方が要望を出し、国が小出しに譲歩して、妥協点を探る」という労使交渉のような従来のパターンを脱する必要がある。

国と地方は既に、「上下・主従」でなく、「対等・協力」の関係と位置づけられている。

政府は、様々な課題に取り組む地方分権の工程表をまず明示すべきだ。官僚らの抵抗を排するため、政治主導による強力な実施体制も整える必要がある。

地方も、地方交付税や補助金の増額を要求し、団体交渉するという発想では済まされない。国がどんな権限をどういう形で移譲すれば良いのか。自ら知恵を絞って提案するとともに、新たな役割を担う覚悟を示してもらいたい。

気になるのは、鳩山政権が「地方分権」の代わりに掲げる「地域主権」という概念だ。

憲法上の主権は国民にあり、国際法上は国家にある。「地域主権」では、連邦国家に移行するかのような誤解を招きかねない。

政府が今回、「地域主権」の定義づけを見送ったのも、その誤解を避けるためとされる。大切なのは看板でなく、改革の中身だ。

産経新聞 2010年03月06日

地方分権 単なるバラマキでは困る

地方分権などについて国と地方が話し合うために、「国と地方の協議の場」を法制化する法案を政府が閣議決定した。関係閣僚と地方6団体代表者をメンバーとする。

国による全国画一的な規制では、効率的で地域のニーズに合った住民サービスは難しい。地方分権の問題では、既得権を手放したくない中央省庁と、財源移譲だけ求めて責任は回避したい地方のエゴがぶつかり合い、うまく進んでこなかった経緯もある。地方分権推進への一歩として、国と地方が意見を交わす正式な機関を設ける意義は大きい。

だが、協議の場を作っただけでは前進とはいえない。肝心なことは、そこでどんな議論を行い、いかなる成果をめざすかだ。そもそも鳩山由紀夫政権が掲げる地方分権政策には問題点も多い。

国が使い道を決める「ひもつき補助金」を廃止し「一括交付金」に改め、地方が自由に使えるお金を増やすというが、補助金の多くは社会保障分野など固定的な支出向けだ。自由に使えるからといって、自治体が別の事業や職員の給与アップなどに回してしまえば、住民が必要とするサービスが提供できなくならないか。

民主党は衆院選の選挙公約で「義務教育・社会保障の必要額は確保する」としたが、地方が自由に使えるお金を増やす一方で、これらの必要額も確保するとなれば、財源をどうするつもりか。

来年度予算案では、国の税収が減る中で地方交付税を特別に1兆円も加算した。中央が莫大(ばくだい)な赤字国債を抱えている現状を考えれば、単なる地方へのバラマキとの批判も出よう。

一方、政府は国が地方の業務を縛る「義務付け」を見直すために、41の法律をまとめて改正する地域主権推進一括法案も閣議決定した。こちらも前進ではあるが、省庁の抵抗で地方の意向は十分反映されないままに終わった。

国の出先機関の統廃合などの難題も先送りされたままだ。民主党の有力支持団体である労働組合に配慮し、改革が停滞するのではないかとの懸念も少なくない。

地方分権は自治体や議会、住民の自己責任を伴う。政府は6月にも「地域主権戦略大綱」を策定する予定だが、真の地方分権を進めるためには、鳩山首相は中央省庁の抵抗を封じると同時に、地方には責任分担を求める改革の全体像を早急に示す必要がある。

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