大学新テスト 改革ありきの迷走止めよ

読売新聞 2016年02月07日

大学入試改革 理念と実現性の接点を探れ

入試制度の見直しの難しさが、改めて浮き彫りになったと言えよう。

大学入試センター試験に代わる新テストの中身が見えてこない。検討が進むにつれて、実施態勢など様々な課題に直面しているためだ。

文部科学省は、2020年度から新テストを実施することを目指している。来月末までに有識者会議で最終報告をまとめる方針だ。しかし、拙速は禁物だろう。

入試制度の変更は、子供たちや教育現場に与える影響が極めて大きい。混乱を生じさせないよう、実現性を踏まえた、丁寧な制度設計を心がける必要がある。

新テストの最大の特徴は、従来のマークシート方式に加え、記述式の問題を導入することだ。

グローバル化が進む社会では、正解のない問いに向き合う力が求められているのだという。

暗記力など知識の量だけを問うのではなく、知識を活用する思考力や表現力も測るようにしたい。こうした理念はうなずける。

当面は、国語と数学の2教科で実施する。解答の字数は最大で300字程度になる。国語では、交通事故に関する統計資料を基に分析結果を記述したり、新聞記事を読んで自分の考えをまとめたりする問題が想定されている。

気がかりなのは、約50万人が受けるマンモス試験で、採点を公平かつ円滑に行えるかどうかだ。

文科省は、教育産業など民間事業者も含めて、1日あたり約800人の採点者を確保する方向だが、様々な答案を適切に評価するのは可能だろうか。採点の仕方にばらつきがあれば、テストに対する信頼が揺らぎかねない。

文科省の試算によると、採点には最大60日かかるとされる。これまで通り、1月中旬にテストを実施した場合、2月以降に始まる大学の個別試験に、記述式の採点が間に合わない恐れがある。

このため、記述式のテストをマークシート方式と分離し、前年の11~12月に前倒しで実施する案が急浮上している。

ただ、この案だと、受験シーズンが長期化し、高校の行事日程や部活動などに影響を与えるのは避けられない。

制度変更に要するコストに見合った効果が得られるのか、慎重な見極めが欠かせない。

各大学の個別試験の改革も大きな焦点になっている。

新たな共通テストと個別試験で、それぞれ受験生のどんな能力を判定するかという点についても、議論を尽くしてほしい。

産経新聞 2016年02月06日

大学新テスト 改革ありきの迷走止めよ

受験シーズンただ中だが、文部科学省の大学入試改革の「答案」はなかなか固まらない。大学入試センター試験に代わる共通テストの目玉だった「年複数回」実施が早くも困難になるなど、制度設計が迷走している。

入試改革ありきで生徒を振り回すことのないよう改めて求めたい。

新共通テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、今の中学1年が受験する平成32年度導入を目指し、文科省の有識者会議が実施方法を検討している。政府の教育再生実行会議が掲げた「一発勝負、1点刻み」の見直しに沿ったものだ。

計画では、共通テストの内容を思考力を重視したものに変えるほか、受験機会を増やすはずだった。各大学の2次試験で、面接や小論文などにより受験生の能力を多面的に評価するねらいだ。

年複数回実施は当初から授業や行事に支障がでるとの反対があった。採点に時間がかかる記述式の出題を加えるため、日程確保がさらに難しくなり、文科省は方針転換を余儀なくされた。

高校教育を妨げないのは当然としても、「目玉」をここへきて引っ込めるようでは、共通テストの性格自体が揺らぎ、センター試験の看板をあえて変える意味もなくなろう。いったい誰のための改革なのか。

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