入試制度の見直しの難しさが、改めて浮き彫りになったと言えよう。
大学入試センター試験に代わる新テストの中身が見えてこない。検討が進むにつれて、実施態勢など様々な課題に直面しているためだ。
文部科学省は、2020年度から新テストを実施することを目指している。来月末までに有識者会議で最終報告をまとめる方針だ。しかし、拙速は禁物だろう。
入試制度の変更は、子供たちや教育現場に与える影響が極めて大きい。混乱を生じさせないよう、実現性を踏まえた、丁寧な制度設計を心がける必要がある。
新テストの最大の特徴は、従来のマークシート方式に加え、記述式の問題を導入することだ。
グローバル化が進む社会では、正解のない問いに向き合う力が求められているのだという。
暗記力など知識の量だけを問うのではなく、知識を活用する思考力や表現力も測るようにしたい。こうした理念はうなずける。
当面は、国語と数学の2教科で実施する。解答の字数は最大で300字程度になる。国語では、交通事故に関する統計資料を基に分析結果を記述したり、新聞記事を読んで自分の考えをまとめたりする問題が想定されている。
気がかりなのは、約50万人が受けるマンモス試験で、採点を公平かつ円滑に行えるかどうかだ。
文科省は、教育産業など民間事業者も含めて、1日あたり約800人の採点者を確保する方向だが、様々な答案を適切に評価するのは可能だろうか。採点の仕方にばらつきがあれば、テストに対する信頼が揺らぎかねない。
文科省の試算によると、採点には最大60日かかるとされる。これまで通り、1月中旬にテストを実施した場合、2月以降に始まる大学の個別試験に、記述式の採点が間に合わない恐れがある。
このため、記述式のテストをマークシート方式と分離し、前年の11~12月に前倒しで実施する案が急浮上している。
ただ、この案だと、受験シーズンが長期化し、高校の行事日程や部活動などに影響を与えるのは避けられない。
制度変更に要するコストに見合った効果が得られるのか、慎重な見極めが欠かせない。
各大学の個別試験の改革も大きな焦点になっている。
新たな共通テストと個別試験で、それぞれ受験生のどんな能力を判定するかという点についても、議論を尽くしてほしい。
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