北のミサイル予告 たび重なる暴挙を許すな

朝日新聞 2016年02月05日

北朝鮮の挑発 米中の行動で警告を

北朝鮮が国際機関に対し、今月8日から25日の間に、「地球観測衛星を打ち上げる」とする計画を伝えた。

人工衛星と言い張っても、国連安保理決議に反する事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験であることにかわりはない。

その強行は、先月の核実験に続く国際社会全体に対する挑戦である。北朝鮮は、世界の安全を脅かし、自らの孤立を深める愚行を思いとどまるべきだ。

父の金正日(キムジョンイル)総書記の死去から4年あまり。権力を継承した金正恩(キムジョンウン)氏は、見当違いの強硬策を繰り返している。

前政権と異なるのは、核・ミサイル問題を米国との対話の始動に向けた外交カードとして使うのではなく、まず核保有国であることを認めさせようと開発を急いでいる点だ。

米国のオバマ政権はこれまで「戦略的忍耐」として北朝鮮を事実上、無視してきた。そんな米国を振り向かせるには、核・ミサイルの力を強めるしかないと考えたようだ。

国際機関への通知の日は、ミサイル発射への懸念などを伝えるため中国要人が平壌入りしていただけに、中国政府のメンツも丸つぶれにした。

韓国の朴槿恵(パククネ)大統領はきのう、「強力な国連制裁を通じ、核を放棄しないと(北は)生存できないことを国際社会が思い知らせるべきだ」と語った。

悪行に対して相応の代価を払わせるのは当然のことだ。

しかし、米国と中国は、核実験に対する「強い制裁決議」では一致しているが、その中身をめぐって考えをたがえる。

米国は、北朝鮮の命脈である石油や食糧の取引制限にも踏み込むよう求めている。中国は朝鮮半島の不安定化を嫌い、対話による問題解決を強調する。

対話と圧力。そのどちらを重視するか。平壌の暴走が起きるたび、安保理で同じ論戦が続くパターンを繰り返すようでは、事態は打開できまい。

対話と圧力のどちらか一方だけで北朝鮮問題は進展しない。金正恩政権の誤った思考を変えさせるには、もっとも影響力をもつ米中が新たな行動で強い警告を送る必要があろう。

これまでの立場に固執せず、米国は限定的な対話へ、中国は圧力へ、それぞれ一歩を踏み出してはどうか。少なくとも脅威の拡大を放置できない危機感を両国は共有しているはずだ。

米朝間の協議の余地は見せつつ、無謀な振るまいはもはや容認しないとの決意を平壌に伝える。そんな方策の実現に向け、日韓も積極的に動くべきだ。

読売新聞 2016年02月04日

北ミサイル予告 挑発許さぬ意思を明確に示せ

北朝鮮の核ミサイル開発を阻止するため、国際社会が結束して圧力を強めねばならない。

北朝鮮が、2月8~25日の間に人工衛星を打ち上げると予告した。平和目的だと強弁するが、事実上の長距離弾道ミサイルの発射だ。

国連安全保障理事会は度重なる決議で、北朝鮮に対し、弾道ミサイル技術を使った発射を禁じている。安倍首相が「決議違反であり、我が国の安全保障上の重大な挑発行為だ」として、自制を求めたのは当然である。

北朝鮮は1月6日に安保理決議に反して核実験を強行した。発射予告は、地域の安定を一段と脅かすものだ。関係国は緊密に連携し、発射を容認しない意思を明確に打ち出すことが欠かせない。

北朝鮮は、核実験で弾頭の小型化を進めている。米本土を攻撃する手段の獲得を目指し、長距離弾道ミサイルの射程延伸など性能向上も図っているとされる。

金正恩第1書記には、36年ぶりとなる5月の朝鮮労働党大会を前に、実績を内外に示す狙いがあるのだろう。父親である金正日総書記の誕生日という重要行事前後に発射を予定するのは、国威発揚につなげるためではないか。

問題なのは、核実験から1か月近く経過しながら、安保理の制裁決議がいまだに採択されていないことである。米国が燃料類の禁輸など強力な制裁を追求しているのに中国が反対しているからだ。

ケリー国務長官が訪中して「中国は北朝鮮への特別な能力と役割を持っている」と述べ、協力を求めた。だが、王毅外相は「決議で朝鮮半島を不安定化させてはならない」と、原則論に終始した。

中国が制裁強化に消極的であることが、北朝鮮に発射予告という揺さぶりを許したのは否めまい。北朝鮮は、中国の武大偉・朝鮮半島事務特別代表が訪朝した日に、発射を予告した。中国の圧力が不十分なことを示していよう。

中国は、北朝鮮への甘い姿勢を改め、「強力な制裁」を求める日米韓と協調して、安保理決議の採択を早急に実現させるべきだ。

ミサイルが発射された場合、沖縄県の先島諸島上空を通過する恐れがある。政府は、国民の安全確保に万全を期さねばならない。

自衛隊には「破壊措置命令」が出されている。イージス艦の迎撃ミサイルと、地対空誘導弾「PAC3」で迎撃する態勢をとる。全国瞬時警報システム「Jアラート」などを通じ、早期警戒情報を円滑に伝達する準備も重要だ。

産経新聞 2016年02月04日

北のミサイル予告 たび重なる暴挙を許すな

核実験に続く暴挙を許してはならない。

北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイル発射となる「衛星」打ち上げを関係機関に通告した。南に向けて発射し、沖縄県・先島諸島周辺の上空を通過する可能性がある。

核実験はもちろん、核兵器の運搬手段となる弾道ミサイルの発射も国連安全保障理事会決議に明確に違反する。世界の平和と安全を脅かす挑発行為であり、国際社会の反発を無視した身勝手な振る舞いだ。断じて容認できない。

金正恩第1書記は、軍事的挑発がさらに孤立を深め、何も得られぬことにまだ気づかないのか。

安倍晋三首相が国会で、日本の安全保障上、重大だという認識を示し、「強く自制を求める」と表明したのは当然である。

発射阻止に向け、米国や韓国と結束し、北朝鮮への圧力を一段と強めるべきだ。国際社会の連携が問われる局面である。

優先すべきなのは、1月初めの核実験を受けて安保理が調整している新たな対北制裁決議を早急に採択することだ。

安保理は、過去3度の核実験に際し、数日から3週間余りで新決議を採択した。それと比べて今回は、あまりにも遅すぎる。過去の決議より厳しい内容の制裁を目指しているのだとしても、これ以上、先延ばしすべきではない。

とくに、中国の動きを強く懸念する。ここにきて北朝鮮への擁護姿勢を強めていることは極めて問題だ。先週の米中外相会談でも「朝鮮半島を不安定化させてはならない」と主張し、両国は相違点を確認しただけだった。

対北制裁の実効性を高めるには中国の強い姿勢が欠かせない。

北朝鮮の通告は、核問題を担当する中国高官が訪朝しているさなか、中国の意向を無視する形で行われた。中国は、北朝鮮の増長を重く受け止める必要があろう。

日本も安保理の一員として、米国と歩調を合わせ、中国への働きかけを強めるべきだ。同時に、いち早く独自制裁を強化し、対北圧力の先頭に立つべきである。

発射への備えも万全を期さなくてはならない。自衛隊は、破壊措置命令に基づき、ミサイルを迎撃する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備した。

国民の安全を守るため、米韓などと協力して情報収集・分析に全力を挙げることが肝要だ。

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