北朝鮮が国際機関に対し、今月8日から25日の間に、「地球観測衛星を打ち上げる」とする計画を伝えた。
人工衛星と言い張っても、国連安保理決議に反する事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験であることにかわりはない。
その強行は、先月の核実験に続く国際社会全体に対する挑戦である。北朝鮮は、世界の安全を脅かし、自らの孤立を深める愚行を思いとどまるべきだ。
父の金正日(キムジョンイル)総書記の死去から4年あまり。権力を継承した金正恩(キムジョンウン)氏は、見当違いの強硬策を繰り返している。
前政権と異なるのは、核・ミサイル問題を米国との対話の始動に向けた外交カードとして使うのではなく、まず核保有国であることを認めさせようと開発を急いでいる点だ。
米国のオバマ政権はこれまで「戦略的忍耐」として北朝鮮を事実上、無視してきた。そんな米国を振り向かせるには、核・ミサイルの力を強めるしかないと考えたようだ。
国際機関への通知の日は、ミサイル発射への懸念などを伝えるため中国要人が平壌入りしていただけに、中国政府のメンツも丸つぶれにした。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領はきのう、「強力な国連制裁を通じ、核を放棄しないと(北は)生存できないことを国際社会が思い知らせるべきだ」と語った。
悪行に対して相応の代価を払わせるのは当然のことだ。
しかし、米国と中国は、核実験に対する「強い制裁決議」では一致しているが、その中身をめぐって考えをたがえる。
米国は、北朝鮮の命脈である石油や食糧の取引制限にも踏み込むよう求めている。中国は朝鮮半島の不安定化を嫌い、対話による問題解決を強調する。
対話と圧力。そのどちらを重視するか。平壌の暴走が起きるたび、安保理で同じ論戦が続くパターンを繰り返すようでは、事態は打開できまい。
対話と圧力のどちらか一方だけで北朝鮮問題は進展しない。金正恩政権の誤った思考を変えさせるには、もっとも影響力をもつ米中が新たな行動で強い警告を送る必要があろう。
これまでの立場に固執せず、米国は限定的な対話へ、中国は圧力へ、それぞれ一歩を踏み出してはどうか。少なくとも脅威の拡大を放置できない危機感を両国は共有しているはずだ。
米朝間の協議の余地は見せつつ、無謀な振るまいはもはや容認しないとの決意を平壌に伝える。そんな方策の実現に向け、日韓も積極的に動くべきだ。
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