ジカ熱大流行 蚊の駆除対策に支援急げ

朝日新聞 2016年02月04日

ジカ熱の流行 途上国の保健向上を

主に蚊が媒介する感染症「ジカ熱」について、世界保健機関(WHO)が「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

おととし、世界に広がった西アフリカのエボラ出血熱について宣言して以来だ。

政府は、中南米など流行地域を訪れる人たちに現地での注意を呼びかけている。入国・帰国者のチェックも含め、被害を防ぐ対策を徹底してもらいたい。

あわせて、WHOや他国と連携し、流行を招きやすい途上国の保健・衛生状態の改善にも積極的に協力すべきである。

自らの守りを固めつつ、現地の火消しにも貢献する。それが日本など先進国の責務だ。

ジカ熱は主にアフリカからアジア太平洋、中南米の熱帯で発生している。日本など先進国でも発生地からの渡航者で感染が見つかったことがある。

ただ、これまでは重大視されてこなかった。健康な人が感染しても、軽い発熱や関節痛、発疹など症状が軽く、無症状の人も少なくないためだ。

しかし昨年来、ブラジルなど中南米で感染が広がるなかで、脳の発達が不十分な小頭症の新生児が急増した。妊婦のジカ熱感染との関連が疑われている。筋力低下を伴う神経疾患「ギラン・バレー症候群」も増え、警戒感が一気に高まった。

ワクチンはまだないから、ウイルスを持つ蚊に刺されないことが最も有効な予防策だ。特に妊婦は不用意に流行地に近づかないようにしたい。

五輪がある8月のリオデジャネイロは6月の東京に近い陽気だから、蚊対策は必須だ。政府は渡航者に旅行会社などを通じて周知してほしい。

症状が軽いため検疫による水際対策はあまり効果を望めないが、相談体制は充実させたい。

感染者が入国しても、蚊がいなければ感染は広がりにくい。デング熱同様、蚊の発生を抑える地道な取りくみが大切だ。

最近、耳慣れない感染症が次々に現れている。だが、エボラも流行地で正しい理解を広げ、保健システムを立て直すことで封じ込めることができた。

源になることが多い途上国で保健水準を引き上げることが、根本的な解決につながる。

保健分野をめぐっては、国連による01~15年の「ミレニアム開発目標」が達成されず、16~30年の新目標に引き継がれた。

政府は昨秋、日本の経験と知見で世界の保健課題に貢献するとして、「平和と健康のための基本方針」を定めた。

着実に進めたい。現地で活躍できる人材育成が急務である。

読売新聞 2016年02月03日

ジカ熱感染拡大 世界が協力して封じ込め急げ

感染の拡大を食い止めるため、国際社会が協力せねばならない。

蚊が媒介する「ジカ熱」について、世界保健機関(WHO)が「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。各国に監視強化と封じ込めを呼びかけている。

昨年5月にブラジルで確認された感染は、中南米を中心に20か国・地域以上に拡大した。WHOは、中南米の感染者が最大400万人に達すると推計している。

ジカ熱に感染しても、ほとんどの場合、発熱や頭痛などの症状にとどまる。懸念されているのは、妊婦が感染すると、新生児に、脳の発達が遅れる小頭症のリスクが高まる可能性があることだ。

中南米諸国では、社会不安が広がっている。ブラジルでは、既に150万人が感染しているとみられ、小頭症の新生児の報告数は約4000例に上る。

ルセフ大統領は「ジカ熱との戦い」を宣言し、国軍22万人を動員して防疫に当たる方針だ。

5日から、リオデジャネイロでカーニバルが開催される。世界から大勢の観光客が訪れるだろう。当局には、会場での蚊の駆除を徹底することが求められる。

8~9月には五輪・パラリンピックを控える。競技に支障が生じないよう、会場周辺の蚊の発生源を確実に排除し、選手や観客に的確に情報提供する必要がある。

エルサルバドル政府は、妊娠を2年間遅らせるよう国民に呼びかけている。人口動態に深刻な影響を及ぼしかねない。

感染が拡大している地域は、ほとんどが高温多湿で、都市部の人口は過密だ。衛生状態も良好と言えず、蚊が繁殖しやすい。医療水準が十分ではない地域も多い。

WHOは予防策として蚊帳や蚊よけスプレーの活用を勧告した。診断や治療での国際連携も訴えた。各国の支援が遅れ、エボラ出血熱が西アフリカから欧米に飛び火したことを教訓にすべきだ。

日本も予防ワクチンの開発などで積極的に貢献したい。

国内対策も重要である。政府は関係省庁対策会議で、国内で患者が発生した際の対応を確認した。患者を診察した医療機関に報告を義務づけるため、ジカ熱を4類感染症に指定する。患者の早期把握につなげねばならない。

流行地域からの帰国者に発熱などの症状がある場合には、必ず申告するよう、空港などで周知徹底する必要がある。

妊婦の中南米などへの渡航は、可能な限り控えたい。

産経新聞 2016年02月03日

ジカ熱大流行 蚊の駆除対策に支援急げ

中南米を中心に大流行するジカ熱に対し、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

ブラジルでは流行地域で新生児の小頭症が増加しており、科学的な証拠はないもののジカ熱との関連が「強く疑われる」と指摘されている。

ジカ熱はデング熱などと同じように蚊が媒介する感染症だ。日本でも、夏場の蚊が増える季節に感染症例が報告されれば、一気に社会的な不安が広がりかねない。

8月にはリオデジャネイロ五輪が開かれ、日本からブラジルを訪れる人も増える。地球の裏側の出来事などと考えずに、各国と情報を共有し、流行地での蚊の駆除対策などを支援して感染拡大を抑える努力に加わることが必要だ。

ジカ熱の症例は昨年5月以降、ブラジルをはじめ中南米の20以上の国と地域で確認されている。少数だが、すでに米国や欧州諸国でも報告されており、北半球が夏を迎えれば流行が地球規模で広がる恐れもある。

病原体のジカウイルスは1947年にウガンダでアカゲザルから発見され、ジカ熱自体はこれまでにもアフリカやアジアで流行している。ただし、今回ほど急激に感染が拡大したことはない。

さらに、今回は流行地域で感染した妊婦から生まれた赤ちゃんに発達の遅れなどの可能性がある小頭症が多く報告され、妊娠した女性を不安に陥れている。

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