物価目標を達成し、デフレ脱却を確実にする強い決意の表れだろう。
日銀が、異例の「マイナス金利」を導入する追加金融緩和策を決めた。日銀の当座預金口座に民間銀行が預けた一定以上のお金の金利をマイナス0・1%に引き下げ、0・1%の「手数料」を徴収する。
日銀の黒田東彦総裁は記者会見で、「必要なことは何でもすると示すことで、デフレマインドを転換する」と強調した。日経平均株価は500円近く上昇し、市場はサプライズ決定を好感した。
国際金融市場が年初から大混乱に陥り、世界経済の先行き不安が強まる中、日銀が機動的な対応を取ったことは評価できる。
マイナス金利には、民間金融機関に、より積極的な融資を促し、企業の設備投資などを活性化する狙いがある。欧州中央銀行(ECB)なども導入済みの政策だ。
ただ、その効果は限定的だとする見方もある。巨額の内部留保を抱える大企業は、資金不足で投資を控えているわけではない。
日銀に「手数料」を払う金融機関の収益圧迫も心配される。決定が僅差の表決となったのも、こうした疑念があったためだろう。
だが、金利水準が全体的に下がれば、リスクをとっても利益を得たい投資家の動きが活発となり、円高の防止や株価を押し上げることが期待できるのではないか。
中小企業やベンチャー企業は、資金調達が円滑になり、新事業への投資拡大などが望めよう。
無論、金融政策だけではデフレ脱却の達成はおぼつかない。日銀が景気を下支えしている間に、政府は成長戦略を充実させるとともに、実行を急ぐべきだ。
市場の動揺を鎮めるには、各国中央銀行の行動が重みを持つ。
新興国経済の行方が不安視されている。とりわけ日米欧の金融当局は、先進国が世界経済を牽引する必要性を自覚し、市場との対話に万全を期さねばなるまい。政策面での連携強化が欠かせない。
ECBのドラギ総裁は先週、3月の追加緩和を示唆した。日銀のマイナス金利導入は、これに連動した政策協調の一環だろう。
気がかりなのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢だ。
FRBは、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを行う可能性を否定していない。どんな利上げペースを目指しているのかは不透明なままだ。
世界経済や市場に与える副作用も考慮し、利上げの時機を慎重に見定めてもらいたい。
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