関電高浜原発 なし崩し再稼働に反対だ

朝日新聞 2016年01月28日

関電高浜原発 なし崩し再稼働に反対だ

関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)が29日にも再稼働する。新規制基準の下では、昨年の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に続く。

東京電力福島第一原発事故から今年3月で5年たつ。

電力各社は全国43基の原発のうち25基と、建設中の1基について、基準適合審査を原子力規制委員会に申請した。川内、高浜に続き、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)も、次の再稼働が見込まれている。

事故の教訓がなおざりにされたまま、原発がなし崩しに動き出していく現状に強い危機感を抱く。高浜原発の再稼働に改めて反対を表明する。

 ■安全ないがしろに

朝日新聞は11年7月の社説で「原発ゼロ社会」への政策転換を呼びかけた。

事故前、日本は電力の3割近くを原発に頼っていた。原発を直ちにゼロにすれば、電力不足や電気料金の高騰で国民生活に深刻な影響が出ることが懸念されていた。

日本は原発依存から脱し、再生可能エネルギー中心の社会を目指すべきで、それまでの原発の再稼働は安全が確保され、需給面で必要な場合に限ることを条件とした。

高浜原発の再稼働にまず指摘したいのは、「安全第一」がないがしろにされていることだ。

福島で私たちは「想定を超える事故は起きうる」という重い教訓を学んだ。

福井県の若狭湾周辺には、廃炉中を含めて15基の原子炉がある。世界屈指の集中立地地域だ。災害などで複数の原発が同時に事故を起こせばどうなるのか。福島の事故が突き付けたこの疑問に、答えは示されていない。規制委の審査でも、ほとんど検討されなかった。

福井に11基の原発を持つ関電は昨年、規模が小さく古い2基の廃炉を決めたものの、3基は運転開始から40年を超えて使い続ける方針を決めた。

リスクを最小化する努力が不十分と言わざるを得ない。

高浜は、ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を燃やすプルサーマル発電だ。安全性への住民の不安がより強いことも、忘れてはならない。

 ■住民守る「壁」薄く

事故が起きた時の「最後の壁」である住民の避難計画も心もとない状況だ。

高浜原発は避難計画の策定が義務づけられた半径30キロ圏に福井、京都、滋賀の3府県12市町が入り、17万9千人が暮らす。

国の原子力防災会議は昨年末に、各府県がまとめた広域避難計画を了承した。30キロ圏の住民は最悪の場合、福井、兵庫、京都、徳島の4府県56市町へ避難することになる。ところが朝日新聞の調べでは、住民の受け入れ計画をつくったのは56市町のうち7市だけだ。大半の自治体が「施設や人員、物資を確保できるか」「放射性物質に汚染された車が入ってこないか」といった不安があると答えた。

事故以前、日本には10キロ以遠の住民が避難する想定もなかったのだから、不安は当然だ。

避難計画を実のあるものにするには訓練や検証を重ねるしかない。それなのに高浜は計画に基づく訓練が未実施だ。計画の実効性が確認されないまま、再稼働することを強く懸念する。

30キロ圏の多くの自治体が住民の不安を受け、再稼働前の「同意権」を関電に求めた。だが関電は拒み、国も、立地自治体の同意さえあればいい、との姿勢を崩さない。

これらの課題を置き去りにしたままの再稼働は、「見切り発車」というほかない。

 ■脱却への道筋議論を

電力各社は原発再稼働を目指す理由として、需給面の不安や燃料費増大に伴う電気料金値上げの問題を強調してきた。

事故5年を前に、状況は明らかに変わってきている。

昨夏までほぼ2年間、原発はすべて止まったが、電力不足は起きなかった。火力発電所の点検を先延ばしするといった各社のやりくりに加え、節電意識の広がりも大きい。関電を例にとれば、販売電力量は事故前に比べ、10%程度減っている。

電力自由化で、家庭も4月から電気の購入先を選べるようになる。電気を賢く使おうとする利用者の意識は、さらに強まるだろう。原発停止の負の影響とされた貿易赤字も、原油安で燃料費が下がり、縮小傾向だ。

関電は「高浜原発が動けば料金を値下げできる」というが、再稼働の理由としてどれだけ説得力を持つだろうか。

原発内のプールにたまっている使用済み核燃料をどこで中間貯蔵するかという難題もある。

福井県の原発をめぐっては、再稼働を強く求める立地地域と、総じて慎重な消費地・関西との温度差も浮かび上がった。

原発を長年引き受けてきた地域の理解なしに、脱原発社会への展望は開けない。国はもちろん、消費地も協力し、ともに未来図を考えていく必要がある。

読売新聞 2016年01月30日

高浜原発再稼働 電力の安定供給と負担軽減を

首都圏に次ぐ規模の関西経済圏で、電力の供給体制が増強される意義は大きい。

関西電力高浜原子力発電所3号機(福井県)が再稼働した。2月下旬には4号機も動き始める。

両機の合計出力は、ピークとなる夏場で、関電管内の電力需要の約7%を占める。

再稼働により月100億円の収支改善を見込む関電は、4月にも電気料金を引き下げることを検討している。家計と企業の負担軽減に確実につなげてもらいたい。

高浜原発は、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電も行う。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムが原料だ。

資源の有効活用と放射性廃棄物の減容化につながる核燃料サイクルの進展につながろう。

高浜原発は、福島第一原発事故で厳格化された原子力規制委員会の新基準に対応している。九州電力川内原発1、2号機に続いて、事故後の再稼働となった。

想定される津波の高さを2・9倍に引き上げるなど、従来より大規模な自然災害を考慮して、安全対策を補強した。

万一の事故時に原子炉を冷却するための非常用発電機を増設した。火災に備えて、ケーブルの耐火性の強化といった対策も講じた。重大事故の危険性は大幅に下がったと言えよう。

ただ、4年間にわたる長期停止後の再稼働だ。運転には、細心の注意が必要である。

周辺自治体の避難計画を不断に見直すことも重要だ。計画の策定が義務付けられる半径30キロ圏には、原発が立地する福井県以外に、京都府、滋賀県が含まれ、計約18万人が暮らしている。

避難時の道路の渋滞対策やバスの確保、受け入れ先の自治体の体制整備などを進めねばならない。住民が参加する実践的な訓練を実施することも大切だろう。

今後、再稼働が見込まれるのは、四国電力伊方原発3号機だ。規制委の安全審査に「合格」し、地元自治体も再稼働に同意している。九電玄海原発3、4号機の審査も大詰めを迎えている。

だが、その他の原発は、規制委の審査が滞り、再稼働のめどが立っていない。電力の安定供給にはさらなる再稼働が欠かせない。

大規模停電が起きていないのは、老朽火力発電所をフル稼働させて、しのいでいるためだ。綱渡りの状況を脱するため、規制委には迅速な審査が求められる。

産経新聞 2016年01月29日

高浜再稼働へ 安定供給への流れ加速を

関西電力の高浜原発(福井県高浜町)が再稼働する。3号機(加圧水型・87万キロワット)が29日、4号機(同)は2月下旬の予定だ。

ともに使用済み燃料をリサイクルしたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を原発で使うプルサーマル発電である。原子力発電の本来の姿に向けての回復の歩みとして歓迎したい。電気料金値下げも朗報だ。

だが、新規制基準の下での再稼働のペースは牛歩に過ぎよう。

原子力規制委員会による安全審査の開始から2年半以上経過しているにもかかわらず、昨年の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と合わせて、ようやく計4基という少なさは、問題である。

先週、国際原子力機関(IAEA)から出された勧告に従い、規制委は職員の能力向上を通じて審査速度を上げるべきだ。

今後の再稼働のめどが立っている原発が、四国電力伊方3号機のみという状況では、電力の安定供給達成が心もとない。

これら一連の再稼働に対し、全原発が停止中にも電力不足は起きなかったから、原発はいらないとする声もある。だが、これは現実から意図して目を背けた極めて皮相な見方だ。

各電力会社は、老朽火力を現役復帰させるなどして、火力発電で原発停止の不足分を補い、大規模停電を回避してきた。その中で起きた九州電力の新大分火力発電所(計230万キロワット)の寒波による故障では、他の6電力からの緊急融通で危機を脱した。4年前の2月のことだ。

最近でこそ、原油安で火力発電の燃料代が軽減されているが、それまでは年額約4兆円もの国富流出に苦しんだことを忘れてはならないだろう。

石油は価格変動が、太陽光や風力は出力変動が大きく主力電源には適さない。資源小国の日本としては、技術力で安全性を高めた原発を上手に使いこなしていくのが賢明な道である。

原発不要論には「高速道路を猛スピードで走っても、事故さえ起きなければシートベルトは要らないと主張しているかのようだ」という例え話で応えたい。

今月、他界した評論家、澤昭裕さんの箴言(しんげん)だ。安定供給こそが、エネルギー政策の根幹であることを忘れてはならない。

ケン - 2016/01/31 14:25
何故朝日のみ狭視野狭窄で国益の足を引っ張るのか、朝日の慰安婦ねつ造に準じてるのが判らない。
そもそも、福島原発は例外的大津波と経費節減の為の言わば手抜き工事から事故を起こしてるのは周知の通りで原発そのものに危険性は少なく国益に叶うと思われますね。
この社説へのコメントをどうぞ。
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