衆院代表質問 対案の各論を本格的に深めよ

朝日新聞 2016年01月27日

代表質問 不平等克服へ政策競え

私たちの社会で日常化している不平等を、どう克服していくべきか。

きのう始まった国会の代表質問では、この喫緊の課題に向けた質疑も交わされた。

経済成長や外交・安全保障政策、そして甘利経済再生相の金銭授受疑惑の解明――。いずれも、いま国会が取り組むべき重要な課題である。

ただ、正社員と非正社員、男と女、都市と地方など日本社会で拡大しつつある様々な格差、すなわち不平等の解消は、とりわけ対応が急がれる。

民主党の岡田代表は「格差是正、公正な分配のための具体策について提案したい」と語り、児童手当の1人あたり支給額や児童扶養手当の支給対象年齢の引き上げなどを挙げ、財源として金融課税や所得税・相続税の累進強化を示した。

また、安倍首相が施政方針演説で「実現に踏み込む」とした同一労働同一賃金について、もともと民主党が訴えているような正規と非正規雇用の「均等待遇」をめざすのかとただした。

維新の党の松野代表も、国民年金保険料を払っていない人などの数字をあげて、早急な対応を求めた。

厚生労働省の調査によれば、日本の相対的貧困率は2012年で16・1%。年々少しずつ増加している。30歳未満の若年世帯では27・8%、1人親世帯では54・6%にも達している。

首相もこうした現状を踏まえ、「格差が固定化しないよう雇用環境の改善や社会保障環境の改善の見直しを行っていく」と応じた。ただ、岡田氏の提案への首相の答弁はやや抽象的で、物足りなさが残った。

首相はさきの施政方針演説で、「批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は『どうにかなる』。そういう態度は、国民に対して誠に無責任だ」と野党を批判し、「具体的な政策をぶつけあい、建設的な議論を行おう」と呼びかけた。

首相の念頭には、安保関連法制や憲法改正への民主党などの対応があるのだろう。だが、憲法を逸脱する政策に反対を貫くことが無責任とは言えないし、内容より改憲ありきの首相の姿勢を警戒するのは当然だ。

むしろ首相の方こそ、野党の疑問や提案に対して、「具体的に、建設的に」答える責任を果たしてもらいたい。

夏に参院選を控えたこの国会は短期戦とも言われる。一方、論ずべき課題は山積みであり、疑惑の解明も必須だ。選挙を意識した批判合戦に終わらせてはならない。

読売新聞 2016年01月27日

衆院代表質問 対案の各論を本格的に深めよ

民主党が経済政策などで様々な対案を示したことは歓迎できる。肝心なのは、今後の審議で具体論を深めることだ。

安倍首相の施政方針演説に対する代表質問が始まった。民主党の岡田代表は、経済格差を是正する「公平な分配」の重要性を強調し、児童扶養手当や年金の最低保障機能の拡充、株売買の金融課税の強化などを提案した。

安倍首相は「経済成長と分配の好循環が、私の目指す1億総活躍という社会像だ」と切り返した。児童扶養手当の増額などには既に取り組み、限られた財源の中で最大限努力していると答えた。

公平な分配は政府の重要な役割だが、行き過ぎれば民間の活力をそぎかねない。財源面の費用対効果の検討も欠かせない。経済成長と分配のバランスが大切だ。

岡田氏の主張は、所得・相続税の累進性の強化など分配面に偏っており、成長を実現するための具体策が物足りない。

岡田氏が今回、提案を重視したのは、首相の施政方針演説で「批判だけでは無責任だ」と挑発されたのが一因だろう。ただ、議論がかみ合ったとは言えない。

一問一答方式の予算委員会で本格的な議論をしてほしい。民主党が提案を法案化し、国会に提出することも論戦を活発にしよう。

米軍普天間飛行場の辺野古移設について、岡田氏が政府の工事を中断し、沖縄県との協議を再開するよう求めたのは疑問である。

多くの関係者が長年、議論を重ね、最善と判断したのが辺野古移設だ。今は合意の実行段階にある。地元の理解を広げる努力は大切だが、議論を後戻りさせるのは新たな混乱を招くだけだろう。

憲法改正に関し、岡田氏は自民党案の緊急事態条項について「基本的人権を制約し、民主主義の根幹を揺るがしかねない」と批判した。やや一面的な主張だ。

この条項は、国民の生命や財産をより効果的に守るため、首相権限を強めるものだ。多くの国の憲法にも同様の規定がある。緊急事態の要件や首相権限の精査は必要だが、冷静な議論を求めたい。

甘利経済再生相の違法献金疑惑について、岡田氏は、「首相の盟友中の盟友だ。任命責任はもちろん、重大な説明責任がある」と安倍首相を追及した。首相は、「甘利氏は説明責任を果たしていただきたい」と述べるにとどめた。

国会が疑惑追及で一色になるのは非生産的だ。甘利氏は28日の記者会見で、現金授受などについて納得のいく説明が求められる。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2401/