宜野湾市長再選 基地移設を着実に進めよ

朝日新聞 2016年01月26日

宜野湾市長選 「辺野古」容認と言えぬ

米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市長選で、安倍政権の全面支援を受けた現職が、翁長雄志知事が支援する新顔を退け、再選された。

沖縄では一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきた。今回も、移設をめざす政権と、反対する翁長知事の対立構図が持ち込まれたものの、連勝の流れは止まった。

翁長知事は、選挙で示された民意を最大の盾として辺野古移設阻止を訴えてきた。それだけに、知事にとって大きな痛手となることは間違いない。

とはいえ、「これで辺野古移設が容認された」と政権側がとらえるとしたら、早計である。

当選した佐喜真淳市長は「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」を主張しつつ、辺野古移設への賛否は明言せず、移設問題を争点化させない戦略をとった。

朝日新聞社の出口調査では辺野古移設に賛成の有権者が34%だったのに対し、反対は57%いた。本紙の取材でも、佐喜真氏に投票した人にも「県外に移してほしい」「市民としては普天間固定化阻止、県民としては辺野古移設反対」などの声があった。佐喜真氏を推した公明党県本部幹部も「あくまで辺野古移設には反対」と言う。

宜野湾市民の基地負担は重い。市の面積の4分の1を占める普天間飛行場は、市中心部にある。12年前には滑走路そばの沖縄国際大に米軍ヘリが墜落。オスプレイが24機配備され、騒音被害は絶えない。市の「基地被害110番」へ寄せられる苦情は昨年10月、月間で過去最多の100件を数えた。

だからこそ普天間の閉鎖・撤去は市民共通の悲願なのだ。

辺野古移設に触れず、「一日も早い閉鎖・撤去」を訴えた佐喜真氏への市民の期待を、そのまま辺野古移設支持と受け取ることはできまい。むしろ、身近で危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去を願う、市民の意思と受け止めるべきではないか。

日米両政府が返還に合意してから今年で20年。本来は生活に密着した諸課題が問われるべき市長選で、米軍基地の県内移設の是非までが問われる沖縄県民の重荷を、一日も早く取り除く責任は日米両政府にある。

そのためには、政権はまず「辺野古移設か、普天間固定化か」と県民に二者択一を迫るやり方を改める必要がある。

そのうえで、県外移設など早期の普天間閉鎖・撤去の方法がないか、米政府と改めて協議を始めるべきだ。

読売新聞 2016年01月25日

宜野湾市長再選 「普天間固定」を避ける一歩に

米軍普天間飛行場の危険性の早期除去という移設問題の「原点」について、多くの市民が再認識した結果ではないか。

沖縄県宜野湾市長選で現職の佐喜真淳氏が、移設反対派が推す元県職員の志村恵一郎氏を破り、再選された。佐喜真氏は、辺野古移設を進める自民、公明両党の推薦を受けていた。

2014年の名護市長選と沖縄県知事選で移設反対派が勝利した流れを止めたものだ。推進派の反転攻勢の足がかりとなろう。

佐喜真氏は、自公両党の支持層を固め、無党派層にも浸透した。前回の市長選では「県外移設」を唱えたが、今回は、移設先には言及せずに、移設を実現する必要性を誠実かつ真剣に訴えた。

普天間飛行場の固定化を避けるには、やはり辺野古移設が現実的な近道だ、との受け止めが市民に広がったのは間違いあるまい。

政府が基地負担軽減に積極的に取り組んだことも功を奏した。

普天間飛行場東側の土地の返還前倒しにより、交通渋滞を解消する市道整備に道筋を付けた。飛行場返還後の跡地にディズニーリゾートを誘致する構想も、若者らの支持につながったとされる。

志村氏は、翁長雄志知事と二人三脚で、「3年で普天間飛行場の運用停止の実現」という空疎な主張を繰り返すだけだった。これでは、市民の支持を広げることに限界があるのは当然だ。

政府は引き続き、より多くの県民の理解を得る努力を尽くしながら、辺野古移設の作業を着実に進めなければならない。

翁長氏はなお、徹底抗戦の構えだ。自らの埋め立て承認取り消しに関する国土交通相との対立を巡り、総務省の国地方係争処理委員会の却下判断を不服とし、高裁支部に新たな訴訟を起こす。

だが、具体的な解決案を示さずに、国との対決姿勢を強めるだけの翁長氏の硬直的な手法については、県内でも、保守系を中心に冷ややかな声が高まりつつある。

翁長氏は、県民の基地負担軽減には何が有効かを再考し、現実的な対応をとるべきだろう。

理解できないのは民主党の対応だ。沖縄県連が志村氏支援に回り、枝野幹事長は「多くの党国会議員が(志村氏に)頑張ってもらいたいという思いだ」と述べた。

移設問題がここまで迷走した原因は、民主党政権が「最低でも県外」と訴え、反対派をあおったことにある。辺野古移設を党方針と決めたのに、安易に再び反対に回るのは、無責任に過ぎよう。

産経新聞 2016年01月25日

宜野湾市長再選 基地移設を着実に進めよ

米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市長選で、与党が支援する現職の佐喜真淳氏が再選を果たした。

佐喜真氏が普天間の危険性除去を主張し、名護市辺野古への移設を否定しなかったのに対し、対立候補は移設に反対していた。

危険性除去には、辺野古移設がより現実的だという判断が示された結果といえよう。

もとより、日本の平和と安全を守る安全保障政策は、地方自治体ではなく国が担う。

辺野古移設は日米両政府が交わした重い約束事である。日米同盟の抑止力を保つためにも、政府には引き続き移設を着実に進めてもらいたい。

敗れた志村恵一郎氏は「県内移設によらない飛行場の閉鎖、返還を求める」と訴えていた。

結果次第で辺野古移設がより困難になることも予想されただけに、佐喜真氏が勝利した意味は小さくない。

最近の沖縄では、知事選、名護市長選、衆院選4選挙区で、いずれも移設反対派が当選した。翁長雄志(おなが・たけし)知事は、これが「沖縄の民意」だと主張し、移設再考を政府に迫っている。

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