北教組幹部逮捕 違法献金の実態を洗い出せ

朝日新聞 2010年03月03日

民主党の暗部 えぐり出し早く手を切れ

新年度予算案が衆院を通過し、年度内の成立が確実になった。鳩山政権と民主党が次にやるべきことは、はっきりしている。度重なる「政治とカネ」の問題に、けりをつける。党内の古い体質や暗部をえぐり出し、早くきっぱりと手を切る。これに尽きる。

民主党の小林千代美衆院議員の陣営が、北海道教職員組合から違法な選挙資金を受け取ったとされる事件で、北教組の幹部ら4人が逮捕された。

民主党と労組の関係は切っても切れない。小林氏に限らず、労組に資金や票を依存する議員、候補者は数多い。選挙を取り仕切る小沢一郎幹事長は、連合との関係を最重視してきた。

その意味で、今回の北教組の事件によって白日のもとにさらされたのは、民主党が構造的に抱えこんでいるかもしれない闇の部分である。

鳩山由紀夫首相や小沢氏の問題と比べ登場人物は小粒でも、事柄の深刻さはまさるとも劣らないといっていい。

せっかく政権交代を起こしたのに、55年体制と同じように次から次へとカネがらみのスキャンダルが発生する。新しい政治文化を期待した民主党も、しょせんは古い体質の金権政党なのではないか。そうした幻滅が有権者の間に広がりつつある。内閣支持率の続落が何より雄弁に物語っている。

それにしては、鳩山首相や民主党から伝わってくる危機感はあまりに薄い。重ねて猛省を促したい。

民主党に巣くう古い体質は、新年度予算案の衆院通過に至る前半国会の運営ぶりからも見て取れる。

野党側は小沢氏の国会招致や、元秘書で逮捕・起訴された石川知裕衆院議員の辞職勧告決議案採決などを要求し、自民党は審議拒否に踏み切った。民主党は「ゼロ回答」を押し通した。

予算案の審議を急ぎたい気持ちはわかるが、それは要求を拒む理由にはならない。予算審議とは切り分け、国会招致や採決に応じればいい。

与党の強硬姿勢と、野党の「日程闘争」戦術。およそ自民党一党支配時代と変わらない旧態依然の国会風景を、双方手を携えて再現してくれた。

有権者の失望や怒りが単に鳩山首相や民主党に向かうだけならまだしも、それは政権交代時代の新しい国会論戦、ひいては政党政治そのものに対する無力感やシニシズムに再び結びついてしまいかねない。

日本の民主主義にとって極めて不幸であり、危険な展開である。

首相はきのう、小沢氏に企業・団体献金禁止の論議を急ぐよう求め、党役員会は与野党の協議機関づくりを進めることを決めた。それでも有権者の民主党不信をぬぐうには遠いだろう。

暗部を摘出し、体質を作りかえる。従わない幹部は、更迭してでも前に進む。その覚悟を首相に求めたい。

毎日新聞 2010年03月03日

予算案衆院通過 「熟議」とは程遠かった

政権交代という大きな転換期にもかかわらず国会は変わらない。いや、与野党ともに変える気がないと疑いたくなる。10年度予算案は2日衆院を通過し、年度内の成立が確定したが、この間の審議はそんなお寒い現状を見せつけるものだった。

「政治とカネ」が焦点となるのは当然ではある。鳩山由紀夫首相の偽装献金事件と小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体をめぐる事件、さらに北海道教職員組合幹部による違法献金事件も加わったからだ。

特に小沢氏に関しては野党側が証人喚問などを再三要求したのに対し民主党は応じようとしなかった。国民の関心が薄れるのを待っているのだろうか。問題解明の機会を封じた不誠実な対応と批判されても仕方がない。ただし、その要求が受け入れられないことを理由に自民党が一時、与党時代は批判してきたはずの審議拒否戦術に転じたのも理解に苦しむ。党内からも批判が出て早々と審議に復帰したが、与野党が入れ替わっても手法は同じ。旧態依然とした国会に失望した人は多いはずだ。

新年度予算案では衆院選マニフェストの一部が早くも見送られ、当初から懸念されていたように財源は思うに任せず確保できなかった。目玉政策である子ども手当に関しては、なぜ、必要なのか、今も国民の間で理解が進んでいるようには見えない。米軍普天間飛行場の移設問題も迷走を続けたままだ。

ところが、「政治とカネ」以外のこうしたテーマに関しては、それなりに議論されたとはいえ、いずれも中途半端に終わり、結局、従来通り、審議日程をめぐる与野党の駆け引きが続いた印象だ。

毎日新聞は、政権交代は国会も変わるチャンスだととらえ、徹底的に与野党が議論する「熟議する国会」を提唱してきた。議論の結果、野党の提案に合理性があると判断した場合などは法案の修正があってしかるべきだとも指摘してきた。

今の方式ではそれができないのなら変えればいいだけの話だ。例えば予算委員会にいくつかの小委員会を設置し、子ども手当や高校授業料無償化などテーマごとに同時並行で徹底審議をするのも一案だ。そもそも事業を吟味し予算の無駄を削る仕分け作業は国会の仕事でもある。

民主党は今国会に国会改革の法案を提出するという。官僚答弁の禁止ばかりが注目を集めているが、「日程の駆け引き」から脱皮するための具体的な検討が不可欠だ。

3日から始まる参院審議で、野党側は衆院審議をなぞるだけではなく、いくつかのポイントを絞って議論を仕掛けていってはどうか。国会改革につながる審議を切望する。

読売新聞 2010年03月03日

予算案衆院通過 財源も疑惑も議論が不十分だ

2010年度予算案が衆院を通過し、年度内成立が確実となった。

しかし、重要施策の財源論議は深まらず、鳩山首相や小沢民主党幹事長の政治資金絡みの疑惑も未解明のままだ。

きょうから始まる参院予算委員会審議では、衆院の審議で積み残した問題について、与野党とも突っ込んだ議論を展開しなければならない。

予算案には、多くの問題点が指摘されてきた。

景気が低迷する中、公共事業費は2割も削減された。一方で、民主党が総選挙でマニフェスト(政権公約)に掲げた目玉施策はそのまま盛り込まれた。その財源は予算の無駄減らしで確保できず、国債の大量増発に頼った。

マニフェストのあり方を含め、議論を掘り下げる必要がある。

衆院では、子ども手当支給と高校授業料無償化のための法案審議が本格的に始まる。

政府・与党は、両法案を3月末までに成立させ、今夏の参院選前に実施したい考えだ。

しかし、子ども手当の狙いが子育て支援だとすれば、支給額の多くを、対策が手薄な小学生以下の保育サービスの充実に回した方が効果的との指摘もある。家計支援であるなら、所得制限を設けるのが筋だろう。

11年度以降の対応についても、鳩山首相はマニフェスト通り満額支給に意欲を示しているが、財源のめどはまったく立たない。

制度の狙いや財源がはっきりしないままで、法案の成立を急いではなるまい。審議時間を十分確保し、政府側の答弁も、鳩山首相が責任をもってあたるべきだ。

政策をめぐる論戦が深まらないのは、民主党が、首相の元秘書や小沢氏らの国会招致を拒み続け、野党側の追及がこれに集中しがちなためだ。

民主党はここに来て第3の不祥事を抱え込んだ。小林千代美衆院議員の選挙に関連し、北海道教職員組合の幹部らが逮捕されたが、小林議員は「捜査の進展を見守る」と言うのみだ。

党側も独自調査に乗り出す気配はない。「労組マネー」の問題に取り組もうとしないのでは、民主党の体質が問われよう。

首相と小沢氏が会談し、政治とカネの問題に関する与野党協議機関を設ける考えで一致した。それも大事ではあるが、首相と小沢氏がまずすべきなのは、疑惑解明のため、国会の場で説明責任を果たすことである。

産経新聞 2010年03月04日

政治とカネ 「疑惑まみれ」正すが先決

参院予算委員会が始まり、民主党の小林千代美衆院議員の衆院選支援をめぐり、北海道教職員組合(北教組)幹部らが違法な選挙資金を提供したなどとして逮捕された政治資金規正法違反事件も取り上げられた。

事件は教職員団体が、組合ぐるみで違法行為に加担していた様相を呈している。一選挙区の選挙違反にとどまらず、日教組と民主党の関係も含めた徹底した疑惑解明が必要である。

鳩山由紀夫首相は予算委で「日教組を含め労働組合の応援は感謝したいが、やや偏向した考え方を変えないとか、法に違反した行為を行っていることは許されない」と述べた。また、教職員の政治活動などを定める教育公務員特例法の罰則適用にも言及した。教員の政治的行為の制限を実効あるものにする法改正は、教育現場の正常化のためにも急務といえる。

だが一方で、首相は小林氏の議員辞職などについては、「出処進退は本人の意思の問題だ」と明確な判断を避けた。山梨県教組出身の輿石東参院議員会長にいたっては、「コメントする必要はない」などと突っぱねている。

党として小林氏の責任を問わないことで、国民の理解は得られるのだろうか。選挙における「労組丸抱え」の実態を認め、問題にしないこととなる。

今国会では、政治資金問題の当事者である首相と小沢一郎民主党幹事長が、いまだに十分な説明責任を果たしておらず、国政調査権に基づく関係者の国会招致も実現していない。

その一方で、民主党や公明党を中心に「政治とカネ」の問題を与野党協議機関を設けて論議する構想が浮上している。企業・団体からの献金廃止のほか、資金管理団体の会計責任者に対する国会議員の監督責任を強化する法改正などが対象だ。

政治資金の透明化には不断の見直しが必要で、与野党の話し合いの場を設ける意義は小さくない。だが、その作業は現実に起きている事件の真相解明に置き換えられるものでもあるまい。

民主党の自浄能力の欠如が、国民の信を失う結果につながっていることは、地方選挙の結果などを見ても明らかだ。まずは国会での関係者の証人喚問を実現し、さらには政治的、道義的責任論に基づいて進退を明らかにすることこそ先決である。

朝日新聞 2010年03月03日

予算案通過 借金中毒にもほどがある

とても素直に喜べない。新年度予算の成立にめどはついたが、財政の先行きがますます不安だ。

一般会計総額92兆円は、当初予算で過去最大。新規国債発行額は税収を上回り44兆円にのぼる。借金中毒のような財政の姿がここにある。

こうまでひどくなった最大の理由は世界同時不況による税収の激減と、危機克服のための対策だ。新政権の公約実現への施策も無視できない。

子ども手当の半額支給や高速道路の一部無料化などが盛られ、歳出額が膨れあがった。政権公約の実現には恒久的な財源が必要だ。それをあえて直視しないで国債増発に頼っているとしか見えない。

「政治がいつまでも増税の検討を先送りし続ければ、いずれ国債が暴落しかねない」。市場関係者の間で、そんな話さえ出ている。米国の有力格付け会社が日本国債の格付け引き下げの可能性を示唆している。ギリシャの財政危機は対岸の火事ではない。

企業の資金需要が乏しく、銀行などの余剰資金が国債に向かっている今は、国債の市中消化は困難ではない。だが、これからは先行きへの懸念が市場に強まるだろう。

鳩山由紀夫首相には、そうした危機感が乏しすぎるのではないか。「子ども手当の満額支給」などの旗はいまだ降ろしていないが、このままでは2011年度予算はさらに国債を増発することが必要になる。政権公約の工程表を大幅に見直すなどして歳出の膨張に歯止めをかけねばならない。

米オバマ政権は、新しい施策で財源が必要になったら、それに見合う歳出削減や増税を義務づける法律を先月成立させた。鳩山政権も同様の原則をつくるべきではないだろうか。

事業仕分けなどを通じて歳出のムダを削ることは確かに大事だ。しかし3兆円の削減をめざした昨年の事業仕分けで削減できたのは7千億円程度だった。40兆~50兆円規模で足りない財政をムダ削減だけで再建しようというのは、どだい無理な話だ。

とくに、社会保障のほころびを直し、充実させていくには税負担を引き上げることが避けられない。大事なのは、この現実を認めることだ。

菅直人副総理兼財務相は先月、消費税を含む税制改正の議論に入る方針を示した。鳩山政権は6月にも「中期財政フレーム」や「財政運営戦略」をまとめる。そこで財政再建の意思をしっかり打ち出すべきだ。

デフレを脱却したら消費増税を柱とする税制改革に踏み切れるよう、今から準備を進めることが肝心だ。

政治が財政の持続性への決意と展望を示す。それが国民と市場の不安を和らげ、消費や投資の背中を押す。菅氏を中心に議論を急いでもらいたい。

毎日新聞 2010年03月02日

北教組幹部逮捕 民主の体質が問われる

「政治とカネ」の問題で、民主党には三重の打撃となった。

鳩山由紀夫首相の偽装献金事件、小沢一郎幹事長の資金管理団体をめぐる収支報告書の虚偽記載事件に続き、民主党の支持団体である労組が絡んだ事件が新たに展開した。

小林千代美衆院議員=北海道5区=の陣営が、昨年8月の衆院選前に北海道教職員組合(北教組)から1600万円の違法な資金提供を受けたとして、北教組の委員長代理や書記長ら4人が札幌地検に逮捕されたのである。

政治資金規正法は、企業や労組が政党支部や政治資金団体に献金することは認めているが、政治家個人や後援会への献金は禁止している。党支部の政治資金収支報告書などには、北教組からの献金の記載はなかった。資金は選対の裏口座に入れられていたといい、いわゆる裏献金だったとみられている。

小林陣営は、選挙期間が長引き、資金繰りに困っていたとされる。その陣営の選対委員長を務めていたのが、資金提供に直接かかわったとされる北教組委員長(故人)だ。

北教組側はこれまで「適切に会計処理している」と言い続けてきた。だが、逮捕された小林陣営の会計責任者で自治労北海道本部幹部は、1600万円の受け取りを認めている。北教組は、このまま捜査の推移をながめるだけでは済むまい。

そもそも公立校の教員は政治的な中立性が求められ、教育公務員特例法などによって選挙運動などにかかわることは禁止されている。

だが、教組に絡む事件は初めてではない。04年の参院選で、山梨県教組幹部らが、民主党の輿石東参院議員会長支援のために集めた寄付金を政治団体の収支報告書に記載せず罰金の略式命令を受けた。日教組は自浄能力を発揮して、まず自ら全国調査をし、きちんと説明してほしい。

「労組丸抱え」は、小林陣営だけだったのか。民主党の体質も改めて問われよう。

民主党はまず、事件について事実関係の究明に早急に着手すべきだ。鳩山首相や小沢幹事長の事件では党で事実解明する動きがほとんどみられず批判を浴びた。支持組織である労組との癒着が疑われる今回のケースでそれは許されまい。

その上で、政権公約でもある企業・団体献金禁止の実現に向けて動くべきだ。現在、法改正の動きは鈍いが、野党とも協議しながら今国会で早急に議論を詰めてほしい。

1600万円の原資の解明と、他に資金提供を受けた陣営がないかが当面の捜査の焦点だ。事実関係を「知らない」と言ってきた小林氏も説明が必要なのは言うまでもない。

読売新聞 2010年03月02日

北教組幹部逮捕 違法献金の実態を洗い出せ

これでも教職員の団体だろうか。札幌地検が、北海道教職員組合の幹部ら4人を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。

容疑は、昨年8月の衆院選で北海道5区から立候補し、当選した民主党の小林千代美議員の選挙に絡むものだ。

鳩山首相、小沢民主党幹事長に続く、「政治とカネ」の疑惑である。資金の流れはもちろん、教職員組合の活動実態についても徹底的に解明する必要がある。

小林氏陣営の選挙対策委員長を務めていた北教組の委員長代理らは、選対の資金管理を統括していた男性に、4回にわたって計1600万円を選挙資金として渡した疑いが持たれている。

政治資金規正法では、企業・団体から政党や政治資金団体以外への献金を禁じている。札幌地検では、資金は小林氏のためのもので違法な団体献金とみている。

小林氏陣営の選対委員長は北教組委員長が務めていたが、選挙前に死亡し、委員長代理が引き継いだ。逮捕容疑では北教組委員長との共謀も認定しており、事実なら組織ぐるみだ。原資に北教組の裏金が充てられた可能性もある。

北教組は民主党の有力支持団体日本教職員組合の傘下にある。組合員は約1万9000人で、組織率こそ34%に下がっているが、選挙時の結束は固い。

北海道5区は自民党の町村信孝元官房長官の牙城で、北教組が小林氏を全面支援し、昨年の衆院選では町村氏に大差をつけた。

公立校教員は政治的な中立性を保つため、教育公務員特例法などで国家公務員と同様、選挙運動など政治的行為を制限されている。地元だけの行為が規制される他の地方公務員との違いである。

ただ、罰則については、国家公務員にはあるが、地方公務員は教員も含めて適用されない。

1日の衆院予算委員会では、自民党議員が、元北教組組合員の証言を基に支持者集めのノルマなどがあるとして、過剰な活動の一端を指摘し、教員の政治的行為について罰則を設けるよう求めた。

鳩山首相も川端文部科学相に検討させることを表明した。

北海道教育委員会や文科省は、厳正な調査を尽くし、まず実態を把握すべきである。教組との()れ合いが疑われるようでは困る。

北教組や小林氏も自ら事実関係を調べ、明らかにすべきだ。

政府・与党は政権公約で企業・団体献金の禁止を掲げ、法改正にも前向きだが、自身の問題で説明責任を果たすことが先決だ。

産経新聞 2010年03月03日

予算案衆院通過 利益誘導政治を憂慮する

行政の透明性向上はどこへ行ったのか。民主党が予算に関する情報を恣意(しい)的に独占し、利益誘導を図っている実態が浮き彫りになっている。

平成22年度予算案が衆院を通過した2日、鳩山由紀夫首相は公共事業の「個所付け」情報が国土交通省から民主党を通じて自治体に漏れていた問題で、前原誠司国交相を口頭で注意した。

最も軽い処分だが、この決着はおかしい。情報を外部に伝えたのは党であり、小沢一郎幹事長の下で幹事長室が主導した。小沢氏や党側に対応改善を求めるのが筋だろう。「政治とカネ」の問題と同様、臭いものにふたをする姿勢はきわめて残念だ。

個々の道路や河川などの工事予算を割り振る個所付けの情報は、自民党政権時代にも族議員を通じて政府から党へと流れ、予算成立後、個々の国会議員が地元の自治体に伝えていた。

民主党を厳しく批判する背景には、長年、地元自治体を引きつける手段としてきた情報を奪われたことへの焦りもあるだろう。

だが、民主党のやり方は徹底している。昨年、民主党は都道府県連などの地方組織を窓口とし、幹事長室で一本化して陳情を受け付けるルールを公表した。

陳情のルートを逆にたどるかたちで、個所付け情報が地方組織を経由して自治体に流された。予算案審議が始まらない段階での伝達は、国会軽視との批判もある。

22年度の公共事業の予算配分では、仮配分の総額が昨年末の国交省概算要求額より約600億円増えている。前原氏は、陳情と増額は直接結びついていないと説明するが、増額された203事業のうち149事業に民主党県連が介在している。

公共事業費は21年度当初比で18%減った。自治体にとり陳情が通って配分額が増えることのありがたみは大きい。そこにつけ込む姿勢を「党ぐるみの利益誘導」と、野党ばかりか社民、国民新などの与党も批判している。

このほか、先の長崎県知事選では、石井一民主党選対委員長が「時代に逆行する選択をするなら、民主党政権は長崎に対しそれなりの姿勢を示す」と有権者を恫喝(どうかつ)して推薦候補への投票を求めるような発言をした。金権政治ともいえる「古い体質」と幹事長への権力集中に対する批判を民主党は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

産経新聞 2010年03月02日

北教組幹部ら逮捕 公金流用の悪質さ解明を

北海道教職員組合(北教組)の幹部らが、民主党の小林千代美衆院議員の陣営に違法に選挙資金を提供したとして札幌地検に政治資金規正法違反容疑で逮捕された。

政治的中立が求められる教職員の団体が選挙の集金組織となり、本来教育の質向上に使われるべき税金の「主任手当」が裏金としてプールされ流用された疑いがある。事実とすれば悪質であり、教組の違法な資金提供について徹底解明してもらいたい。

北教組側の逮捕者には、委員長代理の長田秀樹容疑者や書記長が含まれる。長田容疑者は昨年8月の衆院選で小林陣営の選対委員長を務めていた。組合ぐるみで特定政党の政治家を支援し、違法献金を重ねていたのである。

さらに問題なのは、小林陣営への違法な選挙費用に充てられた疑いがもたれている「主任手当」は、「教務主任」や「学年主任」などを担当した教員個人に支給される公金であることだ。北教組では主任教員である組合員に拠出させ、プールしていたという。この金を北海道教育委員会に返還し、道教委がその都度、北教組に返送していた時期もある。

教育公務員特例法で、教職員の政治活動、選挙運動は禁じられている。だが罰則規定がないこともあり、北教組では教職員を動員した違法な選挙活動を行っている問題が以前から指摘されていた。

今回の事件発覚後も、北教組が家宅捜索を受けた2月15日付で北教組石狩支部が「捜査状況を見守る」とした上で、これまで同様に選挙運動強化を求める内部文書を出していた。

組合ぐるみの選挙は北教組だけの問題ではない。過去に日教組傘下の山梨県教組で同教組出身の民主党の輿石東氏(現参院議員会長)を支援するため、組合員から寄付金を集める政治資金規正法違反事件があった。

今回の事件で小林議員本人は「知らなかった」などとし、職にとどまっている。民主党は鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長をめぐる規正法違反事件で全く自浄能力を示さなかったが、新たに浮上した教組の裏金について調査と説明が求められる。

平野博文官房長官は、今回の北教組幹部逮捕を「極めて遺憾」としながら「個別の事案」としてコメントしなかった。民主党の重要な支持母体である教組の不正に知らないふりは通用しない。

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