朝日新聞 2010年03月03日
予算案通過 借金中毒にもほどがある
とても素直に喜べない。新年度予算の成立にめどはついたが、財政の先行きがますます不安だ。
一般会計総額92兆円は、当初予算で過去最大。新規国債発行額は税収を上回り44兆円にのぼる。借金中毒のような財政の姿がここにある。
こうまでひどくなった最大の理由は世界同時不況による税収の激減と、危機克服のための対策だ。新政権の公約実現への施策も無視できない。
子ども手当の半額支給や高速道路の一部無料化などが盛られ、歳出額が膨れあがった。政権公約の実現には恒久的な財源が必要だ。それをあえて直視しないで国債増発に頼っているとしか見えない。
「政治がいつまでも増税の検討を先送りし続ければ、いずれ国債が暴落しかねない」。市場関係者の間で、そんな話さえ出ている。米国の有力格付け会社が日本国債の格付け引き下げの可能性を示唆している。ギリシャの財政危機は対岸の火事ではない。
企業の資金需要が乏しく、銀行などの余剰資金が国債に向かっている今は、国債の市中消化は困難ではない。だが、これからは先行きへの懸念が市場に強まるだろう。
鳩山由紀夫首相には、そうした危機感が乏しすぎるのではないか。「子ども手当の満額支給」などの旗はいまだ降ろしていないが、このままでは2011年度予算はさらに国債を増発することが必要になる。政権公約の工程表を大幅に見直すなどして歳出の膨張に歯止めをかけねばならない。
米オバマ政権は、新しい施策で財源が必要になったら、それに見合う歳出削減や増税を義務づける法律を先月成立させた。鳩山政権も同様の原則をつくるべきではないだろうか。
事業仕分けなどを通じて歳出のムダを削ることは確かに大事だ。しかし3兆円の削減をめざした昨年の事業仕分けで削減できたのは7千億円程度だった。40兆~50兆円規模で足りない財政をムダ削減だけで再建しようというのは、どだい無理な話だ。
とくに、社会保障のほころびを直し、充実させていくには税負担を引き上げることが避けられない。大事なのは、この現実を認めることだ。
菅直人副総理兼財務相は先月、消費税を含む税制改正の議論に入る方針を示した。鳩山政権は6月にも「中期財政フレーム」や「財政運営戦略」をまとめる。そこで財政再建の意思をしっかり打ち出すべきだ。
デフレを脱却したら消費増税を柱とする税制改革に踏み切れるよう、今から準備を進めることが肝心だ。
政治が財政の持続性への決意と展望を示す。それが国民と市場の不安を和らげ、消費や投資の背中を押す。菅氏を中心に議論を急いでもらいたい。
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毎日新聞 2010年03月02日
北教組幹部逮捕 民主の体質が問われる
「政治とカネ」の問題で、民主党には三重の打撃となった。
鳩山由紀夫首相の偽装献金事件、小沢一郎幹事長の資金管理団体をめぐる収支報告書の虚偽記載事件に続き、民主党の支持団体である労組が絡んだ事件が新たに展開した。
小林千代美衆院議員=北海道5区=の陣営が、昨年8月の衆院選前に北海道教職員組合(北教組)から1600万円の違法な資金提供を受けたとして、北教組の委員長代理や書記長ら4人が札幌地検に逮捕されたのである。
政治資金規正法は、企業や労組が政党支部や政治資金団体に献金することは認めているが、政治家個人や後援会への献金は禁止している。党支部の政治資金収支報告書などには、北教組からの献金の記載はなかった。資金は選対の裏口座に入れられていたといい、いわゆる裏献金だったとみられている。
小林陣営は、選挙期間が長引き、資金繰りに困っていたとされる。その陣営の選対委員長を務めていたのが、資金提供に直接かかわったとされる北教組委員長(故人)だ。
北教組側はこれまで「適切に会計処理している」と言い続けてきた。だが、逮捕された小林陣営の会計責任者で自治労北海道本部幹部は、1600万円の受け取りを認めている。北教組は、このまま捜査の推移をながめるだけでは済むまい。
そもそも公立校の教員は政治的な中立性が求められ、教育公務員特例法などによって選挙運動などにかかわることは禁止されている。
だが、教組に絡む事件は初めてではない。04年の参院選で、山梨県教組幹部らが、民主党の輿石東参院議員会長支援のために集めた寄付金を政治団体の収支報告書に記載せず罰金の略式命令を受けた。日教組は自浄能力を発揮して、まず自ら全国調査をし、きちんと説明してほしい。
「労組丸抱え」は、小林陣営だけだったのか。民主党の体質も改めて問われよう。
民主党はまず、事件について事実関係の究明に早急に着手すべきだ。鳩山首相や小沢幹事長の事件では党で事実解明する動きがほとんどみられず批判を浴びた。支持組織である労組との癒着が疑われる今回のケースでそれは許されまい。
その上で、政権公約でもある企業・団体献金禁止の実現に向けて動くべきだ。現在、法改正の動きは鈍いが、野党とも協議しながら今国会で早急に議論を詰めてほしい。
1600万円の原資の解明と、他に資金提供を受けた陣営がないかが当面の捜査の焦点だ。事実関係を「知らない」と言ってきた小林氏も説明が必要なのは言うまでもない。
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読売新聞 2010年03月02日
北教組幹部逮捕 違法献金の実態を洗い出せ
これでも教職員の団体だろうか。札幌地検が、北海道教職員組合の幹部ら4人を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。
容疑は、昨年8月の衆院選で北海道5区から立候補し、当選した民主党の小林千代美議員の選挙に絡むものだ。
鳩山首相、小沢民主党幹事長に続く、「政治とカネ」の疑惑である。資金の流れはもちろん、教職員組合の活動実態についても徹底的に解明する必要がある。
小林氏陣営の選挙対策委員長を務めていた北教組の委員長代理らは、選対の資金管理を統括していた男性に、4回にわたって計1600万円を選挙資金として渡した疑いが持たれている。
政治資金規正法では、企業・団体から政党や政治資金団体以外への献金を禁じている。札幌地検では、資金は小林氏のためのもので違法な団体献金とみている。
小林氏陣営の選対委員長は北教組委員長が務めていたが、選挙前に死亡し、委員長代理が引き継いだ。逮捕容疑では北教組委員長との共謀も認定しており、事実なら組織ぐるみだ。原資に北教組の裏金が充てられた可能性もある。
北教組は民主党の有力支持団体日本教職員組合の傘下にある。組合員は約1万9000人で、組織率こそ34%に下がっているが、選挙時の結束は固い。
北海道5区は自民党の町村信孝元官房長官の牙城で、北教組が小林氏を全面支援し、昨年の衆院選では町村氏に大差をつけた。
公立校教員は政治的な中立性を保つため、教育公務員特例法などで国家公務員と同様、選挙運動など政治的行為を制限されている。地元だけの行為が規制される他の地方公務員との違いである。
ただ、罰則については、国家公務員にはあるが、地方公務員は教員も含めて適用されない。
1日の衆院予算委員会では、自民党議員が、元北教組組合員の証言を基に支持者集めのノルマなどがあるとして、過剰な活動の一端を指摘し、教員の政治的行為について罰則を設けるよう求めた。
鳩山首相も川端文部科学相に検討させることを表明した。
北海道教育委員会や文科省は、厳正な調査を尽くし、まず実態を把握すべきである。教組との馴れ合いが疑われるようでは困る。
北教組や小林氏も自ら事実関係を調べ、明らかにすべきだ。
政府・与党は政権公約で企業・団体献金の禁止を掲げ、法改正にも前向きだが、自身の問題で説明責任を果たすことが先決だ。
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産経新聞 2010年03月03日
予算案衆院通過 利益誘導政治を憂慮する
行政の透明性向上はどこへ行ったのか。民主党が予算に関する情報を恣意(しい)的に独占し、利益誘導を図っている実態が浮き彫りになっている。
平成22年度予算案が衆院を通過した2日、鳩山由紀夫首相は公共事業の「個所付け」情報が国土交通省から民主党を通じて自治体に漏れていた問題で、前原誠司国交相を口頭で注意した。
最も軽い処分だが、この決着はおかしい。情報を外部に伝えたのは党であり、小沢一郎幹事長の下で幹事長室が主導した。小沢氏や党側に対応改善を求めるのが筋だろう。「政治とカネ」の問題と同様、臭いものにふたをする姿勢はきわめて残念だ。
個々の道路や河川などの工事予算を割り振る個所付けの情報は、自民党政権時代にも族議員を通じて政府から党へと流れ、予算成立後、個々の国会議員が地元の自治体に伝えていた。
民主党を厳しく批判する背景には、長年、地元自治体を引きつける手段としてきた情報を奪われたことへの焦りもあるだろう。
だが、民主党のやり方は徹底している。昨年、民主党は都道府県連などの地方組織を窓口とし、幹事長室で一本化して陳情を受け付けるルールを公表した。
陳情のルートを逆にたどるかたちで、個所付け情報が地方組織を経由して自治体に流された。予算案審議が始まらない段階での伝達は、国会軽視との批判もある。
22年度の公共事業の予算配分では、仮配分の総額が昨年末の国交省概算要求額より約600億円増えている。前原氏は、陳情と増額は直接結びついていないと説明するが、増額された203事業のうち149事業に民主党県連が介在している。
公共事業費は21年度当初比で18%減った。自治体にとり陳情が通って配分額が増えることのありがたみは大きい。そこにつけ込む姿勢を「党ぐるみの利益誘導」と、野党ばかりか社民、国民新などの与党も批判している。
このほか、先の長崎県知事選では、石井一民主党選対委員長が「時代に逆行する選択をするなら、民主党政権は長崎に対しそれなりの姿勢を示す」と有権者を恫喝(どうかつ)して推薦候補への投票を求めるような発言をした。金権政治ともいえる「古い体質」と幹事長への権力集中に対する批判を民主党は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
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