日米電話会談 「同盟基軸」を行動で示せ

読売新聞 2009年09月04日

鳩山対米外交 信頼構築へ言動が問われる

日米の信頼関係を築くには、「言葉」だけでなく「行動」が肝心だ。

民主党の鳩山代表がオバマ米大統領との電話会談で「日米同盟が基軸」との意向を表明し、未来志向の関係を築くことで一致した。ジョン・ルース駐日大使との会談でも、日米関係の強化を確認した。

民主党の衆院選勝利後早々の大統領からの電話や大使の表敬訪問は、米政府が日本を重視すると同時に、今後の日米関係を心配しているため、と見るべきだろう。

というのも、米紙に最近掲載された鳩山代表の論文が、「反米的だ」などと米側に受け止められ、波紋を広げているからだ。

論文には、「日本は米国主導の市場原理主義に翻弄(ほんろう)され続け、人間の尊厳が失われた」「米国の政治的、経済的行き過ぎは抑制したい」といった表現がある。

鳩山代表は「反米的な考え方を示したものでない」と説明する。だが、論文が米国批判を含み、結果的に「反米的」との印象を与えた事実は否定できない。

米側の反応の背景には、インド洋での海上自衛隊の給油活動への反対や、在日米軍再編の見直しなど、従来の民主党の主張に対する不信感の蓄積もあるだろう。

鳩山代表は、もはや単なる野党党首でなく、次期首相の立場だ。その発言の重みを自覚し、行動することが求められる。

野党時代のように、政府・与党との違いを強調することばかりに固執すべきではない。継承すべき政策はしっかりと継承し、むしろ発展させる発想が大切だ。

今月下旬の国連総会に合わせた初の日米首脳会談、10月にゲーツ国防長官来日、11月にオバマ大統領来日と、重要な外交日程が続く。最初は、日米同盟の重要性を「言葉」で確認すればいいが、それだけではすまされない。

テロとの戦い、北朝鮮の核、在日米軍再編、世界経済の回復など日米が連携して取り組むべき重要課題は多い。日本は、問題解決のためにどんな役割を果たすのか。例えば給油活動を中止するなら、具体的な代案を示すべきだ。

民主党は社民、国民新両党との連立政権協議で、「緊密で対等な日米同盟関係」を合意文書に盛り込むよう提案している。従来以上に米国に注文する狙いだろう。

だが、物を言う以上は、当然、日本が相応の国際的な責任を担う覚悟を忘れてはなるまい。

鳩山代表が再三口にする「オバマ大統領との信頼関係」は、「行動」なしに実現しない。

産経新聞 2009年09月04日

日米電話会談 「同盟基軸」を行動で示せ

民主党の鳩山由紀夫代表がオバマ米大統領と初の電話会談を行い、「日米同盟を基軸と考え、未来志向で日米関係を発展させたい」と伝えた。

鳩山氏の首相就任を前に、日米安保条約体制(日米同盟)の堅持で両者が一致したことは、当然の第一歩としてまずは歓迎したい。と同時に、鳩山氏には民主党の外交安保政策や同盟の将来に関して米側でも懸念が高まっていることをしっかり認識してもらいたい。同盟の強化発展を現実の政策と行動で示していく必要がある。

鳩山氏と民主党は「緊密で対等な日米同盟」を掲げてきたが、内容は不明確とされてきた。とくに昨年末以降、海上自衛隊のインド洋補給支援活動停止▽普天間飛行場など沖縄米軍施設・部隊の県外移転要求▽日米地位協定の見直し−などの方針について、米国の超党派の知日派からも「反米・反同盟とみなされる」と警告されてきたのは周知の通りだ。

こうした不安をさらに高めたのは、総選挙直前に「日本の新たな道」と題して米紙に掲載された鳩山氏の署名論文だった。「日米同盟は基軸」としながら、「イラク戦争の失敗」や「市場原理主義」批判が目立ち、2大紙のワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズが社説で「北朝鮮の脅威が高まる中で米国と決別を求めるなら危険すぎる」「インド洋の補給支援活動は来春まで続けるべきだ」などと忠告した。

オバマ政権の複数の高官が「日本が同盟を離れて漂流してしまうのではないか」「日米が予測不能な時代に入る」などと心配しているとも伝えられている。

鳩山氏は「論文は抄訳で、日本語の原文を読めば反米ではない」と説明している。そうであっても、首相指名よりも前に同盟相手国のメディアや当局者、専門家らからこうした懸念を突きつけられた事実は重い。

11月にオバマ大統領が訪日し、来年6月には現行安保条約発効50周年を迎える。北の脅威、中国の海洋進出、テロとの戦いへの貢献など日本の安全保障環境は激変しつつある。同盟の強化と発展が今ほど必要な時はない。その中で、米側からも噴出してきた懸念に鳩山氏はどう答えるのか。

同盟の基盤は信頼の深さや具体的政策で問われる。鳩山氏は現実路線を確立し、同盟基軸を両国民に行動で見せてほしい。

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