甘利氏の疑惑 全容解明の責任果たせ

朝日新聞 2016年01月22日

甘利氏の疑惑 全容解明の責任果たせ

甘利経済再生相に、現金のやりとりがからむ重大な疑惑が浮上した。

甘利氏はきのうの参院決算委員会での野党の追及に、「調査して、説明責任を果たしていきたい」と答えた。当然である。事実関係を徹底的に調べ、包み隠さず説明する責任が、甘利氏にはある。

週刊文春が報じた疑惑は、甘利氏と衆院神奈川13区の地元事務所の秘書が、千葉県の建設会社側から総額1200万円の現金や飲食接待を受けていた疑いがあるというものだ。

建設会社の総務担当者は、社の隣接地の道路建設をめぐる独立行政法人都市再生機構(UR)との補償交渉にあたり、甘利事務所に口利きを依頼。現金や接待は、その見返りだとするコメントを出した。

報道によれば、会社側は大臣室と地元事務所で現金50万円ずつ計100万円を甘利氏に直接手渡したという。

甘利氏はきのうの答弁で、建設会社の社長らに会ったことは認めたが、現金のやりとりなどについては「そこで何の話をされて、どういうことをされたのか、いま事実関係は記憶をたどっているところだ」と、あいまいな説明を繰り返した。

それ以外の報道内容については「初めて知った」「半信半疑で、ウソじゃないかと思った」などというばかりだ。

事実であれば、国会で野党議員が指摘したように、政治資金規正法だけでなく、あっせん利得処罰法に反する疑いがある重大な事案である。

甘利氏は第三者を交えて調査するというが、ごまかしは決して許されない。

安倍政権では、小渕優子氏や松島みどり氏らが「政治とカネ」の疑惑で相次いで閣僚を辞任した。いまの内閣でも高木復興相の選挙区内での香典支出問題がくすぶっている。

甘利氏は、2006年以来、安倍内閣で経済関係の閣僚を歴任し、いまは成長戦略や環太平洋経済連携協定(TPP)を担当している。安倍内閣の経済政策の要であり、首相の側近中の側近と言っていい。

首相は甘利氏の疑惑について、きのうの国会で「政治家として説明責任を果たしていくと確信している」と語った。

事実関係を明らかにするのは一義的には甘利氏の責任であるとしても、週刊文春の記事にはURを所管する国土交通省の局長についての記述も出てくる。

政権の姿勢が問われる事態だ。首相は内閣を挙げて全容解明の努力をする必要がある。

読売新聞 2016年01月23日

甘利氏献金報道 疑惑解明へ説明から逃げるな

安倍政権の経済政策の司令塔役である甘利経済再生相に、政治とカネを巡る疑惑が浮上した。

甘利氏は、早急に実態を解明し、きちんと説明せねばならない。

疑惑は、週刊文春が報道した。甘利氏や秘書が、土地トラブルの補償を巡る口利きの見返りとして千葉県白井市の建設会社から違法献金を受けたというものだ。

都市再生機構(UR)との補償交渉には、秘書が関与したとされる。2013年11月に甘利氏が大臣室で50万円を受け取るなど、甘利氏側への資金提供や接待は計1200万円に上るという。

仮に口利きや現金授受が事実ならば、重大な問題だ。あっせん利得罪や政治資金規正法違反などに問われる可能性がある。

甘利事務所と建設会社はどんな関係で、秘書は補償交渉にどう関わったのか。献金の実態はどうだったのか。これらについて、事実関係を詳しく調査し、納得のいく説明を行うべきである。

甘利氏は秘書の疑惑について、専門家を交えて検証する考えを示した。その内容次第では、秘書に対する監督責任も問われよう。

甘利氏は記者会見で、「法に反する行為はしていない」と明言した。ただ、建設会社関係者との面会は認め、「記事と私の記憶が違うところが何点かある」と語るなど、報道の一部は肯定している。これでは疑惑は払拭されない。

自らの現金授受に関して「1週間以内に記憶を確認してお話しできる」と強調した。発言通り、説明責任を果たす必要がある。

甘利氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の責任者で、2月4日にはTPP署名式が予定される。今国会でのTPP関連法案の審議でも、専ら答弁に立つ。

今回の献金疑惑がTPP法案の審議に影響を与えることは最小限にとどめる必要がある。

「政治とカネ」の問題では、12年12月の第2次安倍内閣の発足以来、小渕優子経済産業相ら閣僚3人が辞任している。

甘利氏は、経済政策「アベノミクス」を担当し、菅官房長官らとともに、内閣の中核を担う主要閣僚である。今回の疑惑は、過去の「政治とカネ」の問題と比べても重く、展開次第では安倍政権の屋台骨を揺るがしかねない。

安倍首相は、甘利氏に対応を任せ、「説明責任を果たしてくれると確信している」と語った。夏に参院選を控えて、安倍政権に暗雲が漂い始めているとの厳しい自覚と緊張感を持つ必要がある。

産経新聞 2016年01月22日

政治とカネ 甘利氏は明確に説明せよ

甘利明経済再生担当相は安倍晋三首相の最側近の一人であり、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を一身に担う重要閣僚である。その甘利氏に「政治とカネ」の問題が浮上した。

参院決算委員会で野党から追及された甘利氏は「記憶があいまい」「正確に把握して説明する」などと答えながら、「政治とカネ」の問題は「一切ない」と断言し、「職務を全うしたい」と強調した。矛盾していないか。

夜の会見でも明確な説明をしなかった。疑惑を否定し、職務の継続について述べるのは、説明責任を果たした後であろう。

週刊文春の記事によれば、千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)との間に生じた補償交渉の口利きの見返りに、建設会社側の関係者から甘利氏側に計1200万円の現金授与や飲食接待があったとされる。甘利氏本人にも大臣室などで、計100万円が手渡されたと報じられている。

事実なら、国会議員や秘書が権限に基づく影響力を行使した口利きの見返りに報酬を得ることを禁じた、あっせん利得処罰法に抵触する。UR側は口利きはなかったと否定しているが、その事実もなくこれを理由に金品を受け取っていれば、詐欺行為である。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2397/