安倍政権の経済政策の司令塔役である甘利経済再生相に、政治とカネを巡る疑惑が浮上した。
甘利氏は、早急に実態を解明し、きちんと説明せねばならない。
疑惑は、週刊文春が報道した。甘利氏や秘書が、土地トラブルの補償を巡る口利きの見返りとして千葉県白井市の建設会社から違法献金を受けたというものだ。
都市再生機構(UR)との補償交渉には、秘書が関与したとされる。2013年11月に甘利氏が大臣室で50万円を受け取るなど、甘利氏側への資金提供や接待は計1200万円に上るという。
仮に口利きや現金授受が事実ならば、重大な問題だ。あっせん利得罪や政治資金規正法違反などに問われる可能性がある。
甘利事務所と建設会社はどんな関係で、秘書は補償交渉にどう関わったのか。献金の実態はどうだったのか。これらについて、事実関係を詳しく調査し、納得のいく説明を行うべきである。
甘利氏は秘書の疑惑について、専門家を交えて検証する考えを示した。その内容次第では、秘書に対する監督責任も問われよう。
甘利氏は記者会見で、「法に反する行為はしていない」と明言した。ただ、建設会社関係者との面会は認め、「記事と私の記憶が違うところが何点かある」と語るなど、報道の一部は肯定している。これでは疑惑は払拭されない。
自らの現金授受に関して「1週間以内に記憶を確認してお話しできる」と強調した。発言通り、説明責任を果たす必要がある。
甘利氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の責任者で、2月4日にはTPP署名式が予定される。今国会でのTPP関連法案の審議でも、専ら答弁に立つ。
今回の献金疑惑がTPP法案の審議に影響を与えることは最小限にとどめる必要がある。
「政治とカネ」の問題では、12年12月の第2次安倍内閣の発足以来、小渕優子経済産業相ら閣僚3人が辞任している。
甘利氏は、経済政策「アベノミクス」を担当し、菅官房長官らとともに、内閣の中核を担う主要閣僚である。今回の疑惑は、過去の「政治とカネ」の問題と比べても重く、展開次第では安倍政権の屋台骨を揺るがしかねない。
安倍首相は、甘利氏に対応を任せ、「説明責任を果たしてくれると確信している」と語った。夏に参院選を控えて、安倍政権に暗雲が漂い始めているとの厳しい自覚と緊張感を持つ必要がある。
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