施政方針演説 「挑戦」の具体策が問われる

朝日新聞 2016年01月23日

施政方針演説 「挑戦」というならば

甘利経済再生担当相の現金授受疑惑で与野党がざわつく中、安倍首相がきのう、施政方針演説に臨んだ。

首相が演説で掲げたキーワードは「挑戦」である。その対象として、世界経済の新しい成長、地方創生、1億総活躍、外交の4分野を挙げた。

その中で注目すべきは、この春にもまとめる「1億総活躍プラン」の中で、「同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えだ」と初めて明言したことだ。

同一労働同一賃金は、正規雇用と非正規雇用の賃金格差を正すため、民主党など野党や労働界が強く訴えてきた政策だ。一方で、経済界寄りの自民党が積極的だったとは言い難い。

その姿勢を一転させたのは、夏の参院選に向けて自民党としてより幅広い層にアピールするためには、不平等の是正や、成長の果実の分配にも目配りが必要だという思いなのだろう。

首相が本気で同一労働同一賃金の実現に向けて努力するのなら大いに結構だ。ただ、負担増となる企業とどう折り合いをつけるかなど、ハードルが高いのも事実だ。首相は「挑戦」すると言った以上、経営側への説得をはじめ、どう実現していくのか、具体策が問われる。

一方、首相は憲法改正について「私たち国会議員は正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく。その責任を果たしていこうではありませんか」と力を込めた。

首相はおとといの参院決算委員会では「いよいよどの条項について改正すべきか、新たな現実的な段階に移ってきた」と答弁。自民党が改憲の有力な論点としている「緊急事態条項」の新設についても「大切な課題」だと繰り返している。

首相にとって憲法改正は重要な「挑戦」なのだろう。いまから問題提起をしておくことで、参院選での議論の地ならしをする狙いもありそうだ。安保法制の時のように、選挙前はあまり語らず、選挙後に数の力で押し通そうとするよりは、まだわかりやすい。

半面、国民の人権や暮らしが脅かされるような不備がいまの憲法にあるのか、あるならばどう改正すべきなのか、そうした論点を首相は語っていない。緊急事態条項がそれにあたるのかどうかもはっきりしない。

ここは野党の出番である。

週明けから、国会は本格的な論戦に入る。甘利氏の疑惑などただすべき点は厳しく追及しつつ、首相が語ったこと、語っていないことの双方について、詰めた論戦を求めたい。

読売新聞 2016年01月23日

施政方針演説 「挑戦」の具体策が問われる

「いかなる困難な課題にも、果敢に挑戦する」「目標に向かって、諦めずに進む」――。

安倍首相は衆参両院での施政方針演説で、内政、外交の重要課題に正面から取り組む決意を強調した。大切なのは、安定した政権基盤を生かし、一つ一つ成果を上げることだ。

首相は、「1億総活躍社会」に関し、多様な働き方を可能にする改革を重視する考えを示した。

非正規労働者の処遇向上や正社員化を後押しし、雇用形態で賃金に差をつけない「同一労働同一賃金」の実現を目指すという。

人口減と高齢化を克服し、社会の活力を維持する。そのために、だれもが能力を発揮できる就労機会を用意する意義は大きい。

非正規労働者の賃金の底上げは急務である。無論、終身雇用を前提に、年功序列の賃金体系で働く正社員と、時間給を基本とする非正規労働者の処遇を直ちに同一にするのは、現実的ではない。漸進的な改革を進めるべきだろう。

定年延長に積極的な企業への支援や、妊娠などが理由の職場での嫌がらせの防止も進めたい。

首相は、家族の介護を理由に離職する人をゼロにするため、50万人分の介護サービスの受け皿を整備し、25万人の介護人材を育成すると表明した。「希望出生率1・8」を達成するため、9万人の保育士を確保するとも述べた。

「1億総活躍」関連の施策は多岐にわたる。工程表を明示し、整合性を取ることが重要だ。持続可能な社会保障制度にする観点から、負担増や給付抑制など「痛み」を伴う改革も避けてはならない。

外交面で首相は、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「先送りは許されない」と強調した。

辺野古移設は、米軍の抑止力を維持しつつ、基地周辺住民の負担を軽減する現実的な方策だ。地元関係者の理解を広げる努力を粘り強く続けねばならない。

韓国の位置づけについて、昨年の演説は「最も重要な隣国」だったが、今年は「戦略的利益を共有する」と加えた。昨年末の慰安婦問題の合意を踏まえたものだ。

北朝鮮の核実験強行で、米国を交えた日韓の防衛協力の重要性は増している。日韓両政府は、関係改善の流れを踏まえ、情報共有などで協力を具体化すべきだ。

首相は、憲法改正や衆院選挙制度改革について「逃げることなく答えを出していく」と明言した。いずれも与野党の合意形成が難しい課題だ。首相は節目節目で指導力を発揮せねばならない。

産経新聞 2016年01月23日

施政方針演説 眼前の危機もっと言及を

一番聞きたいのは、不透明さを増す世界の経済や安全保障情勢を安倍晋三内閣がどうとらえ、どう対処するのかへの言及だった。

施政方針演説で首相は成長と分配の好循環を掲げ、地方創生、1億総活躍、外交といった課題に挑戦すると強調した。

看板政策を掲げて国会に「現実を直視し、解決策を示し、そして実行する大きな責任がある」と呼び掛けたが、その中身には物足りなさもあった。

政権の最重要課題は経済に力強さを取り戻すことだ。だが、首相はアベノミクスの成果を訴える一方で、足元の厳しい経済情勢に対する認識には甘さが目立つ。

例えば新興国経済だ。ここに弱さがみられ成長にも限界があると指摘したのは妥当だが、「そのリスクが顕在化する前に世界が目指すべき新しい成長軌道を創らねばならない」と述べたのは悠長にすぎないか。今まさに、中国経済などのリスクが顕在化しているからこそ、世界の金融市場が年明けから大荒れなのである。

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