震災復興事業を食い物にするような不正は、到底許されない。
東京地検特捜部と公正取引委員会が、道路舗装各社を独占禁止法違反容疑で一斉捜索した。東日本大震災で被災した高速道路の復旧工事を巡って、談合を行い、利益を分け合った疑いが持たれている。
特捜部の事情聴取に対し、一部の業者は談合を認めているとされる。実態解明と厳正な責任追及が求められる。
談合の疑いがあるのは、東北自動車道などの復旧舗装工事12件だ。2011年に入札が行われ、12社が1件ずつ落札した。落札総額は176億円に上る。大手数社が「幹事社」となり、落札予定業者を割り振っていたという。
予定価格に対する落札額の割合(落札率)の平均は約95%で、震災前より大幅に上昇した。震災後は原材料費が高騰しており、各社が談合で落札額をつり上げ、利益の確保を狙ったと特捜部はみている。事実なら極めて問題だ。
東北各地を結ぶ高速道路は、被災地への支援物資を運ぶ大動脈であり、復旧が急がれていた。一部の業者は「早期の復興のため、落札業者が決まらない事態は避けたかった」と弁明している。
だが、各社は談合で、自社工場近くの工事を優先的に受注できるよう調整していた。震災復興に乗じて、各社が工事しやすい場所で利益を分配し合ったと批判されても仕方あるまい。
各社に支払われた工事費には、国の復興予算が充てられた。復興予算が所得増税によって賄われたことを忘れてはならない。
各社は入札前、発注者の東日本高速道路に、「談合をしない」という趣旨の誓約書を提出していた。その裏で行われた受注調整だけに悪質性は際立っている。
今回の事件は、企業の「なれ合い体質」を浮き彫りにした。
捜索対象には、大手ゼネコンの系列会社も含まれる。大手ゼネコンは05年、「談合決別宣言」を出したが、不正は繰り返された。「談合は必要悪」といった旧態依然の考え方が、根強く残っているのではないか。
談合やカルテルは、担当者が刑事責任を問われるほか、公取委から課徴金が科される。国際カルテルでは、海外で巨額の罰金や制裁金を支払わされる。公正な競争を歪める行為は高い代償を伴う。
談合の根絶には、各企業のトップが前面に立ち、社内研修を重ねるなどして、法令順守の意識を浸透させる必要がある。
この記事へのコメントはありません。