阪神大震災21年 教訓を緊急事態に生かせ

読売新聞 2016年01月17日

阪神大震災21年 記憶をいかに継承していくか

6434人が犠牲となった阪神大震災から、17日で21年が経過した。

「あの日」の記憶をいかに次代へつないでいくか。復興を遂げた被災地が抱える課題である。

神戸などで今年、市民が催す追悼行事は59件だ。昨年と比べてほぼ半減した。震災から15年だった2010年以降で最も少ない。

担い手の高齢化が背景にある。調査した市民団体によると、発生から20年の節目が過ぎたのを機に、運営方法を見直したり、中止を決めたりする動きが広がっている。「体力の限界」「後継者がいない」といった理由からだ。

被災地では、震災を体験していない人たちが増えた。神戸市民の4割超が、震災後の生まれか、他市町村からの転入者だ。

市街地には、被災当時の惨状を伝える震災遺構と言えるものは、ほとんど残っていない。市民に防災の重要性を伝えるための知恵と工夫が求められている。

神戸市は、横倒しになった阪神高速道路の高架など、地震発生直後の様子を撮影した写真を専用サイトに公開している。誰でもダウンロードして、二次利用できる。アクセス数は、開設から1年余りで約85万件に上る。

被災直後の様子と現在の街並みを写真で比較できるスマートフォンのアプリも開発されている。防災教育に活用したい。

被災体験を語り継ぐ人材の育成も重要である。

神戸市内の防災研究機関「人と防災未来センター」は、震災を知らない世代に新たな語り部として活動してもらう事業を始めた。

被災者から聞き取った内容を基に紙芝居を作成し、小学生に読み聞かせる。防災知識を楽しく学べるゲームを考案する。

「伝えることを通じて、自分の中でも防災意識が高まった」。参加した大学生らからは、心強い感想が寄せられている。

兵庫県立舞子高校に2002年、全国の高校で初めて環境防災科が設置された。生徒たちは、地震のメカニズムや災害ボランティアの活動状況などを学んでいる。消防士や防災関連のNPO職員として活躍する卒業生が多い。

4月には、宮城県立多賀城高校に災害科学科が新設される。東日本大震災の被災地で、地域防災のリーダーを育てるのが狙いだ。舞子高校との交流も進める。

今後も南海トラフ、首都直下などの大地震が発生する恐れがある。各地にも防災教育の拠点を整備していくことが必要だろう。

産経新聞 2016年01月17日

阪神大震災21年 教訓を緊急事態に生かせ

これはいつかあったこと。/これはいつかあること。/だからよく記憶すること。/だから繰り返し記憶すること。/このさき わたしたちが生きのびるために。

神戸市長田区在住で、被災した詩人の安水稔和さんはこうつづった。

6434人が犠牲となった阪神大震災から17日で21年が過ぎた。戦後最大の自然災害だったが、絶後ではなかったのは、5年前にさらに甚大な被害をもたらした東日本大震災が起きたことでわかる。

いつかまた、必ずやってくる。あの体験を忘れずに、次に備えなければいけない。

大規模な自然災害は国家の非常事態である。一昨年11月に亡くなった震災当時の兵庫県知事、貝原俊民さんは、著書で「阪神・淡路大震災において、わが国の危機管理についての多くの欠陥が露呈した」と指摘している。

貝原さんは県庁への登庁に時間がかかり、自衛隊への派遣要請が地震発生から4時間もたっていたため、助かる命を救えなかったと批判された。

「内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」(自衛隊法7条)村山富市首相も同様に非難された。長年、自衛隊を憲法違反としてきた社会党の委員長だったことから、出動を躊躇(ちゅうちょ)したのではとのうがった見方もあった。

だが、問題はこうした未曽有の緊急事態に即応する仕組みが整っていなかったことにある。

わが国の危機管理体制は分権型だった。戦後、警察は都道府県警になり、消防は市町村単位になった。災害対策も第一義的に自治体が担うことになっていた。

貝原さんは「過度に政府の力を期待することは自助努力を怠ることになり、かえって被害を拡大する恐れすらある」とするが、初動期は別だ。何よりスピードが求められ、生死を分ける。

「(立ち上がりが遅いという)分権社会の弱点を補強する仕組みが不十分であることに警告を発したといえよう」という言葉は、現場の責任者だっただけに重い。

都市型災害だった阪神大震災は、想定される首都直下型地震など大規模な自然災害やテロなどに大きな教訓を残した。

国民の生命と財産を守るため、一時的に権限を集めて機動的に対応する。憲法に緊急事態条項を定めるのは喫緊の課題である。

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