スキーバス事故 惨事には必ず原因がある

朝日新聞 2016年01月19日

夜行バス事故 生かされなかった教訓

ここまで法令違反が積み重なっていたことにあぜんとする。

15人が亡くなった長野県での夜行バス事故である。バス会社の運行管理のずさんさが次々と明らかになってきた。

過去の事故の教訓はなぜ生かされなかったのか。人命第一という当然の大原則を、業界全体が肝に銘じるべきだ。

事故は険しい峠道の下り坂で起きた。激安をうたうツアー会社が客を集め、業者を介してバスを確保する仕組みだった。

運転手2人は死亡しており、事故の直接の原因は分かっていない。だが、国土交通省の特別監査などで判明したバス会社の違法ぶりには驚かされる。

運転手の体調を出発前に確認しない▽にもかかわらず、書類に体調管理の済み印を押した▽運転手に健康診断を受けさせない▽休憩のタイミングなどを運行指示書に記さない――。

こんな違反がなかば常態化していた。命を預かっているという自覚が欠けているというほかない。国交省や警察は、厳しく対応すべきだ。

バス会社だけではない。ツアー会社は「今年は雪不足で客が少ない」として、国の定めた限度額を下回る運賃で提案し、バス会社も応じていた。この会社は、昨シーズンは基準の半額で引き受けていたという。

4年前に起きた関越道での夜行バスによる46人死傷事故を機に、国交省はバス会社が満たすべき安全基準を厳しくした。

同時に、安値を求める消費者心理に一定のブレーキをかけるために運賃の下限額も定めた。安全のためには相応のカネがかかるという前提だった。

しかし今回の事故は、この仕組みが「ザル化」している実態を浮き彫りにした。

規制緩和で、貸し切りバス事業者はこの十数年で1・5倍の約4500社に増えた。下請けのような立場である零細バス会社にとって、舞い込んできた依頼は断りにくい。運賃が下限割れしていても、バスを遊ばせているよりはましといった感覚もあるという。

そうした問題を防ぐはずの国交省の監査は、手が回りきっていない。予算や人員規模に限界があるとしても、チェック機能がゆるい問題は明らかだ。

たとえば、ツアーで使われるバス会社名やその処分歴などについて、もっと公開し、消費者の目を監視役にする。悪質な業者を退場させるには、そんな工夫もあっていい。

ずさんなバス運行を野放しにしない。官民、ユーザーをあげた真剣な方策が必要である。

読売新聞 2016年01月16日

スキーバス転落 運行管理は万全だったのか

またもツアーバスで悲惨な事故が起きた。安全対策は万全だったのか。徹底解明し、再発防止につなげねばならない。

長野県軽井沢町の国道18号バイパスで15日未明、大学生らのスキー客を乗せたバスが道路脇に転落した。運転手と交代要員を含む計14人が死亡し、26人が重軽傷を負った。

現場は緩やかな左カーブの下り坂で、積雪や路面の凍結はなかったという。事故の起きやすい条件ではなかったにもかかわらず、バスは対向車線にはみ出し、ガードレールを押し倒して転落した。

運転手に何があったのか。「運転が荒い」と感じた乗客もいる。崖下と道路の高低差は3メートルだが、被害は甚大だった。シートベルトの着用が乗客に徹底されていなかった可能性もある。

長野県警は捜査本部を設置し、東京のバス運行会社を捜索した。国土交通省も特別監査に乗り出した。運転手が死亡したことで、原因究明は難航も予想されるが、発生時の状況の解明が不可欠だ。

今回のツアーは、東京の旅行会社が企画し、14日深夜に都内を出発した。15日朝に長野県内のスキー場に到着する予定だった。

事故が発生したのは、一般道だ。行程表上、この区間は高速道を通行するはずだった。なぜルートを変更したのか。疑問点を明らかにすることで、原因に迫りたい。

過去のバス事故で度々指摘されてきたのが、運転手の過重労働だ。群馬県の関越自動車道で2012年、7人が死亡した事故では、睡眠不足のまま夜通し運転していたことが明らかになり、安全軽視の運行管理が社会問題化した。

夜間に1人で運行できる距離の上限や、1日の最長乗務時間、休憩の頻度など、この事故を契機に多くの規制が強化された。

今回の事故は出発の約3時間後に起きている。乗務前の睡眠時間など、運転手の健康管理に関する実態把握も急務である。

気になるのは、このバス運行会社が2日前に国交省の行政処分を受けていた点だ。運転手10人が健康診断を受診していなかった事実が発覚したため、バス1台が運行停止になっていた。

バス会社にとって最も重要な安全最優先の原則をおろそかにしていたと言われても仕方がない。社内教育の状況も調査すべきだ。

大勢の乗客を運ぶバスの事故は大惨事に直結する。貸し切りバスが関係する事故が年間500件以上にも及ぶ中、極めて重い警鐘が鳴らされたと言えよう。

産経新聞 2016年01月16日

スキーバス事故 惨事には必ず原因がある

惨事はまたも繰り返された。東京・原宿から長野県内のスキー場を目指した大型バスがガードレールを突き破って転落、横転し、スキー客ら多数が死傷した。

格安をうたう1泊3日の夜行バスツアーで、深夜の事故時は、多くの客が車中泊の就寝中だったとみられる。現場にはブレーキ痕もなかったという。2人の運転手も死亡した。

ツアーを企画した旅行会社の社長は「安全安心で運行している。こういったことは起こりえない」と述べたが、実際に悲惨な事故は起きた。そこには必ず、原因があるはずだ。

国土交通省によると、バスの運行会社は昨年2月の定期監査で運転手13人中10人に健康診断を受けさせず、乗務前後に点呼記録がないなどの不備があり、今月13日に道路運送法に基づく行政処分を受けていた。

また事故を起こしたバスは上信越自動車道を通る行程表を外れ、一般道を走行していた。高速道を走ると早く到着しすぎるとの理由から、時間調整で一般道を使うことはままあるのだという。だが運行管理者の指示なくルートを変更することは禁じられている。

平成24年4月、関越自動車道をディズニーランドに向かう高速バスが防音壁に衝突し、7人が亡くなった。運転手の居眠りが原因だった。関越道を走るとは行程表に記されておらず、事故後に出発前の健康チェックや乗務時の点呼に不備があることも分かった。今回の事故と同様である。教訓や反省は、生かされなかった。

関越道での事故後、国交省は運転手1人の最大運転距離を従来の670キロから日中500キロ、夜間400キロに変更するなど規制を強化したが、26年3月に富山県内の北陸自動車道で夜行バスがトラックに衝突するなど、悲惨な事故は後を絶たない。

国交省は今回の事故を「特別重要調査対象事故」に指定し、事業用自動車事故調査委員会が調査を始めた。長野県警も自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで捜査している。

再発防止のためにまず必要なのは事故原因の究明と厳罰である。乗客の生命を軽んじる旅行会社や運行会社が許されようはずはない。悲劇をこれ以上繰り返さぬために、業界自身が安全第一を誓わなくてはならない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2389/