衆院選の「1票の格差」を是正することは喫緊の課題である。与野党は、必要な立法措置に向けて調整を急ぐべきだ。
衆院の選挙制度に関する有識者調査会が大島議長に答申を提出した。小選挙区の各都道府県の定数を「アダムズ方式」で配分し直すよう求めた。
これにより、定数は東京都と4県で計7増え、13県で各1減る。都道府県間の最大格差は1・621倍となる。小選挙区間の格差も2倍未満に収まる見通しだ。
1票の格差が2倍未満を基本と定めた衆院選挙区画定審議会設置法を踏まえたものだ。
アダムズ方式は、人口の少ない県に比較的有利とされ、最少の鳥取県も定数2を当面維持する。地方への一定の配慮もうかがえる。答申は妥当な内容と言えよう。
答申は、10年ごとの国勢調査に基づき都道府県定数を再配分し、中間年の簡易国勢調査で2倍以上の格差が生ずれば、区割りを見直すことも提言した。継続的に格差を是正する仕組みと言える。
疑問なのは、定数を小選挙区で6、比例選で4削減することだ。答申自体が、削減の「積極的理由、理論的根拠は見いだし難い」と認めながら、定数削減を唱える各党の主張を考慮したという。
日本の国会議員は人口比でみれば、欧州各国より多くない。定数を減らせば、多様な民意が反映しにくくなる。小幅とはいえ、定数減に踏み込む必要があるのか。
大島議長は各党に、答申を尊重し、党内調整を急ぐよう求めた。新制度への移行には、議員立法で公職選挙法などを改正したうえ、区割り見直し作業が必要となる。1年以上かかる見通しだ。
最高裁は格差が最大2・13倍だった2014年衆院選を「違憲状態」と認定し、是正を促した。与野党は応じざるを得ない。
公明や民主、維新の各党などは、答申に一定の評価をしている。
焦点は自民党の対応である。
定数減となる県の選出議員を中心に、異論が相次いでいる。アダムズ方式を採用せず、区割りの見直しのみ行う案も出ている。だが、将来の人口変動に対応できず、弥縫策との批判は免れまい。
自民党は他党との協議で改革案に合意できなかったため、有識者に検討を委ね、その答申を尊重すると約束したはずだ。答申内容が気に入らないからといって、反故にするなら、身勝手過ぎる。
安倍首相は答申に従う意向を表明してきた。党内の意見集約へ、指導力を発揮せねばならない。
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