米大統領演説 北朝鮮への強い姿勢貫け

朝日新聞 2016年01月14日

米大統領演説 協働する大国像こそ

「チェンジ(変革)」。その看板の下でバラク・オバマ氏が米大統領になって7年になる。

その挑戦を阻む壁はなんと厚かったことか。誰よりも大統領自身が痛感しているだろう。

もはや米国だけの力でもたらせる変革は限られる時代だ。

多極化する世界のなかで、米国はどんな国家像を描くのか。きのうの任期最後の一般教書演説には、次の大統領に託すだろう重い悩みがにじんでいた。

「世界の警察官にならずに、世界をリードする方策は何か」

それは任期を通じた模索であり、いまも答えはない。ただ、この7年間で改めて見えたのは、いまも世界の安定に必須の大国であるという現実だ。

国内経済の再建と、イラク、アフガニスタンからの撤退。内向きの目標を背負ったオバマ政権は必ずしも国際関与に積極的といえないことも多かった。

米国の存在感が後退した中東は、シリアの内戦をはじめ混乱が深まった。米国も欧州も和平調停に出遅れたウクライナは、流血の惨状になった。

米国を再び中東に引き戻したのは、イラク戦争が生んだ過激派「イスラム国」(IS)である。過去の単独主義が残す責任から逃れることもできない。

いま懸念されるのは、米国が世界と健全にかかわりあう視点が、野党共和党に欠落しているように見えることだ。

ISとの戦いを「第3次世界大戦」と呼び、支配地域の「じゅうたん爆撃」を唱える。イランの核をめぐる合意の破棄と、対決姿勢を求める。

大統領選の候補選びの論戦でそんな主戦論が幅をきかせるのは、国民に広がるテロの不安に乗じたポピュリズムである。

難民を犯罪者呼ばわりし、イスラム教徒の一時入国拒否を唱える暴論は、移民の国家として自由と平等を求める米国の理念を忘れたかのようだ。

きのうの演説でオバマ氏は訴えた。「時代の変化に私たちは内に閉じこもり、恐怖で応じるのか。それとも、みんなで協調して成し遂げられることに自信をもち、未来に向かうのか」

米国だけでなく、日本を含む世界もその岐路にある。紛争や難民問題など地球規模の努力が今ほど求められる時代はない。

オバマ氏が自賛した成果は、昨年の気候変動をめぐる国際合意だ。米国の手柄ではない。だが、米国が積極的に他国と手を組み、世界が意義を確信した。いかにもオバマ流外交だ。

残り任期1年。核軍縮や中東・朝鮮半島問題などで、最後の遺産づくりを望みたい。

読売新聞 2016年01月14日

オバマ演説 指導力回復へ全力尽くす時だ

北朝鮮の核開発や過激派によるテロの脅威への対処で、米国の指導力が十分に発揮されているとは言い難い。懸案の解決に向けて、積極的に取り組んでもらいたい。

オバマ大統領は施政方針となる任期最後の一般教書演説で、「最優先課題はテロリストのネットワークを追いつめることだ」と述べ、過激派組織「イスラム国」壊滅に全力を挙げる意向を示した。

だが、打倒への具体的な道筋は明らかにしなかった。このままでは、残り任期1年で大きな成果を上げるのは困難だろう。

米国や同盟国が直接の脅威に直面しない限り、軍事行動を控え、国際協調を重視する手法は限界を露呈している。米軍特殊部隊の増派も検討すべきではないか。

「世界の警察官にならずに米国の安全を維持し、世界を導く」という中途半端な戦略の継続を表明したのも疑問だ。

北朝鮮は、オバマ政権下で3回も核実験を行い、就任直後のプラハ演説で唱えた「核兵器のない世界」はすっかり色あせた。

3年前の一般教書演説では、北朝鮮の核実験に「断固とした行動」を明言したのに、今回は言及しなかった。戦略の行き詰まりとも受け取られよう。北朝鮮には圧力を強化しつつ、相手の出方に応じて対話も模索することが肝要だ。

南シナ海で中国が進める人工島の軍事拠点化に対しても、より迅速で強力な行動が必要だったのではないか。「力による現状変更」を加速させないためには、人工島付近での艦艇航行を定期的に実施することも欠かせない。

環太平洋経済連携協定(TPP)について、オバマ氏が「中国でなく、我々が地域のルールを作る」と、議会に早期承認を求めたのは適切である。中国の人権問題などに目をつぶり、協調を優先して失敗した教訓を生かすべきだ。

オバマ氏は演説で、問題の具体的な解決策よりも、7年間の実績と政策の継続に重点を置いた。

政権発足時の金融危機を克服し、「アジア重視」政策や日米同盟強化を進めたことは評価できる。キューバとの国交回復やイラン核合意、気候変動対策のパリ協定を成果としたのももっともだ。

医療保険制度改革や移民制度改革、銃規制を推進する方針を示したが、米国民の賛否は分かれ、国論の分裂は深刻化している。

世論調査で約7割が「米国は悪い方向に進んでいる」と回答している現実を、オバマ氏は真摯しんしに受け止めねばならない。

産経新聞 2016年01月14日

米大統領演説 北朝鮮への強い姿勢貫け

オバマ米大統領が自身の任期最後となる一般教書演説を行った。

だが核実験を強行した北朝鮮を名指しすることはなく、全体として物足りない印象が否めない。世界情勢が混迷を深める中、任期1年を残す米大統領に、レームダックは許されないはずだ。

核実験を強行した北朝鮮に対し、日米韓は単独および国連安全保障理事会を通じた制裁強化を急いでおり、米国はB52戦略爆撃機を韓国に急派し、圧力をかけている。

オバマ氏は一般教書演説で北朝鮮を直接非難し、核実験に対しても厳しく言及すべきだった。

「(軍事的に最強国家の)米国やその同盟国を攻撃しようとする国はない。滅びることを知っているからだ」との発言に牽制(けんせい)の意味合いを込めたのだろうが、名指しを避けた理由が分からない。

「核なき世界」を掲げてノーベル平和賞を受賞したオバマ氏は、やはり北朝鮮の核実験後となった2013年の一般教書演説では、北朝鮮に対し「断固たる行動を取る」と表明していた。

こうした過去の演説をあざ笑うかのように繰り返された北朝鮮の暴挙である。米大統領には、もっと強い姿勢で圧力の先頭に立ってもらいたい。

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