憲法改正について、与野党は今国会で、より幅広い合意形成に向けて、改正内容の議論を深めることが肝要である。
安倍首相がNHK番組で、今夏の参院選に関し、与党に、憲法改正に積極的な野党を加えた勢力で3分の2以上の議席獲得を目指す考えを示した。
「与党だけでは大変難しい。おおさか維新など、改憲に前向きな党もある。未来に向かって責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」と語った。
憲法は今年11月に制定70周年を迎えるが、一度も改正されていない。この間、国内外の劇的な変化に伴い、憲法と現実には様々な乖離や矛盾が表面化している。
これを解消するため、おおさか維新の会や日本のこころを大切にする党とも協力し、改正発議に必要な3分の2以上の多数の確保を図る首相の姿勢は理解できる。
ただ、与党内では、参院選で憲法改正を争点化しつつ、勝敗ラインを引き上げるかのような発言には、戸惑いが広がる。民主党も含めた、より多くの政党の合意を図るべきだとの主張も根強い。
自民党の谷垣幹事長は「野党第1党の理解を得ながら、進めるのが妥当な手法ではないか」と指摘した。公明党の山口代表も「単に国会の数合わせでは済まない。目指す方向、内容について合意をつくる努力が大切だ」と述べた。
国会が改正を発議した後には、国民投票で過半数の賛成を得るという高いハードルが控える。民主党も巻き込んで改正を目指すのがむしろ現実的だろう。
民主党の岡田代表は「首相は3分の2を確保すれば、必ず憲法を改正する。憲法9条(改正)が念願だから、3分の2は絶対に阻止せねばならない」と強調する。
9条を守るため与党に3分の2の議席を許さないという論法は、かつての社会党とそっくりだ。
改正に前向きな民主党の保守系や維新の党には、岡田氏の選挙戦術を疑問視する向きが多い。広範な野党共闘をどう具体化するか、岡田氏の手腕が問われよう。
与野党は今後、改正項目を絞る作業に取り組む必要がある。
自民党は、緊急事態条項の創設など3項目を優先する方針だ。
国政選の実施が困難な大災害時の国会議員の任期延長や、より効果的な被災者救援・支援を可能にする首相権限の強化に、賛成する国民は少なくあるまい。
与野党は、こうした改正内容の議論を深め、参院選で具体的な案を提示することが求められる。
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