衆参両院で代表質問が行われ、今年の国会論戦がスタートした。
政府・与党と野党は、今夏の参院選に向けた非難・扇動合戦に陥らず、建設的論戦を心掛けてほしい。
民主党の岡田代表は、安全保障関連法について「憲法違反の法律を認めるわけにはいかない」と強調した。共産党の穀田恵二国会対策委員長も廃止を求めた。
安倍首相は、「多くの国々から強い支持と高い評価が寄せられている。決して『戦争法』などではない。戦争を抑止する法律の何よりの証しだ」と反論した。
参院選をにらむ野党共闘には、首相は「反対と声をそろえるだけなら簡単だ。解決のための提案から逃げ回っては、国民の負託に応えられない」とも指摘した。
北朝鮮の核実験強行により、日本の安保環境は悪化し、安保関連法の重要性は増した。政府は、日米同盟を強化し、抑止力を高める必要性に関する国民の理解を広げる努力を倍加すべきだ。
2015年度補正予算案について、岡田氏は、低所得の年金受給者への1人3万円の給付金をやり玉に挙げた。「なぜ年金生活者に限ったのか。参院選直前に配られる。あまりに露骨なバラマキの選挙対策だ」と決めつけた。
首相は「個人消費の下支えが必要だ。現役世代には賃上げの恩恵が及びやすい」と反論した。
だが、働く世代でも所得が低い人は少なくない。社会保障政策か、景気対策か、給付金の性格があいまいな点が、政府の説明を分かりにくくしているのは否めない。
維新の党の松野代表は、環太平洋経済連携協定(TPP)対策の用水路整備などの土地改良事業について、「せっかくの余剰財源を、なぜ効果の薄い公共事業や補助金に費やすのか」と批判した。
首相は「ウルグアイ・ラウンド対策のように、農業の体質強化に関係ない事業は支援しない」と述べたが、この答弁だけでは説得力に欠けよう。農地の大規模化など、生産性向上につながる事業に絞った予算執行が求められる。
17年4月の消費税率引き上げ時の軽減税率導入に関して、野党側は「1兆円の財源が不明確だ」と追及した。首相は「消費税の負担を直接軽減し、痛税感を緩和できることは重要だ」と語った。
軽減税率は税負担緩和の有効策だ。政府・与党は年末までに責任を持って財源を確保すべきだ。
与野党は、冷静で骨太な議論を通じて、現実的な選択肢を有権者に示すことが肝要である。
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