浅田選手の銀 魂揺さぶった銀盤の舞

朝日新聞 2010年02月27日

冬季五輪 氷上に吹くアジアの風

重厚な旋律に舞い、世界で彼女しかできないジャンプを決めた浅田真央選手。誰をも魅了するすばらしい演技が銀メダルをもたらした。

金メダルに輝いた韓国の金妍児(キム・ヨナ)選手は、しなやかな滑りと豊かな表現力で世界最高得点の完璧(かんぺき)さだった。

五輪の長い歴史の中でも欧米勢の独壇場だった女子フィギュアで、アジア勢が2人表彰台に立ったのは初めてのことだ。

2人の19歳を心からたたえたい。

いずれも4年前からすでに世界の一線にいたが、トリノ五輪には若すぎて出られなかった。それ以来、お互いの存在を刺激にして成長してきた。ともに外国人コーチに学び、異文化からさまざまなものを吸収した。隣り合う日韓の2人がこの種目の水準を引っ張ってきた。

4位には両親が日本人の米国代表・長洲未来選手、5位には安藤美姫選手が入った。上位5人中にアジア系が4人である。男子フィギュアのシングルでは高橋大輔選手が銅メダル。ペアでは中国が初の金と、銀もとった。

銀盤に、アジアの色鮮やかな華が咲き競ったかのようである。

まもなく閉幕を迎えるバンクーバー五輪では、他競技でもアジアからの風が吹き抜けている。

スピードスケートの男子500メートルは韓国選手が優勝、長島圭一郎、加藤条治両選手が銀、銅を獲得した。女子500メートルも韓国選手が金。ショートトラックは韓国、中国が席巻している。韓国、中国は全体のメダル獲得数でも上位に進出し、欧米中心だった冬季五輪の世界は様変わりした。

1986年に日本が札幌で初めて開いた冬季アジア大会が、アジアの冬のスポーツ熱に火をつけた。冬季アジア大会はその後、日本、中国、韓国で開かれている。

韓国のスピード選手は日本選手をお手本にしてきた。逆に、ショートトラックの日本チームは韓国人の五輪メダリストをコーチに招く時代になった。中国も各競技に、韓国などから積極的にコーチを招いている。

国境を越えて行き交う選手や指導者が、互いの技を高めあった。そこに地域の経済発展が重なり、冬季スポーツでのアジアの台頭を生んだといえる。

韓国はソウル郊外に1年中使える各競技の練習施設を持ち、巨大財閥が資金面で支えている。競技者が東北出身に限られていた中国は、各地にスキー場やスケート場をつくってきた。初出場で優勝候補にも挙げられたカーリングにまで、すそ野は広がった。

身近な国とフェアに競い、学び合う中でアジア全体のレベルが上がり、その結果、世界でのアジアの存在感が増していく。スポーツから学び取るべきことは、実に深い。

毎日新聞 2010年03月01日

冬季五輪閉幕 多彩さ増した17日間

17日間にわたり熱い戦いを繰り広げたバンクーバー冬季五輪は日本時間1日の閉会式で幕を閉じる。

夏・冬を通じて五輪史上初めて屋内で行われた開会式は、屋内の利点を最大限に生かし、最新技術を駆使して華やかにショーアップされ、世界中を魅了した。その開会式が象徴するように、冬季スポーツのこれまでのイメージを塗り替える多彩な競技の数々が記憶によみがえる。

86年前、フランスのリゾート地、シャモニー・モンブランで行われた第1回冬季五輪はわずか4競技14種目で、参加国・地域も16を数えるだけのささやかな大会だった。今回は新種目の男女スキークロスを含め7競技86種目。冬季スポーツが五輪の回を重ねるたび、さまざまな形で発展してきたことを実感できた。

映像を通して選手たちの熱気が伝わるようなスリルにあふれ、手に汗握る魅力的な種目がなんと多かったことか。その半面、大会直前にソリ競技会場でリュージュ選手の死亡事故が起きた。映像的な魅力を増すための高速コースが招いた事故との指摘がある。安全軽視の設営に警鐘が鳴らされたと受け止めるべきだ。

さて、日本選手団である。スピードスケート最終種目、女子団体追い抜き(チームパシュート)は惜しくも100分の2秒差で「金」には届かなかったが、女子スピード陣として初めての銀メダルを獲得した。これで今大会の日本のメダルは銀3、銅2の5個となった。

金メダルがゼロなのは残念だが、フリースタイルスキー・モーグルの上村愛子選手のようにメダルにはあと一歩届かなかったものの、日本中を感動させた種目も少なくない。全力を出し切った選手たちに温かい拍手を送りたい。

残念な事例もあった。ソリ競技では日本選手が規定を超える重りをつけるなど、うっかりミスで2人が失格した。選手を責める以前にコーチら周囲のサポートがどうなっていたのか。出国時の服装の乱れが指摘されたスノーボードの男子選手の場合も同じことがいえるだろう。

アジアのライバルである韓国と中国がトリノ五輪に続いて躍進した。かつては冬季競技では日本がリードしてきただけに、中韓の強化から学ぶべきは謙虚に学ぶ姿勢が必要だ。

最後に指摘しておきたいことがある。五輪開幕に合わせたようにアフガニスタンで米軍などによる大規模軍事作戦が始まった。2年前の北京五輪でも開幕日にロシアとグルジアの軍事衝突が起きた。五輪に託された夢は単なるメダル争いではない。アフガンの人たちが2年後、ロンドンで開かれる「平和の祭典」を心から楽しめるよう、切に願いたい。

読売新聞 2010年02月27日

真央ちゃん「銀」 4年後に向け技量を磨こう

19歳のライバル二人の 氷上の舞は、本当に見事だった。

バンクーバー五輪のフィギュアスケート女子で浅田真央選手が銀メダルに輝いた。フリーの演技で3回転半ジャンプを2回、成功させた。自己ベストの得点での2位である。胸を張っていい。

金メダルを獲得したのは、浅田選手としのぎを削ってきた韓国の金妍児(キムヨナ)選手だった。完璧(かんぺき)な演技で世界最高得点を記録した。

現時点での実力は、金妍児選手が一枚上だったということだろう。浅田選手は「悔しい」と語った。この経験を生かして技を磨き、4年後のロシア・ソチ五輪では満面の笑みを見せてほしい。

安藤美姫選手は5位、鈴木明子選手も8位に入賞した。

男子では、高橋大輔選手が銅メダル、織田信成選手が7位、小塚崇彦選手が8位と健闘した。

6人の活躍は、日本のフィギュアスケートのレベルの高さ、層の厚さを世界に示したといえる。

浅田選手の銀メダルにより、バンクーバー五輪での日本選手のメダル数は、銀2、銅2の計4個となっている。

金メダルがないのは残念だが、2002年ソルトレークシティー五輪の銀1、銅1個、06年トリノ五輪の金1個と比べ、まずまずの成績といえるだろう。

今回の五輪で活躍が目立つのが韓国勢だ。金妍児選手以外でも、スピードスケートの500メートルで男女とも優勝するなど、スケートでのレベルアップには、目を見張るものがある。

強さの要因の一つが、将来有望と思われる選手をジュニア時代から国を挙げてサポートする強化策にあるといわれる。

これに対し、日本では主に企業や大学が選手を養成し、その中から優れた選手を選抜して代表チームを編成するのが一般的だ。

しかし、厳しい経済状況の中、選手を育てる余力がなくなっている企業が多いのも事実である。

政府は、12年のロンドン五輪でのメダル増に向け、有望競技への支援策に10年度のスポーツ関連予算を手厚く配分している。冬季競技に対しても、こうした国のサポートは欠かせまい。

世界と戦うには、長期的視点も大切だ。フィギュアについても、浅田選手の次の世代をいかに育てるかが課題となろう。

バンクーバー五輪は、日本時間の3月1日に閉幕する。今回の五輪を、選手育成のあり方を幅広く議論する契機としたい。

毎日新聞 2010年02月27日

浅田選手の銀 魂揺さぶった銀盤の舞

2カ月余り遅く生まれたため、トリノ五輪に出場できなかった2人の4年間に及ぶライバル物語は金、銀メダルを分け合って決着した。

バンクーバー五輪女子フィギュアスケート。韓国の金妍児(キムヨナ)選手が日本時間24日のショートプログラム(SP)に続き、フリーでも完ぺきな演技で史上最高得点をマークして金メダル。浅田真央選手はジャンプで失敗があったものの、SPを含め女子では初めてトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の大技を3回とも成功させ、銀メダルを獲得した。

五輪の重圧がかかる中、世界中を魅了する最高峰の演技を見せた両選手の芸術的な滑りは実に感動的だった。心からの拍手を送りたい。

メダルには届かなかったが、トリノ五輪で4回転ジャンプに失敗し、15位だった安藤美姫選手は5位。摂食障害を克服して初めての五輪切符をつかんだ鈴木明子選手も8位と、男子に続いて全員が入賞し、日本のレベルの高さを実証してくれた。

フィギュアスケートは8年前のソルトレークシティー五輪で、採点を巡る審判の疑惑が噴出、採点方法が大幅に改正された。演技の「要素」と「プログラム構成」について採点項目が細分化され、審判がそれぞれの技や表現力などをどのように評価したかが数値で示される。

金選手と浅田選手の場合、浅田選手は後半の2度のジャンプ失敗が大きく響いたが、その失敗がなかったとしても、まんべんなく高得点をマークした金選手には及ばなかった。残念な結果ではあるが、採点競技につきものだった不明朗感を払しょくできたことは評価したい。

今回の五輪では男子フィギュアの高橋大輔選手が日本男子として初めて銅メダルを獲得した。高橋選手の母校・関西大と、浅田選手の中京大に共通するのは専用のスケートリンクがあることだ。両校から五輪メダリストが生まれたのは偶然ではあるまい。しっかりした練習環境が整えば今後もメダリストが誕生するかもしれないという期待を抱かせる。

一般に冬季スポーツは競技人口が少なく、企業などの支援も受けにくい。特殊な用具を必要とするうえ、雪や氷を求めて遠征も長くなるのは宿命だ。昨年秋の事業仕分けで、リュージュなど冬季スポーツの強化費が仕分けの対象にされた。国民を元気にしてくれるスポーツの力を過小評価していないだろうか。

日本中が感動した今回の五輪が契機になって「第2の真央選手」や「第2の大輔選手」を目指す子どもたちが出てくることを期待したい。そのための環境整備は欠かせない。五輪の時だけ「結果」を求めるのは虫がよすぎるというものだ。

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