韓国憲法裁の判断 「国の約束」違えぬ流れに

読売新聞 2015年12月24日

韓国憲法裁判決 却下で「反日」火種は回避した

韓国の憲法裁判所が、日韓請求権協定の違憲性の確認を求めた訴えを却下した。

憲法判断に踏み込まなかったことで、日韓関係の新たな火種になる事態は避けられたと言えよう。

訴えを起こしたのは、戦時中、日本政府に動員された軍属の男性の遺族だ。韓国側の請求権放棄を定めた協定の条項について、「憲法が保障する財産権を侵害し、違憲だ」と主張していた。

遺族は元々、「強制動員」被害者への韓国政府による支援金支給を巡って訴訟を起こし、その過程で憲法裁に訴えた。

憲法裁は「協定が違憲か否かは、(遺族の)訴訟の判決に影響を与えない」と却下理由を示した。訴えが憲法裁で審理する要件を満たさないとも指摘した。支援金の増額を求めている訴訟の内容を考えれば、穏当な判断だろう。

左派の盧武鉉政権が2005年、慰安婦問題は「未解決」だと表明して以降、韓国司法は請求権協定を自国に都合の良いよう、一方的に解釈する傾向が目立つ。

今回も、憲法裁が違憲判決を出せば、重大な外交問題に発展し、日韓関係の基盤が損なわれる恐れがあった。訴えを門前払いしたことで、慰安婦問題の妥結などに余地が残った形だ。

判決を受け、日本の外務省は、「日韓関係前進のために双方が努力する必要がある」とのコメントを発表した。

請求権協定は1965年、両国が国交を樹立する「基本条約」と同時に締結された。日本が無償・有償で計5億ドルの経済協力を約束し、「両国および国民間の請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決された」と明記している。

韓国は協力資金をインフラ建設などに活用し、経済発展につなげた。協定が両国のプラスとなったことは、評価されるべきだ。今回のような訴えが憲法裁に提起されること自体、理解し難い。

今回の事案以外にも、韓国の裁判所は、日韓関係に影響を及ぼしかねない訴訟を審理している。特に懸念されるのは、戦時中に動員された元徴用工の裁判である。

韓国最高裁は12年、「植民地支配と直結した不法行為」などについては、協定の対象と認め難いという判断を示した。

審理を差し戻された高裁で、日本企業に賠償を命じる判決が相次ぎ、再び最高裁で審理中だ。

韓国政府は従来、元徴用工も協定の対象という立場だった。最高裁には冷静な判断を求めたい。

産経新聞 2015年12月24日

韓国憲法裁の判断 「国の約束」違えぬ流れに

戦後補償をめぐる1965(昭和40)年の日韓請求権協定が、韓国人の財産権を侵害し「違憲」だとする訴えを韓国の憲法裁判所が却下した。

同協定は個人補償問題を含めて解決済みとした国家間の約束である。妥当な判断といえよう。

日本企業に賠償を求める訴訟が相次いで起こされてきた。韓国側には国際常識に沿った対応を改めて求めたい。

日本では最高裁が違憲審査権を持つが、韓国では最高裁とは別に憲法裁判所が置かれている。

今回の訴えは戦時中、日本に動員された韓国人の遺族が起こしたものだが、憲法裁は要件を満たしていないなどとして却下し、憲法判断をしなかった。

そもそも、訴えは日韓協定への理解が極めて乏しい。

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