新国立競技場 次世代の聖地に育てていこう

朝日新聞 2015年12月23日

新国立競技場 耳を傾け続けよ

木材を使い、和を感じさせる「木と緑のスタジアム」が、2020年東京五輪・パラリンピックの選手と観客を包み込むことになる。

当初の計画が白紙撤回された新国立競技場の建設は、関係閣僚会議を経て建築家の隈研吾氏と大成建設などのチームが手がけることに決まった。

国立競技場や大会エンブレムをめぐる一連の混乱から、東京五輪は信頼回復に努める新たな段階に入る。

大会組織委員会や競技場の事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)、そして政府は二度と失敗が許されない状況であることを認識し、公正、透明なプロセスに徹してほしい。

国立競技場の旧計画では建築家や国民から建物の大きさや費用面などで多くの意見が出されていたが、JSCなどが真剣に耳を傾けることはなかった。

自分たちの声が響かないところで下された判断を、人々は拒む。専門家の決定であっても、納得できる道筋を経ていなければ受け入れない――。

それが一連の問題から学んだ教訓だったはずである。

JSCなどは今度こそ、国民の多様な意見に耳を傾けるとともに、過程を丁寧に説明していくところから始めるべきだ。

今回はすでに、競技団体や選手、国民から意見を聞き始めている。選手らからは芝の管理の重要性や競技が見やすい観客席などの要望が挙げられた。

本体着工は来年12月。しばらくの間は聞き取った意見を詳細な設計に生かすことができる。

より良い競技場にするために勉強会を開く市民団体もある。国民の代表と車座集会で対話するなど、なるべく多くの声を反映させる工夫をしてほしい。

建設費用は1490億円とされるが、増税や資材・人件費の高騰などで上ぶれすることもあり得るだろう。

組織委は今週、招致段階で約3千億円としていた組織委予算が増額となる可能性を明らかにした。政府なども今後、開催に必要な取り組みと関連経費を詳細に検討していく。

状況が変わった時にはその都度、国民が納得できる十分な説明を尽くしてもらいたい。

選考過程に不正があったとされた旧エンブレム問題の調査報告書も、「国民のイベント」であることに思いを致さず、専門家集団の発想で物事を進めたことが過ちだったと指摘した。

五輪は国民とともにある。

大会に直接かかわる人たちは、この精神を再び見失うことがあってはならない。

読売新聞 2015年12月23日

新国立競技場 次世代の聖地に育てていこう

建設工事が滞りなく進むよう、政府には細心の目配りが求められる。

新国立競技場の新たなデザインが決まった。応募のあった2案のうち、大成建設などが提案した案が採用されることになった。

発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)が審査結果を関係閣僚会議に報告し、了承された。安倍首相は「基本理念や工期、コストの要求を満たす素晴らしい案だ」と評価した。

首相が旧計画を白紙撤回してから5か月を経て、新国立競技場の建設は、ようやく前へ進む。

デザインを担当したのは、著名建築家の隈研吾氏だ。観客席の屋根部分などに木材を多用し、伝統的な日本建築の持ち味を色濃く出した点は、好感が持てる。

総工費は約1490億円で、政府が整備計画で設定した上限の1550億円を下回った。巨大アーチ構造などが原因で工費が膨らんだ旧計画と比べ、約1000億円の節減となっている。

ただし、今回の総工費でも、過去の五輪スタジアムの建設費と比較すれば、かなり高額だ。旧計画のような膨張を招かないよう、政府とJSCは、コスト管理を徹底しなければならない。

作業を効率化するため、政府は今回、デザイン・設計・施工を一括発注する方式を採用した。その結果、大手ゼネコンとチームを組めない建築家は締め出されたといった声が上がった。

しかし、五輪までの残された時間を考えれば、やむを得ない措置だったと言えよう。

JSCは2案の内容を事前に公表した。審査の採点結果も明らかにした。旧計画では不透明な選考過程が問題視されただけに、教訓を生かした適切な対応だった。

国際オリンピック委員会(IOC)は、東京五輪開幕の半年前の2020年1月までの完成を求めている。現時点での完成予定は、それよりも早い19年11月末だ。

審査で高評価を得た工期短縮のため、人手や資材を集中させれば、他の競技会場などの整備に支障が生じかねない。ゼネコン間の調整なども必要だろう。

東京五輪後の新国立競技場の活用法は、大きな課題だ。サブトラックについて、東京五輪は仮設で対応するが、常設トラックがなくては、国際的な陸上競技大会を開くのは困難だ。日本を代表する競技場として、それでいいのか。

旧競技場同様、スポーツの聖地として、国民に親しまれる競技場にすることが大切である。

産経新聞 2015年12月23日

新国立案決定 前を向き直す契機となれ

2020年東京五輪のシンボルとなる新国立競技場の建設計画に、建築家の隈研吾氏が手がけた案が採用された。

総工費の膨張から7月に当初案を撤回し、混乱の末の決定だったが「日本らしさ」が強調されて神宮の杜(もり)にふさわしく、フィールドに近い3層構造のスタンドには観戦の臨場感に期待が高い。

当初案を白紙に戻した勇気を、今更ながらたたえたくなる。五輪開催へ向けて確実に計画を進めるとともに、五輪を心待ちにする機運を高める契機としたい。

一昨年9月、20年東京五輪の開催が決まると、日本中が喜びに沸いた。だが、新国立競技場建設計画や大会エンブレムの白紙撤回を経て、高揚感は急速にしぼんでしまった。

エンブレムの選定過程では不正も明らかになり、大会運営費も当初見込みから大幅に増額される見通しだ。組織委員会では、副会長を務めていたトヨタ自動車社長の豊田章男氏が辞任した。

豊田氏は組織委の改革チームの座長に就いており、改革も道半ばの突然の辞任は、さまざまな臆測を呼ぶ。五輪の成功に向けた経済界を含むオールジャパン体制が機能するのか、不安視されても仕方あるまい。

今年のスポーツ界を振り返ればサッカーの女子ワールドカップ(W杯)で「なでしこ」が準優勝し、ラグビーのW杯では日本が強豪南アフリカを破り世界を驚かせた。体操の内村航平は世界選手権6連覇を果たし、フィギュアスケートの羽生結弦は驚異的な世界最高得点を連発した。水球の男子代表はアジア選手権で優勝し、32年ぶりとなるリオデジャネイロ五輪の出場切符を手にした。

これらの快挙に喝采を送り、心躍らせる間もなく、五輪準備の停滞に関する情報が気持ちを落ち込ませる。そんな繰り返しだったのではないか。

国内だけではない。

陸上界はドーピング違反に揺れ続け、汚職容疑で多くの逮捕者を出した国際サッカー連盟では、ブラッター会長と次期会長候補の筆頭だったプラティニ副会長が8年間の活動停止処分を科された。

スポーツの力、魅力とは本来、歓喜や感動を共有し、夢や希望をもたらすことにある。リオ五輪が開催される来年こそは、明るいニュースを多く聞きたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2373/