高層ビルの地震対策が急務であることを浮き彫りにした予測結果だ。
内閣府が、主に高層ビルを大きく、長く揺らす長周期地震動についての初の予測をまとめた。
想定したのは、静岡・駿河湾から九州沖にかけての南海トラフ(海溝)で発生する地震のうち、和歌山県沖を震源とする長周期地震動が最大規模のケースだ。
この地震で、大阪市内の高さ200~300メートルの超高層ビル最上階では、最大6メートルも揺れることが分かった。東京23区内でも、最大2~3メートルの揺れに見舞われる。
この揺れは大阪や神戸で約7分以上、東京では3~5分続く。
より関東圏に近い相模湾を震源とする地震が発生すれば、東京でも、今回の関西圏に匹敵する揺れに襲われる可能性がある。
ただし、長周期地震動の対策は、震源からの距離だけにとらわれてはならない。
東日本大震災の際、長周期地震動は大阪にまで到達し、超高層ビルがたわむように揺れた。
メキシコ沖の太平洋が震源だった1985年の地震では、約400キロ離れたメキシコ市で、多数の高層ビルが倒壊した。
今回の予測は、最新の耐震性を備えた超高層ビルについては、倒壊の危険性は低いと評価した。
だが、全ての超高層ビルがこれに該当するわけではない。超高層を含めた60メートル以上の高層ビルは、東京、大阪、名古屋の3大都市圏を中心に2000棟以上ある。老朽化したビルも少なくない。
東日本大震災を上回る地震が発生しても耐えられるよう、早急な対応が求められよう。ビル管理者が安全性を確認し、弱点が見つかれば、制震装置の設置などの補強策を実施するべきだ。
高層ビルなどの耐震性強化のため、国土交通省は建築確認時の審査要件を厳しくする。石井国交相は、高層マンションなどの改修で「費用の一部を補助する」と述べた。支援策の拡充を急ぎたい。
ビル内の安全対策を徹底することも不可欠である。
高層階が激しく揺れると、人は立っていられない。オフィス機器や家具がフロアを滑り、倒れることで人的被害をもたらす。
揺れによるパニックは、円滑な避難や救助作業の障害となる。エレベーターが停止すれば、高層階に多数の人が長時間にわたり取り残される可能性もある。
様々な事態を想定し、ビルごとに、オフィス機器などの固定や避難体制の整備が欠かせない。
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