携帯電話の過剰な契約獲得競争が生んだ利用者間の不公平は、解消せねばならない。
高市総務相は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社に、スマートフォンの端末価格を「実質0円」とする販売手法の改善や料金引き下げを要請した。
総務相は、「利用者に納得感のある料金、サービスを実現してもらいたい」と強調した。
総務省の有識者検討会が、携帯大手の販売戦略は、端末を頻繁に買い替える人を優遇していると指摘したのを踏まえたものだ。
「実質0円」にするための原資は、携帯大手が販売店に支払う販売奨励金で賄われている。奨励金は同じ端末を長く使う人も含め、利用者が支払う通信料金から捻出される。結果的に料金の高止まりを招いている。
端末の大幅割引で新規契約者を獲得し、中途解約に高額な違約金を課す「2年縛り」で契約者を囲い込む。こうした日本特有の販売手法は早急に改めるべきだ。
料金プランの多様化も課題となる。検討会は、データ通信をあまり使わない利用者のために、「月額5000円以下」などの低料金プランの創設も求めた。
日本の人口に対するスマホ台数の比率は、主要国よりも低い。スマホの利用が進まないのは、海外に比べて料金水準が高めであることが理由の一つだろう。
格安スマホを販売する仮想移動体通信事業者(MVNO)は、利用者の選択の幅を広げる上で重要だ。有識者検討会では、MVNOの普及を後押しするため、サービスの多様化を進めることが必要だとの意見も出た。
総務省は今後、携帯大手に、販売手法の改善計画を提出するよう要請する。その上で、店舗に担当者を派遣して、販売実態を覆面調査するという。
新たに設けるガイドラインに沿って、販売手法の改善が見られない場合には、行政処分も検討するとしている。
電気通信事業法は、公共の電波を使う携帯会社に公正な競争を求めている。行政には、利用者の利便性を向上させるため、競争環境を整備する責務がある。
総務相が有識者検討会の提言に沿って携帯大手に改善を促したのは、妥当だろう。
本来、携帯会社が自発的に、料金設定などにアイデアを凝らして競うのがあるべき姿だ。行政処分の発動には、各社の独創性を損なわぬよう慎重さが求められる。
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