またも「政治とカネ」の疑惑が持ち上がっている。今度は労働組合、それも政治的な中立性を強く求められる教員の労組が舞台である。
昨年8月の衆院選で、民主党の有力支持団体、日本教職員組合傘下の北海道教職員組合の裏金1600万円が、選挙資金に充てられたという疑惑だ。
札幌地検が、北教組の事務所や幹部宅を政治資金規正法違反容疑で捜索した。不透明な資金の流れを徹底的に洗い出し、政治との癒着の構図を解明してほしい。
発端は、衆院選の北海道5区で当選した小林千代美・民主党衆院議員陣営の選挙違反事件だ。
陣営の選挙対策委員長代行だった元連合札幌会長が、公職選挙法違反で起訴され、札幌地裁で懲役2年、執行猶予5年の判決を受けた。控訴する方針だが、禁固以上の刑が確定すれば、連座制の適用で小林氏失職の可能性がある。
この判決直後に明るみに出たのが、今回の裏金疑惑だ。
小林氏は教員出身ではないが、北教組が全面的に支援した。選対の実質的な会計責任者だった男性は、選対委員長を務めていた北教組委員長らから計1600万円を受け取ったことを認めている。
札幌地検では、これは小林氏を当選させるための選挙資金で、政治資金規正法が禁じている、企業・団体から政治家個人への献金にあたるとみている。
北教組は、裏金とすればいつからどんな手法で作っていたのか。選挙も含め何に使ったのか。
小林氏は、北教組からの裏金提供疑惑を「全く存じ上げていない」としている。だが、手厚い支援を受けながら、資金援助を一切知らなかったでは通るまい。
北教組と小林氏は、きちんと説明しなければならない。
公立校の教員は、他の地方公務員以上に政治的な中立性が求められ、選挙運動などにかかわることは、教育公務員特例法などで禁止されている。
教職員組合に絡む政治資金規正法違反事件は、6年前の参院選でも起きている。
当時の山梨県教組財政部長ら2人が、民主党の輿石東参院議員会長を支援する政治団体の収支報告書に教員らの寄付を記載せず、罰金の略式命令を受けた。事件に関連し、20人以上が教育公務員特例法違反などで処分された。
今回は、教員の政治的中立性を損なう行為はなかったのか。北海道教育委員会や文部科学省は、厳正に調査すべきだ。
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