北教組裏金疑惑 政治との癒着を徹底解明せよ

朝日新聞 2010年02月26日

労組と選挙 組織丸抱えの時代遅れ

政治とカネをめぐり、こんどは民主党を支持する労働組合に厳しい目が注がれている。

昨年の衆院選で北海道5区から当選した小林千代美氏の陣営が、北海道教職員組合(北教組)から1600万円を違法に受け取っていた疑いがあるとして、札幌地検が政治資金規正法の違反容疑で捜査を続けている。

小林氏の選対幹部だった連合札幌元会長は、運動員に報酬を渡す約束をしたとして公選法違反の罪で一審で有罪判決を受け、控訴中だ。

小林氏は前回落選し、資金難に苦しんでいた。「選対に任せきりだった」と言うが、問われているのは労組丸抱えのこうした選挙手法そのものだと自覚すべきだろう。

北教組から出された資金は、組合員が返上した主任手当をプールした巨額の預金の利息などが充てられた可能性も出ているという。連合札幌元会長の判決では、過去の地方選挙や2005年の小林氏の選挙でも、連合の「裏金」が提供されたと指摘している。

労組のこうした支出は、きちんとした手続きを経たものだったのか。組合員がチェックできるような仕組みや、組合幹部の説明責任も求められる。

公務員は地位を利用した選挙運動を禁じられ、なかでも教員は厳しい中立性を求められる。組織力を誇る北教組で、先生による行きすぎた運動はなかったのか。そんな疑念もわく。

近年、民主党候補を選挙で応援した労組の摘発が相次いでいる。03年の衆院選では宮城1・2区の陣営の労組幹部が、電話作戦を有償で外部委託していた。04年の参院選前には、山梨県教職員組合などでつくる政治団体が、教員から集めた寄付を収支報告書に記載していなかった。

いまだに地方組織が弱体なため、選挙のたびに労組に依存する。この党のそんな体質が浮かび上がる。

組合が候補者を抱え込み、半ば強制的に組合員が動員され、ときに不透明な資金が出され、違法すれすれの運動を展開する。企業ぐるみの選挙と同じ構図が続く。そうした選挙風土からは脱すべきではないか。

政権が交代し、連合傘下の多くの労組が与党を支持する側になった。だが組合員の政治意識は多様なはずだ。

個人の意思で選挙運動に加わり、投票するのが民主主義の大原則だ。資金や動員だけがものを言うのではなく、政策本位の選挙にしたい。

労組が現場の声を政策に反映させようとすることは大事だが、政党との一定の緊張関係も必要だ。

参院選を前に、小沢一郎幹事長は労組を含む支持組織固めに余念がない。労組は何より集票マシン。そんな発想であれば、時代遅れもはなはだしい。そろそろ卒業したい。

読売新聞 2010年02月24日

北教組裏金疑惑 政治との癒着を徹底解明せよ

またも「政治とカネ」の疑惑が持ち上がっている。今度は労働組合、それも政治的な中立性を強く求められる教員の労組が舞台である。

昨年8月の衆院選で、民主党の有力支持団体、日本教職員組合傘下の北海道教職員組合の裏金1600万円が、選挙資金に充てられたという疑惑だ。

札幌地検が、北教組の事務所や幹部宅を政治資金規正法違反容疑で捜索した。不透明な資金の流れを徹底的に洗い出し、政治との癒着の構図を解明してほしい。

発端は、衆院選の北海道5区で当選した小林千代美・民主党衆院議員陣営の選挙違反事件だ。

陣営の選挙対策委員長代行だった元連合札幌会長が、公職選挙法違反で起訴され、札幌地裁で懲役2年、執行猶予5年の判決を受けた。控訴する方針だが、禁固以上の刑が確定すれば、連座制の適用で小林氏失職の可能性がある。

この判決直後に明るみに出たのが、今回の裏金疑惑だ。

小林氏は教員出身ではないが、北教組が全面的に支援した。選対の実質的な会計責任者だった男性は、選対委員長を務めていた北教組委員長らから計1600万円を受け取ったことを認めている。

札幌地検では、これは小林氏を当選させるための選挙資金で、政治資金規正法が禁じている、企業・団体から政治家個人への献金にあたるとみている。

北教組は、裏金とすればいつからどんな手法で作っていたのか。選挙も含め何に使ったのか。

小林氏は、北教組からの裏金提供疑惑を「全く存じ上げていない」としている。だが、手厚い支援を受けながら、資金援助を一切知らなかったでは通るまい。

北教組と小林氏は、きちんと説明しなければならない。

公立校の教員は、他の地方公務員以上に政治的な中立性が求められ、選挙運動などにかかわることは、教育公務員特例法などで禁止されている。

教職員組合に絡む政治資金規正法違反事件は、6年前の参院選でも起きている。

当時の山梨県教組財政部長ら2人が、民主党の輿石東参院議員会長を支援する政治団体の収支報告書に教員らの寄付を記載せず、罰金の略式命令を受けた。事件に関連し、20人以上が教育公務員特例法違反などで処分された。

今回は、教員の政治的中立性を損なう行為はなかったのか。北海道教育委員会や文部科学省は、厳正に調査すべきだ。

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